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【逃げるは恥だが役に立つ】みくりと平匡のセリフから考える「夫婦関係」の築き方

2021年1月、「夫婦を超えてゆけ」と日本中を叱咤激励したあのドラマが帰ってきます!

みなさん、夫婦を超えることはできていますでしょうか?
夫婦関係、うまくいっていますでしょうか?

本日1月2日は、『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』の放映日。『逃げ恥』は、夫が雇用主で妻が従業員という「契約結婚」を描いて話題になった社会派ラブコメディです。

新春スペシャルの放映にあわせ、『逃げるは恥だが役に立つ』の名シーンを振り返りながら、どうすれば夫婦関係がうまくいくのか、『不機嫌な妻 無関心な夫』の著者である五百田達成さんにお話をお伺いしました。

五百田達成(いおた たつなり)

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心理カウンセラー。 米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。 東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。 専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」。 豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。「スッキリ!!」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」(TBS)ほか、テレビ・雑誌などのメディア出演も多数。 著書『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』(以上、ディスカヴァー)はシリーズ80万部を超える。

『逃げるは恥だが役に立つ』1分でわかるあらすじ

大学院卒ながら就職難で派遣社員になった森山みくりは、派遣切りに遭い、無職に。娘を見かねた父は、家事代行サービスを利用していた元部下・津崎平匡に頼み込んで、週1回の家事手伝いの仕事を取り付けてくる。

気難しい性格の平匡だったが、みくりとは適度な距離感を保って良好な関係を築く。みくりとしても今の生活に満足していたが、両親の田舎移住により、実家を追い出されることに。

現状を維持したいみくりは平匡に「就職としての結婚」を持ちかけ、その提案にメリットを感じた平匡は了承し、2人は「雇用主と従業員」という関係の契約結婚という道を選ぶ。

結婚式も挙げず事実婚という体で周囲への挨拶を乗り切ったみくりと平匡だが、2人のよそよそしさをいぶかしむ平匡の同僚・風見涼太や沼田、みくりの伯母・土屋百合の目をごまかすため「ハグの日」を設けて親近感を醸し出そうとするうちに、2人の間に本当の恋愛感情が芽生える――。


1) 提案が自分からばかりの場合、どうすればいい?

「私はひとりで何をやっているのか…思い返せば、結婚しましょうだの、恋人になりましょうだの、ハグをしましょうだの、ハグの前借りだの、どれも私の一方的な要求で、優しいから受け止めてくれてるんだろうけど…いつもいつも私から…はぁ、疲れた…」
(第6話「温泉一泊旅行にまつわるエトセトラ」より)

雇用関係+火曜にハグをする恋人になったみくりと平匡。
恋人疑似体験を味わうことが心地よくなってきた平匡に対し、結婚の提案も恋人になる提案も、いつも自分からばかり発信しているみくりが、疲れと諦めを感じてしまったときのワンシーンです。


――夫婦関係において、「家事をやろう」、「子どもの教育について考えよう」等、投げかけがいつも自分からばかりだと疲れてしまうと思います。そういうときは、どうすればよいでしょうか?

(五百田)
「私たち」はこれからどうしていこうか? というふうに、「主語」を変えて一緒に考えてもらうといいですね。

「〇〇しよう」と、一方的な提案の形になってしまうのは、やっぱり良くないと思います。「〇〇についてどう考えますか」と、相手を巻き込む会話が理想です。

「私たち」と言い続けることで、言われたほうも他人事を自分事にできる。
私からあなたという一方通行だった投げかけが、私たち目線に切り替わることで、言うほうも楽になると思います。

――主語を変えるだけならすぐに取り組めそうです。言い方ひとつで楽になるのはいいですね。


2)小さな我慢を重ねてすりへってしまう状況、どうすればいい?

「擦り傷程度の浅い傷…だとしても、何度も何度も傷をうければ、深刻なダメージになる。くたびれてしまった…自尊感情の低いあの人を、好きでいることに…拒絶されても平気な振りで、笑い続けることに…」
(第8話「離婚と実家と運命の相手」より)

女性経験がない自尊感情の低さから、みくりとの関係を断ってしまった平匡。傷ついたみくりが家出したときの言葉です。平匡しっかりしてー! とヤキモキした方も多いのではないでしょうか。


――日々の小さな不満をスルーし続けて、ある日もう無理! と爆発してしまうことがあると思います。夫婦関係が突然壊れてしまわないために、どうアプローチすればよいでしょう。

(五百田)
基本は、「そのときそのときに話す」だと思います。でも、なぜ、話し合わないかというと、モメるのが面倒だからなんですね。日々、平和に暮らしたいと思えば思うほど、小さな我慢を積み重ねてすり減ってしまうというジレンマが生まれます。

しかし、「自分は我慢できる」と過信するのはよくありません。ある日、ぷっつりいってしまいますから……!

