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ホントはおもしろい現代文__ものと名前

◆ホントはおもしろい現代文__ものと名前
2022/06/24

一般的には、もののイメージがあって、それに適する名前が付けられたと思われがちだが、実はそうではない。ものと名前との間に、必然性はないのである。構造言語学のソシュールほ、こうした性質を「言語の恣意性」と呼んだ。

たとえば「イヌ」。四本足で、走るとけっこう速くて、噛んだり吠えたりするので少し怖いあれに、「イヌ」という名前がついているが、あのイメージと「イヌ」という名前には深いつながりはない。

もし、深いつながりがあるのならば、言語が変わっても似たような名前がつくはず。ところが、英語では"dog(ドッグ)"、フランス語では"chien(シヤン)"、中国語では”狗(グァウ)”と、大きく異なる。

では、どうやって名前がつけられたかと言えば、同一言語内の、他のものとの区別のために付けられた、というのである。

日本語であれば、「イヌ」という名前はあくまで「ネコ」や「ネズミ」、あるいは「ウシ」や「ウマ」との区別のためにあるもので、「イヌ」のイメージとは関わりがない。

従って、そこから、人々の関心や関わりが小さなものの名前は大雑把だが、大きなものは名前が細分化するという事態が生じる。

たとえば、魚。日本語では、出世魚のように、魚の名前は細かく分けて付けられるが、英語にはない。一方、肉に関しては、日本語では、牛肉、豚肉、鶏肉と言っても、肉は「肉」。しかし、英語では、”cow meat”、”pig meat ”ではなく、”beef ”、”pork”と、はっきりと区別される。

昨今、ICT関連の用語が次々と現れてくるのも、人々の関心や関わりの高まりのためと考えれば肯けるが、せめてこれから名づけるものは、イメージと結びついた名前を付けてもらうとありがたい。

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