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ゲーム屋人生へのレクイエム 56話

自分の勤める会社の社長がクビにされそうになって、次は自分じゃないかと戦々恐々としてたころのおはなし

「社長がクビになりそうになって自分で辞めたでしょ。この会社の先は長くないなって感じ始めてたのよ。こんな時って続くんだよね」

「何が続くんですか?」

「今度は営業担当のマネージャーが会社を辞めたのよ。転職するって。給料も役職も上がるからって辞めちゃったのよ。アメリカって転職して自分のステータスをあげる社会だからさ。仕方がないんだけどね」

「そうなんですか?」

「そうだよ。同じ会社に長く勤めることも別に悪いことではない。本人がそれでいいと思えば何も問題はない。しかし、同じ会社で永年勤続して出世するのは時間が掛かる。新たな知識や経験を学習する機会が少ないからだ。会社は即戦力を求めるから経験者を雇う。転職するたびに少しでも経験を身に着けてそれを武器にしてまた転職する。転職を繰り返して出世するほうか遥かに早いということになる。会社は経験者を優遇するから給与にも差が出るということだ。今、俺の周りにいる人間は一人残らず転職経験者だ。俺自身もR社で3社目の会社だし。日本で転職組の履歴書を見て、何だこいつ転職しまくってるじゃないか。きっと何をやっても長続きしないに違いないって思うのは今でも普通だと思うけど、アメリカでは履歴書にどれだけ転職して多くの実績を積んできたのかをたくさん書けば書くほどその履歴書にハクが付く。アメリカで転職するのは普通なのよ」

「アメリカのほうがいいんですかね。転職しても他人の目を気にしなくていいし」

「そうね。自分に向いている仕事かどうかはやってみなきゃわからない。周りの目を気にして好きでも嫌いでもない仕事を一生続けるのは悲劇だ。けどね、アメリカの雇用体系がすべて優れているわけではないぞ。日本の雇用体系の数少ない優れたことがあるぞ」

「年功序列ですか?」

「いや違う。ありゃ悪だ。答えは一定期間勤めたら退職金が支払われることだ」

「え?アメリカって退職金ないんですか?」

「ない。基本的にない」

「どういう事ですか?」

「自分で会社を辞める場合は退職金は出ない。会社の都合でやめさせる場合払う事がある。経営上の理由でリストラする場合とかね。でもこれは法的に縛られているものではないから支払いの義務はない。個別に雇用契約があってその中で明確に規約されている場合は払うけどね」

「じゃあ定年退職になったらどうなるんですか?自分の意志で辞めるんじゃないですけど」

「アメリカに定年はない。本人がそろそろリタイアだって思ったらそこで辞める。多くの場合は年金を満額もらえて医療費も優遇される67歳でリタイアするぞ。さっきも言ったけど退職金という制度が無いから老後の蓄えは自分で何とかしないといけない。多くは401Kとかで積み立てるんだ。年金だけじゃ食っていけないのは日本もアメリカも一緒だぞ」

「厳しいですね。退職金ないって」

「そうだな。でも日本みたいに決まった歳になると強制的にリタイアさせられるのも不幸だと思うぞ。まだまだ働けるのに貴重な労働力の放棄だよ」

「熱くなっているところ申し訳ないんですが、話が脱線気味です。そろそろストーリーに戻ってください」

「すまん、すまん。戻そう。それでセールスマネージャーまで退職して、こりゃいよいよまずいぞってなった時に、思いがけないところから手を差し伸べられたのよ」

「何があったんですか?」

「おっと。1400文字超えてるから次回に続くことにするぞ」

「話が進まなくてじれったいです」

続く
この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません

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