ドラマでは、平匡がみくりに「最近、掃除の質の低下が気になります」と家庭の「経営会議」で、思っていることを伝えるシーンがあります。
これって一見ひどいですよね。言われたほうは、できていないことを突き付けられるから、それなりに傷つく。しかし、そこから率直にお互いの思いを話し合うことができている。

やっぱりお互いの思っていることを言う。そのときの、言い方やタイミングに心を砕くというのがいいのではと思います。


3) 相手が家族であることに甘えている場合、どうすればいい?

「それは『好きの搾取』です。好きならば、愛があれば、なんだってできるだろうって、そんなことでいいんでしょうか。わたくし、森山みくりは愛情の搾取に断固として反対します!」
(第10話「恋愛レボリューション2016」より)

みくりへ突然プロポーズをした平匡。しかし、その行動に平匡のリストラが影響していることを知ったみくりが複雑な思いをぶつけます。


――夫婦関係において、愛があるなら、家族ならばこれくらいやってくれて当然! という無意識の期待がはたらいてしまうことは大いにありそうです。

(五百田)
これはいいシーンでしたよね。ただ、家事の話をするときに、「好き」や「愛」を入れてはいけません。

以前、友人からこんなエピソードを聞きました。

お風呂の栓を閉め忘れてお湯が溜まっていなかったとき、パートナーから「私のこと愛していないの?」と言われたという。

パートナーの論理としては、「愛している」=「きちんと私を見てくれて、私のいいようにしようと思ってくれて、ならばお風呂の栓は閉められたはずだ」ということになるんです。

愛はケアでもあるので、気持ちはわからなくもない……!しかし、愛という言葉は曖昧です。

話しあいに、抽象的なワードは使わないほうがいいでしょう。


4) 家庭内での承認欲求をどう満たせばいい?

「一般企業なら、人が大勢いて、人事異動もあります。昇給や賞与など、客観的に従業員を評価するシステムもある。でも、夫婦の場合、一対一なんです。夫が評価しなければ、妻は誰からも評価されない。つまり現状の、専業主婦の労働の対価は、この基本給プラス雇用主の評価(愛情)ということになります。きわめて不安定な要素なんです。雇用主の気まぐれで、いつでもゼロになりうる」
(最終話「夫婦を超えてゆけ」より)

――相手が何も目をかけてくれないとき、家事はただただむなしい作業になってしまいそうです。

(五百田)
そうですね。大事なのは、「ありがとう」ということです。評価と愛情を一緒にすると、またおかしなことになってしまうので(笑)、もっと目線を下げて「感謝」でいいと思うんです。

結局、「ありがとう」も「助かる」も言わないのは、相手が家族だからと思っているから。

もう一つよくないのは、家事をした側が、「褒めてほしいな……」というそぶりだけを見せ、結果ぜんぜん褒められないことに不満を持つこと。
それだったら、「じゃーん!私これやりました!」とやったことをアピールしたほうがいい(笑)

どれだけ素直に夫も妻もそれができるかということが大事な気がしますね。


5) 妊娠!育休!慣れないことの連続!お互い余裕がなくなったときはどうすればいい?

今回の新春スペシャルでは、男性の生きづらさも描かれているようです。つわりで苦しむみくりを前に混乱する平匡は、「泣きたいのはこっち」と弱音を吐くシーンも。


――妊娠、出産、育児。一連の流れは慣れないことの連続だと思います。お互い余裕がなくなってしまったときは、どうすればよいでしょうか?

(五百田)
不機嫌だったり、余裕がなくなったりというときこそ、連絡を密にしたほうがいいんじゃないかという、信念というか祈りに近いものを、抱いています(笑)。

うまくいっているときは、にこにこして阿吽の呼吸で全部こなせばいいけれど、ピンチのときこそ喋る必要がある。

とはいえ、余裕がないから言葉にできないということもありますよね。
そういうときは、「言葉にできない」「理由はないけどなんか不安」と、そのまま言ったほうがいい。

いわば、妊娠、出産、子育ては緊急事態です。夫婦という「企業」としての正念場ですね。例えるなら新商品をローンチするようなもの。ほかの事業に手を出している余裕はないし、予算も全投入する。これからどうしていこうかという気合や方針を、夫婦間で共有出来たらいいなと思います。


家庭を共同経営するとは

(五百田)
この本の最後は、「話し合える人と結婚しましょう」としています。
価値観がまったく一緒の人と結婚するというのは難しいから、価値観をすり合わせられる人と結婚して、会議を開く、連絡を密に取れるとすてきですね。

――年末年始、会議をする夫婦が増えそうです!

結論:話し合えるふたりならうまくいく

ドラマを思い返してみても、みくりと平匡が困難にぶつかるたび、二人はとことん向き合って話し合いをしてきました。
2021年のはじまりに、夫婦二人で未来について話し合ってみるのはいかがでしょうか。


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