シリーズ150万部突破!『リーダーの仮面』の制作秘話を聞いてみた!【新入社員がインタビュー】
>>前編「ベストセラー編集者が明かす『売れる本の鉄則』、若手時代につかんだ極意とは?【新入社員がインタビュー】」から読む
「面白い会社の社長さんがいるんだけど会ってみないか?」
ーー大和書房さんで「売れる本を作るコツ」を掴んだあと、ダイヤモンド社に転職したんですよね。種岡さんの一番のヒット作になっている『リーダーの仮面』はどのようにして生まれたんですか?
まず著者の安藤広大さんとは、別の著者候補の方からの紹介で出会いました。安藤さんは「株式会社識学」という会社の社長をしているんですが、「面白い会社の社長さんがいるんだけど会ってみないか?」と誘われたのがきっかけです。
最初、ホームページを見たときは、大変失礼ながら「ちょっと怪しい会社なのでは……」と思ってしまって一回会うのはお断りしたんです(笑)。そしたら、連絡を再度いただいて、では一度会ってみましょうとなったんです。
安藤さんと話をさせてもらうと、すごく納得感があって。一見、世の中で一般的に言われているリーダーシップ論と真逆のことを安藤さんは話し始めたんです。けれど、よく聞いていくとちゃんと本質を突いているところに惹かれました。
ーー具体的には、どんなリーダーシップ論を話していたんですか?
例えばですけど、今って上司・部下も上下関係なく対等に腹を割ってコミュニケーションすることがいいとされている風潮があるじゃないですか。けれど安藤さんはそうじゃなくて、社長、役員、部長、課長……という役割に応じてピラミッド構造で仕事を進めていくことがマネジメントの上では最適だと話していたんです。それが1周回って新鮮さを感じたんですよね。
僕は30歳になった頃に安藤さんと出会ったのですが、周りの同い年くらいの人たちが会社によっては課長や主任になり始めるタイミングだったんです。そういう人たちと飲んでいると、マネジメントの悩みとかコミュニケーション疲れで疲弊しているグチばかり聞かされていたんです。
そんな人たちの悩みに、安藤さんのもっている考え方が役に立つだろうなと思って、自分自身が課題としているテーマでもあったので、本を一緒に作りましょうという話になりました。
リーダーシップは「会社から求められる機能を果たすだけ」でいい
ーー『リーダーの仮面』というタイトルがとても印象的ですよね。
この『リーダーの仮面』という言葉が生まれた背景には、安藤さんのリーダーシップに関する考え方があるんです。安藤さんは、リーダーシップを発揮するに当たって性格を変えるべきとか、人間的に素晴らしいから人がついてくるんだとは考えていなくて。リーダーシップは「会社から求められる機能を果たすだけでいい」と言った話が、すごく心に刺さったんです。機能だけ果たせばいいのなら、自分にもできるなと素直に思えたんですよね。
そして「『機能』という言葉をタイトルっぽく言い換えると、要するに『仮面を被る』ってことですよね?」と安藤さんに聞いたんです。そしたら、このぽろっと出た言葉を、「なんかいいね」と安藤さんも拾ってくださって『リーダーの仮面』というタイトルが生まれました。
どの本を作るときにも、シリーズ化は前提とせずに作る
ーー『リーダーの仮面』は大ヒットし、その後シリーズとして『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』が発売されました。最初からこの3本軸によるシリーズ化は考えていたんですか?
いえ、まったく考えていませんでした。当初、『リーダーの仮面』で最初にあがってきた原稿は、新入社員から管理職、経営者まで読めるような感じで、特にターゲットが絞られていなかったんです。それをブラッシュアップするときに、中間管理職だけに向けた本にした方がいいのではないかと判断して、中間管理職に当てはまらない話は全部カットしたんです。先ほど話した、30歳くらいで疲弊している「リーダーになりたての管理職1年目の人」だけに向けた内容にしました。
そして『リーダーの仮面』がうまくいったので、次はその中間管理職の下にいる若手の人に向けた『数値化の鬼』を。さらにそれがうまくいったので次は経営に直接関わる管理職に向けた『とにかく仕組み化』をそれぞれ作ることになりました。
今回は結果的にシリーズ3部作となりましたが、どの本を作るときにも、シリーズ化は前提とせずに「この1冊で大丈夫!」と思うようにして作っています。
ーー安藤さんの新著も今後発売されるんですよね。
そうなんです。毎回出し切ったはずなのに、うまくいったら新しいテーマが見つかるから不思議ですね。今度のテーマは組織に所属する全員に必要な「意思決定」というテーマで進めています。今までよりは、読者層を広く狙っているので、また多くの人に読んでもらえるといいなと思っています。
他の本では見たことがない「違和感」を探す
ーー実際に本を編集していくにあたって類書を読んだりすると思うのですが、種岡さんは他の編集者が作った本をどんな風に見ているんですか?
「いい違和感」を探すことが多いですかね。今まで自分が読んだ本とか、仕事で参考にした本はある程度頭の中に入っていると思うので、オーソドックスなものは自分の中にあるんです。だからこそ、「この工夫は他の本で見たことないな」といった部分を見つけるようにしています。
例えば、『頭のいい人が話す前に考えていること』であれば、冒頭で「読み返さなくていい本を目指しました」と書いてあって。多くの本では「何度も読み返してほしい」と書いてあるので、それを否定しているところが他の本にはないポイントですよね。
あとは最近読んだ他社さんの本だと、『生きのびるための事務』という本があって、「事務」という普通すぎる言葉をメインテーマにしているところが新しいですよね。それもあって、著者の坂口恭平さんのことを元々知らない人でも「事務」という言葉に惹かれて興味をもつし、実際に幅広く読まれているようです。さらにあの本は「はじめに」がなく、「世界的に有名な画家やアーティストであっても事務が必要」という例から「事務は誰にとっても必要なもの」と感じさせる導入にしていて、つかみが上手だなと思います。
そんな風に、他の本と一味違うところを探しながら読んでいます。
今度は「ストーリー形式」の書籍に挑戦したい!
ーーでは最後に今後編集者として叶えたい目標や新たに挑戦したいことがあれば教えてください!
編集者になりたての頃に考えていた目標は、いくつか叶えられたものもあります。例えば、著者のブレイクに立ち会えたことですね。特にひろゆきさん、そして前の会社でご一緒した落合陽一さんが、一緒に本を作った後、どんどん世に広がっていく様子を間近で体験できました。他にも、『リーダーの仮面』三部作のようにロングセラーを作ることができたのも、目標としてはクリアできたのかもしれません。
その上でさらにやりたいと思っていることは二つあります。一つは、魅力的な主人公がいるようなストーリーがある本を作ることですね。今まで物語を軸とした本は全く作ったことがないんです。でも、そもそも本に興味を持ったのは小説の『僕は勉強ができない』ですし、自己啓発書も『夢をかなえるゾウ』のような本です。どちらも、細かな内容は忘れていても、登場するキャラクターのことはしっかり頭の中に残っているんですよね。その力は偉大だなと思います。だから、次の課題としては、物語やキャラクターの力が宿ったような本を著者と一緒に生み出してみたいですね。
もう一つは、自分より年下の世代でブレイク前の人と一緒に本を作りたいです。ひろゆきさんや落合さんも、僕より年上の方々です。今後は、さらに下の新しい世代の方から刺激をもらいながら、その世代の代表作のようなものを作れたらいいなと思っています。このnoteを読んでいただいて、「我こそは!」という方、ぜひコメントなり、僕のXアカウントにDMをください!
ーー種岡さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!
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