ファンベース

マス広告からファンベースへの変遷(『ファンベース』関連書籍書評)

これからのマーケティングの必読の書と言われる『ファンベース』と、著者・佐藤尚之氏が過去に発刊した『明日の広告(2008)』『明日のコミュニケーション(2011)』『明日のプラン二ング(2015)』を時系列でまとめてみました。

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①明日の広告(2008)

「オムニチャネル」の概念や重要性を分かりやすい言葉で解説されています。まだ日本でSNSユーザが急増する前に書かれたとは思えないほど、今日もバイブル的に読める内容でした。

②明日のコミュニケーション(2011)

新・消費者行動モデルであるSIPSが詳しく紹介されています。SIPSとは、ソーシャルメディア上で生活者個人がどのように行動を起こすかがシンプルに示されたものです。

SIPSとは・・・
 S=Sympathize(共感する)
 I=Identify(確認する)
 P=Participate(参加する)
 S=Share & Spread(共有&拡散する)

本書では、従来の購買モデルであるAIDMAやAISASとの違いや共存方法について具体的に示唆されています。

③明日のプランニング(2015)

いよいよ発信された情報が生活者に届くことが不可能なった様子が、「情報『砂一』時代」ということばで表現されています(ブロードバンド・SNSの普及等により、2010年に世界中の砂粒の数と同じ1ゼタバイトの情報が流れたことから『砂一』と表現されている)。特にインターネットの世界でイノベーターに含まれるような感度を持つ生活者を「砂一時代の生活者」とし、「砂一時代の生活者」には全く情報が伝わらないことを前提にマーケティング施策を考える必要がある、と述べられています。特に「最強のメディア」に関する記載は記憶にのこりました。

最強のメディアは友人知人である。
【理由1】信頼メディア:情報が多すぎると人は友人知人に頼る
【理由2】便利メディア:友人知人から自分に有益な情報が届きやすい
【理由3】拡散メディア:友人知人への共感を伴って拡散する
【理由4】常時メディア:スマホにより友人知人が24時間繋がっている

④ファンベース(2018)

上記で紹介した「明日の」シリーズの総決算のような内容の本書。「砂一時代の生活者」に対してファンベースが必要であるという記述だけでなく、マスベースの施策との融合についても具体的な示唆があります。とわいえ、やはり他のマーケティング関連書籍との大きな違いは、「少数の限られたファンに対する施策が中長期的な売上を支える」という言語化が難しい分野がフレームワーク化されていることだと思います。また、最後の章のコメントに表現される思想が、今後マーケティングに与える影響は小さくないと感じます。

ファンベースは何かとキレイゴトの理想論と捉えられがちだが、実際、商品の価値を支持してくれ、愛用してくれているファンの笑顔を作ることほど、うれしく、誇らしく、やりがいのある仕事は他にはないのではないだろうか。ファンベース施策の実行は実は「喜び」に満ちているのである。



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