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国際決済銀行BISが指揮する様々なCBDCプロジェクト

この記事は2022.10.16にニュースレター(Link)で配信した内容です。


国際決済銀行BISは各国中央銀行の相互の決済を行う組織

 国際決済銀行は、各国の中央銀行との取引を通じ、外貨準備の運用などを支援する、中央銀行の上に位置する銀行です。

https://www.bis.org/

 国際決済銀行「BIS」というのは、Bank for International Settlements の略語です。
 設立は1930年で公的機関としては「最古の国際的金融組織」と言われています。

 約2カ月に1度、世界の中銀総裁がBIS本部に集まり、金融や経済情勢について協議しているといわれます。



CBDCとは

 CBDCとは、Central Bank Digital Currencyの略。

 定義は「中央銀行が法定通貨建てで発行する、デジタル化された中央銀行マネー(銀行券と中央銀行当座預金)」とされています。

https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c28.htm




CBDCは大きく2種

 CBDC には大きく二つの形態があります。


「ホールセール型 CBDC」

→ 金融機関など一部の対象先に限って大口の資金決済に利用する

「一般利用型 CBDC」 (リテール型CBDC)

→ 個人や企業など利用対象に制限を設けず小口決済までをカバーする



CBDCを導入する目的

https://www.smtb.jp/-/media/tb/personal/useful/report-economy/pdf/106_0.pdf

BISおよび中央銀行がCBDCを導入する目的は以下の通りとされている。

  1.  スマホやネット通販が浸透しオンライン決済シーンが普及することを後押しするため、さらに物理的な現金を補完するための"デジタル化された通貨"を提供する。

  2. 現金流通コストを削減することに加え、決済システムが未整備な新興国などではCBDC導入により、スマートフォンを使ったデジタル決済を普及させる

  3. 新興国では銀行口座を持てない人や、先進国でもデジタル技術を利用できない人たちに安全かつ便利な支払い手段を極めて低コストで供与する

  4. マネーロンダリングや犯罪対策の強化。現金は完全な匿名性を持っているため、不正行為の温床となり易い。CBDCであれば流通・保有の情報が捕捉可能となり、抑止効果が働くプライバシー保護との両立は課題

  5. 通貨主権の確保。民間デジタル通貨、あるいは他国のCBDCが国内に広く浸透した場合、自国通貨の利用が減り、中央銀行が通貨コントロール力を失ったり、金融政策の効力が弱まったりする可能性がある。



CBDCプロジェクトの状況

 下記のCBDC Trackerサイトで各国のCBDCプロジェクト状況を俯瞰できます。(この記事執筆時よりも進展していると思います)

 下図の2枚を比較してみると、アフリカ大陸の国々がDevelopmentに進んでいるのが目立ちます。

2022年10月時点のキャプチャ

https://www.atlanticcouncil.org/cbdctracker/


2024年7月時点のキャプチャ

https://www.atlanticcouncil.org/cbdctracker/



既に採用済みの中央銀行も

 下図は各国の検討状況をあらわしたものです。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220513b.pdf


カンボジア中央銀行

 2020年10月、カンボジア中央銀行はHyperledger IrohaベースのCBDC「Bakong system」を正式運用開始しています。(https://www.hyperledger.org/wp-content/uploads/2020/11/Hyperledger_CaseStudy_Soramitsu_Printable_111220.pdf)


ナイジェリア中央銀行

 2021年10月、ナイジェリア中央銀行は「eNaira」の正式発行を公表済みです。

https://enaira.gov.ng/




相互連携のクロスボーダーPJが多数

https://medium.com/tokyo-fintech/bis-innovation-hub-hong-kong-f23e0f43bb3f


mBridge

 BISイノベーションHub(香港)が主導し、香港・タイ・アラブ首長国連邦(UAE)・中国らが参加し進められているプロジェクト。
(https://www.bis.org/about/bisih/topics/cbdc/mcbdc_bridge.htm)


Dunbar

 BIS イノベーションHub(シンガポール)が主導、マレーシアや南アフリカ等も参加。
 現時点で2種類のCBDCシステムのプロトタイプを開発し終えたところで、今後は取引規模を拡大した実験のほか、参加国の法律や規制等を考慮したシステム運営に関するルール作りが予定されている。
(https://www.bis.org/about/bisih/topics/cbdc/dunbar.htm)
(https://www.iima.or.jp/docs/international/2022/if2022.10.pdf)


Project Icebreaker

 2022年9月、BISとイスラエル、ノルウェー、スウェーデンの中央銀行が共同で、リテール型CBDC(中央銀行デジタル通貨)のクロスボーダー決済に焦点を当てた調査事業「Project Icebreaker」を立ち上げたことを発表。
(https://www.neweconomy.jp/posts/262667)




さいごに

 今回の記事では、各国の中央銀行の上に位置するBIS、そしてそのBISが世界中で指揮する様々なCBDCプロジェクトとクロスチェーンプロジェクトの存在を紹介しました。


 世界中の国民・企業が日々利用する「デジタル通貨」に重要な要素は以下の3点がまず考えられます。

・「高速に大量な処理できる」→現在のクレジットカード同等/以上の処理
・「極小エネルギーで処理できる」→持続可能性
・「異なるDLT, Blockchainプラットフォーム間でも相互互換性がある」→グローバル経済でスムーズなCBDC決済性


 上記の観点からBlockchainのLayer1, Layer0の各Token銘柄を捉えるのは重要なポイントです。
(過去記事;https://11shiten.theletter.jp/posts/619b5d30-4c7b-11ed-9a95-4d324fb883ec)


 そしてこのような各国の通貨の仕様・運用を世界統一化していくにはルールや規格が必要となります。
 それが「金融通信メッセージの世界共通の規格である ISO20022」です。


ISO20022については下記記事も参照ください。



以上


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