勝山益義

KJC勝山国語塾代表。新潟市出身。国語科教諭として、県立長岡高校、県立巻高校等の新潟県…

勝山益義

KJC勝山国語塾代表。新潟市出身。国語科教諭として、県立長岡高校、県立巻高校等の新潟県内進学校で約20年間受験指導。現在、県立新潟江南高校講師を兼務。評論「小林秀雄『無常という事』」2014数研出版(CiNii収録)。

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ホントはおもしろい現代文__仮想

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          ◆ホントはおもしろい現代文__坂を登る生命   2022/06/15 ベルクソンの言葉に「生命には物質の下る坂を登ろうとする努力がある」というのがある。では、そのままでは下るだけの坂を、生命はどうやって登るのか。福岡伸一氏は、『新版・動的平衡』の中で、その可視化されたモデルの提示を試みている。 「物質が下る坂」とは、すべての現象は乱雑さが増える方向にしか進まないという「エントロピー増大の法則」をさす。何もしなければ、熱は拡散し、かたちあるものは崩れてゆく。僕らもまた同様で

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          ホントはおもしろい現代文__情報

          ◆ホントはおもしろい現代文__情報 2022/06/12 「高度情報化社会」「過剰な情報」といった言葉をよく聞くが、ところで、「情報」とは何だろう。一般的には「お知らせ」「知りたいこと」。「知識に変化をもたらすもの」といった定義もある。が、その本質を考えてみると、情報とは「差異」であると岩井克人氏は言う。 「アリババと40人の盗賊」のお話。アリババの召使いマルジャーナは、アリババの家を見つけた盗賊の手下が扉に印をつけるところを目撃する。このままでは盗賊たちにアリババの家が

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