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シネマ飛龍革命 『蛇の道』

いつもはビーパワーで洋画についてワーワー言っているのですが、noteでは主に邦画について書いてみようと思います。
まあ今思いついたのですが。
第一回はコレ。
黒沢清の「蛇の道」
初手から暗いじゃねえか、という声が聞こえてきそうですね。
娘を殺された香川照之が謎の塾講師・哀川翔と一緒に淡々とヤクザへ復讐する本作。
たしか見たのは中学位の時だったかと思います。
暴力というと、ギャーギャー騒ぎながら行使されるもんと想像していましたが、本作は違います。

俺も死ぬし、あんたも死ぬ。
突発的に。
前触れなく。

この不条理。
意味の消失の怖さ

そうした怪電波が映画全体からビシバシ発せられていて、心底チビるかと思いました。
観る人によっては「退屈」と言いたくなるかもしれません。
だが、静かな瞬間。
ふと人を殴りたくなったり、あるいは刺す妄想をした経験が俺にもある。
もしも、そうした己のドス黒い妄想を実行したら…
考えうる嫌な形で映画内で再現される。

それまで観た映画に無かった低温の暴力模写に中学の俺は戦慄したもんです。
今ではカブトムシの人、カマキリの人というイメージがある哀川翔と香川照之ですが、二人の爬虫類のような狂気の低温演技は観る者を捉えて離さない。

黒沢清といえば、「何だったの、アレ…」と観ている者を突き放す映画ばっか撮っている人だなあ!という印象が昔から今に至ってもある。
死ねフィル…失礼、シネフィルの方には考察をこねくり回すのに格好の映画ということで、俺なんかも「へー」と感心することもあります。
だが、初期の作品が頭に残っているせいだろうか。
もし目の前でペラペラと高説を語っているシネフィルを見れば思わず無言でハンマーを振り上げたくなるでしょう。
やはりジワジワ忍び寄る厄ネタな映画なのは間違いない。

ともあれ何も映画は涙を流したり、笑ったり、熱くなるもんだけではない。
己の嫌な感情を揺さぶるのも映画だよと教えて貰えた作品でした。

という訳で、未見の人は出来るだけ天気の悪い日に観て頂きたい。
いかん!初回から嫌がらせみたいなレビューじゃねえか!
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