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ホントはおもしろい現代文__情報

◆ホントはおもしろい現代文__情報 2022/06/12

「高度情報化社会」「過剰な情報」といった言葉をよく聞くが、ところで、「情報」とは何だろう。一般的には「お知らせ」「知りたいこと」。「知識に変化をもたらすもの」といった定義もある。が、その本質を考えてみると、情報とは「差異」であると岩井克人氏は言う。

「アリババと40人の盗賊」のお話。アリババの召使いマルジャーナは、アリババの家を見つけた盗賊の手下が扉に印をつけるところを目撃する。このままでは盗賊たちにアリババの家が知られて、ひどい目にあわされてしまう。印を消したいが、なかなか消えない。どうしたらいいか。

マルジャーナが考えついた方法は、他の多くの家の扉に同じ印をつけることだった。

扉の印は、他の家の扉に印がないことによって、アリババの家を示すものになっている。つまり、印の有無の差異によって情報として成立していたのである。

マルジャーナは、他の多くの家の扉に同じ印をつけて、その差異を打ち消すことで、アリババの家の印から情報としての価値を奪ったのである。マルジャーナは、情報の本質が差異であることをよく理解していたと言える。

こうしてアリババは、マルジャーナの機転によって、盗賊達の襲撃を免れた。

一方、盗賊達を連れて、意気揚々と町へやって来た盗賊の手下は、アリババの家がわからなくなって、お頭から手ひどい仕打ちを受けることになる。(岩井克人「マルジャーナの知恵」)

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