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第1回 普通のコールセンターのためのデジタルシフト調理法

 2011年、有料放送「スカパー!」のコールセンター、スカパー・カスタマーリレーションズ社の社長に就任したとき、私はPBXとは何か?CRMの役割とは何か?ましてやコールセンターの運営の仕組みなど、まったく知りませんでした。そして、「社長のミッションとして、年間100億以上を費やすこのコールセンターのコストを30億円以上削減してくれないか?」と言われたとき、どこから手を付けて良いか全くわかりませんでした。
 それから9年、「先端のコンタクトセンターを見たければSPCCへ!」といわれるようになりました。当初の30億削減ミッションはその目標を大きくクリアし、ほぼ半額のコストで運営できるまでになりました。昨年SPCCの社長を退任したのを機に、デジタルシフトウェーブの鈴木さんのもとで、SPCCで培った次世代コンタクトセンター構築のノウハウを他の企業の方にもお届けしようと、コンサルタント業を始めました。既に何社かのお手伝いをさせていただいています。
 今回、この場でお届けするのは普通のコールセンターが次世代のコンタクトセンターに生まれ変わるための「10のレシピ」です。レシピとは主に料理の手順書ですが、その中には美味しい料理にいきつくためのさまざまなエッセンスがちりばめられています。素材選びや分量、食材のカットの仕方、火加減、調味料の加え方、それらの微妙な違いが仕上がりに大きく影響します。次世代コンタクトセンターの構築も、素材の選び方、配合の仕方、手順や手をかけるポイントの違いが成否のカギを握ります。お客様や家族に美味しい料理を味わっていただくのと同じように、センターでお会いするお客様がご満足いただくコミュニケーションを提供する。そのためのレシピです。

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美味しいおもてなしのために
~なぜコールセンターのデジタル化が必要なのか?~

 今、次世代コンタクトセンターへの渇望は加速度的に増しています。システム更改の直近の期限と言われる2025年までの5年間で、コンタクトセンターはかつてない大きな変革期を迎えるでしょう。特にシステムも含め、従来からの仕組みがそのままになっている大型コールセンターのリノベーションが一気に実行フェーズに突入します。
 こうした状況で、従来からお付き合いのある方や新たにコンサルティングを行っている企業の方々からいくつかお問い合わせをいただきます。その中で最も多いもの3つを紹介しましょう。

①クラウド型CRMを導入したけれど十分使えていない。
 もしくは導入する予定だが、どう構築していくのかわからない。
②音声認識ソフトはその表示される動きを見いていると、何か役に立ちそう
 だが、本当に効率化に役立つためにはどんな使い方があるのか?
③既存のオンプレシステムがいくつも並行稼働しているが、フロントのCRM
 とどう連携すればよいのか?

 詰まるところ、リノベーションは行いたいのはやまやまだが、その結果、何が良くなるかが今一つ分からない。新たなシステムへの投資を費用対効果も含め社内や経営層へ説明する材料が欲しい?
・・・・というものです。

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「次世代コンタクトセンター構築のための10のレシピ」の中身・・・・

1.コールセンターの基礎、主食ともいえる電話とその周辺機器のこれから
  の姿
2.システム導入の前に、あなたのセンターに必要な下ごしらえ
3.時代の変化とともに増え続ける顧客接点に対応するオムニチャネルの
  設計方法
4.新たな素材(STT、AI、etc)の活かし方
5.オペレーターのためのサポートツールの無駄のない作り方
6.着実に進化を続ける自動化ツールの活用法
7.人が対応しなければならない領域に知恵とチーム力を集める組織づくり
8.マーケティング・ツール(MA、SFA etc.)との連携方法?
9.顧客の満足度を調べる方法と改善プロセス
10.カスタマーサクセスを実現するコンタクトセンターづくり

 コールセンターのことを全く知らなかった筆者は、かなり回り道をしながらコールセンターの構造改革とデジタルシフトを築いてきました。その経験をこれからコンタクトセンターの再構築を目指す方々に、「10のレシピ」に沿って、ひとつずつブレイクダウンしながら、わかりやすく解き明かしてまいります。その道のプロフェッショナルの方々にもご登場いただき、最新の技術も紹介していきます。
 この「10のレシピ」はプロジェクトを担当される方々から寄せられる以下のような疑問へのお答えにもなっています。さらに「こんなコンタクトセンターがあったら良いのに!」という新たなセンターの姿を示しながら、顧客と企業の間でセンターが果たす役割についても解き明かしていきます。

次世代コンタクトセンター構築での疑問

・センターの規模に合ったCRMクラウドの選定方法は?
・海外製品中心のCRMクラウドはわが社の業務要求に十分応えてくれるの
 だろうか?
・そもそも社内の技術でどこまで構築できるようになれば良いのだろうか?
・カスタマージャーニーを知ることは何に役立つのだろうか?
・クラウド化、マルチタスク化は複数拠点の運営にどんな影響を及ぼすか?
・AIによるオペレーター支援は、本当に効率化をもたらすのか?
・カスタマーサクセスとはどんな状態を作り出すことなのか?

 ここまできてお気づきの方も多いと思いますが、この原稿では「コールセンター」と「コンタクトセンター」という2つの言い方が出てきます。一般的には「コールセンター」の方が言い慣れている表現かもしれません。名は体を表すといいますが、じつは「コールセンター」のデジタル化の遅れはこの名に由来するのではないかと考えています。日本の「コールセンター」のデジタル化は欧米に比べ2年~3年遅れているといわれています。1980年代から産業として急速に拡大を続けてきた「コールセンター」ですが、2000年に入りWeb社会の到来とともに、半歩退きながら、しばらく同じところに留まっていたのではないでしょうか?
 その大きな原因は企業が人集約型のコストセンターとしか見てこなかった歴史にあります。いまでもそう考えている企業が大半なのではないでしょうか?一方「CX顧客体験重視」という声は多くの経営者から発せられるようになりました。最近では「カスタマーサクセスが鍵」というレポートや本も数多く出されています。
 しかし、現場を知る私にはこうした言葉はまだ「コールセンター」には届いていない感じがます。
 「次世代コンタクトセンター構築のための10のレシピ」は「コールセンター」が「コンタクトセンター」に生まれ変わるレシピです。いくつかの具体的な事例を通してこのレシピが「コールセンター」のデジタルシフトを加速し、日本の企業が顧客接点の改革に本気で取り組むきっかけとなれば!と思っています。

 次回、第1のレシピは「コンタクトセンターのビュッフェ~クラウドCRMの作り方」をお届けします。

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出水 啓一朗 (Keiichiro Demizu)
1974年信越放送入社。2003年WOWOW常務取締役、2006年スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT)執行役員常務、2009年同社取締役執行役員専務兼マーケティング本部長を経て、2011年スカパー・カスタマーリレーションズ代表取締役社長に就任。2019年6月同社退任。

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