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ゲーム屋人生へのレクイエム 1話

知人宅に食事に招待されたときのおはなし。

「うちの長男が、マジでゲームクリエーターになりたいって言うんですよ」


「いいんじゃない」


「でもですね、どうも簡単に考えているようで心配してるんですよ。それで、昔ゲーム業界で働いてたって言ってたじゃないですか。息子に話してもらえませんか、そんな楽じゃないって」


「確かに働いてたけどさ、ずいぶん前の話だし、大したことしてないし。参考にならないと思うけど」


「いえいえ、そんなことないでしょう。話をきかせてやってくださいよ。お願いします」


「まあ、そんなに偉そうな話はないんだけどね。つまんない話かもしれないけど話してみようか」


「ねえねえ。ゲームの仕事したいんだって?」


「はい。ゲームクリエーターになりたいんです」


「ほうゲームクリエーターね。どうして?」


「ゲームが大好きなんです。毎日ゲームできるし。だからゲームクリエーターになりたいんです」


「この人はゲームクリエーターだったんだぞ。話をきかせてもらいなさい。お前が考えているほど簡単じゃない世界なんだぞ」


「ゲームクリエーターだったんですか!すごい!どんなゲーム作ったんですか?」


「言っても絶対知らないだろうから言えないよ」


「どうすればゲームクリエーターになれるんですか?教えてください!絶対ゲームクリエーターになるんです!」


「まあまあ、そう熱くならなくても。さっき、毎日ゲームできるからなりたいって言ってたよね。それは間違ってない。でもね、君の考えていることと現実は全然違うよ」


「どういう意味ですか?」


「君はどうしてゲームをしているの?」


「どうしてって、遊んで楽しいからです」


「だよね。君はお金を払ってゲームを買ってそれを遊んでいる」


「はい。そうです」


「ゲームの仕事をしている人は、お金をもらってゲームをしている」


「いいじゃないですか。うらやましい」


「いや違うね。お金をもらうという事は、仕事なのよ。結果を求められるのよ。ただ遊んでいる訳じゃない。責任がある」


「よくわからないです」


「ゲームクリエーターはゲームを作るのが商売。ゲームが売れないと商売にならない。商売にならないと責任を取らされる。はっきり言えばクビだ」


「・・・」


「君がゲーム遊んで全面クリアできなくても責任を取らされることはないよね。この違いだよ」


「でも、ぼく、なりたいんです。ゲームクリエーターに。どうやってゲームクリエーターになったんですか?教えてください!」


「知りたい?」


「知りたいです」


「この話長いよ」


「聞きたいです」


「じゃあ話をしようか」


続く


*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

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