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“国際ニュースの沼”にハマった! 「深読みゼミ」が終了

国際ニュースは“筋書きのない大河ドラマ”みたいだ――。

これを合言葉にganasが開講する「途上国ニュースの深読みゼミ」の11月期が今週月曜日に終わりました。今期も学生からコンサルタントまでが受講してくださり、ニュースをネタに楽しく盛り上がりました。

11月期に受講者みんなで深読みした記事は下の4本。

中東、対イスラエル外交を見直し アブラハム合意にひび

インド工科大、アフリカに初の海外校 校長に聞く

マニラ電力、小型原発の米USNCと連携 事業化調査

極右のミレイ氏が大統領選勝利 アルゼンチン 政界のアウトサイダー

最終日に取り上げたアルゼンチンの大統領選の記事を例に、どんなことをみんなで調べ、どんなことがわかったのか、を参考までに簡単に紹介します。2時間で調べたことの一部です。

その前に、アルゼンチンといえば、バックパッカーなどの間では「イケメン&美女が多い国」として有名。ですが経済的には「デフォルトをひんぱんに起こす国」、政治的には「左派・ポピュリズムの代表的な国」(その象徴的な存在がペロン元大統領)、移民の歴史的には「スペイン系だけでなく、イタリア系も多い国(日系人もちょっといる)」でもあります。

今回の大統領選は、表面的な現象だけを抜き取るならば、経済面でピンチ(過去にも繰り返しあったパターン)になったから左派政権が負けた、で終わります。ただ思考を広げていくと、いろんな側面が見えてきます。これがおもしろいわけです。“国際ニュースの沼”。

たとえば

・大統領選で勝利したミレイ氏の父はバスの運転手だった(ちなみにベネズエラのマドゥロ大統領は自身がかつてバスの運転手)。ある意味、夢があるかもしれない。日本の政界でいえば菅義偉氏がこんな感じか? いや、故・田中角栄氏か?

・ミレイ氏はテレビに引っ張りだこの経済学者だった(日本で言えば舛添要一氏みたいなもの)。まさにポピュリズム。

・ミレイ氏が公約として掲げた「ドル化」には、「公式のドル化」と「非公式のドル化」がある。ドルを使う国は世界にいくつもあり、パナマ、エルサルバドル、エクアドル、カンボジア、ジンバブエなどが代表的。ハイパーインフレで自国通貨が紙くずとなったベネズエラでは事実上、ドルが通貨になっている(非公式のドル化)。

・ドル化の効果がどれぐらいあったかは定かではないが、エクアドルはドル化へ移行した後、インフレが鎮静化し、また貿易量も増えた。

・アフリカに目を移すと、フランス語圏アフリカの共通通貨であるCFAフランは、それ以外のアフリカ諸国の通貨と比べると、価値は安定している(ユーロとペッグしているため)。ただその半面、外貨準備の半分をフランスに預けないといけない、通貨政策を打てない、ラストリゾートの問題、フランスの介入などの負の面も多々ある。安定をとるか、独立性をとるか?

・ビットコインを法定通貨として採用した2つの国(エルサルバドル、中央アフリカ共和国)のいまをみると、エルサルバドルではさほど普及していないようだ。そもそも乱高下が激しいビットコインを法定通貨として使うのは無理のような気がしなくもない。

・凄まじいインフレに見舞われたからといって政権交代が起きるとは限らない。その筆頭がジンバブエ、ベネズエラなど。なぜだろう? 民主主義ではないから? 経済運営に失敗する国は権威主義が多いのかもしれない。なぜ?

・インフレ率のワーストランキングの変遷(過去40年ぐらい)をみると、同じ国が繰り返し入っている。アルゼンチンは常連国のひとつ(なぜ、同じ事態に陥るのだろう? 経済学者出身のミレイ氏に期待したくなるアルゼンチン国民の気持ちはわかる気がする。

・左派政権は庶民へバラマキをするのでお金がなくなり、その不足分をお金を刷ってまかなうこともあるためインフレになりやすい? アルゼンチンだけでなく、ベネズエラや今ならメキシコ、タイなども。地球のいたるところで同じような事態が繰り返し起きている。

・インフレ対策にアルゼンチンは牛肉輸出(ほとんどは中国向け)をストップさせた(ちなみにインドも昨年、コムギの輸出をストップした)。こういった側面をみても、世界はつながっていると改めて感じる。

・右派政権に変わるアルゼンチンだが、中国との貿易量は米国向けよりはるかに多い。また一帯一路に参加する国でもある。「右派政権の誕生=脱・中国&親米(何をもって親米か?)」にはなりにくそう。

・インフレを理由に、欧州に移民するアルゼンチンの若者も出てきた(おそらくは上流階級)。アルゼンチンはスペイン系、イタリア系が多い国(ほぼ白人の国)。比較的スムーズに移民できるのかもしれない。

・日系アルゼンチン人は日本にやってくるのか? 1980~90年代は日本の企業にとって、日系人の出稼ぎ労働者は「雇用の調整弁」だった。その役割はいまは技能実習生などが担う。日本経済が落ちていく中、むしろ日本人が出稼ぎに行く時代になりつつあるのが現実。この30~40年で時代は大きく変わったと実感。

・話は逸れるが、アルゼンチンへ日本から移民するにはアフリカを回っていくので船(笠戸丸)に1カ月半乗る必要があった。南米の西海岸のペルーだと1カ月ちょっと。アルゼンチンへの移民はとくに勇気が必要だったことだろう。移民した国の政情不安を日系人はどう感じるのだろう。

・アルゼンチンの大統領選の投票率はおよそ75%。トップが変われば、国はガラリと変わる。なので投票率が高いのは当然といえば当然。見方を変えると、政治は常に不安定。投票率が高いことを単純に良いと喜べない気がする。

など。

国際ニュースは今後の展開が読めないから、いろいろ想像できて興味深い。過去の話(歴史)も現在とつなげたり、思考を広げたり(ちょっと脱線したり)すると、余計におもしろくなる。

次回の「途上国ニュースの深読みゼミ」は12月です。国際ニュースの沼に一緒にハマってみませんか? 唯一無二のプログラムです。

【〆切12/2】メディアのプロと一緒に学ぶ!「途上国ニュースの深読みゼミ」(12、1月)受講者募集