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朝食にもおすすめ!ロシアの伝統的なおやつ「シールニキ」を作ってみよう

『はじめてでも美味しく作れるロシア料理』著者ヴィタリさんに訊く、もうちょっとロシア料理のことーvol.5ー

料理が大好きというロシア人のオペラ歌手、ヴィタリ・ユシュマノフさんのとっておきのロシア家庭料理のレシピが、はじめてでも美味しく作れるロシア料理という一冊の本になりました(ご好評につき、重版出来!)。この連載では、本に収めきれなかった貴重な解説を含め、いくつかのレシピを特別に公開しています。
今回ご紹介するのは、ロシア人なら知らない人はいないという伝統的なおやつ「シールニキ」です。チーズやレーズンを使ったほどよい甘さのレシピは朝食にもピッタリ。ぜひ作ってみてください。
前回の記事はこちらからどうぞ。

名前の意味が変わっても、昔から愛され続けるおやつ

ロシア人なら誰もが子供の頃から知っている、とても伝統的な料理です。日本では”焼きチーズ”として紹介されることもあります。
このおやつの主役は、カッテージチーズ。ロシアでは「Творог/トゥヴァローク」といい、牛乳を凝固させてたんぱく質を絞ったフレッシュチーズのひとつで、毎日食べるほど一般的な食品です。
分量が細かく1グラム単位になっているのは、ソ連時代のGOST 規格(=標準規格)レシピだからです。ただ、今の私には少し甘すぎるので、砂糖の分量を少し控えてアレンジしています。

トゥヴァロークの由来については、ふたつの通説があります。
ひとつは古代ローマ時代、砂漠の旅で牛乳を運搬した際、偶然にできたフレッシュチーズが美味しく、この偶然が始まりという説。
ふたつ目はスラヴ系に起源を持つ食品という説です。スラヴ民族の牧畜業は大部分が酪農で、牛乳が貴重とされていました。食肉用の家畜は少なかったのですが、牛乳や乳酸菌を生かした食品、料理が数多くあったのです。

ロシア語でチーズは「Сыр/シール」といいます。これは「生のもの」の意味で、シールニキは「チーズから作ったもの」という意味。
でも実際は、シールニキはトゥヴァロークから作るので、今のロシア人にとっては少し混乱を招いてしまう、わかりづらい名前になってしまいました。

混乱の原因は、言葉の意味の変化です。
昔は生乳から作られているものが「シール」と呼ばれていましたが、ピョートル1世が、18世紀にヨーロッパからロシアへ、ハードタイプのチーズを持ち込んだ頃から、カッテージチーズは「トゥヴァローク」と呼ばれるようになりました。
一方、ハードタイプのチーズを「シール」と呼ぶようになりました。こうして言葉の意味は時代とともに変わりましたが、料理名は今もそのままになっています。

「シールニキ」はロシアでは大昔から知られているレシピですが、今はレーズンを入れて焼きます。私の家ではとくに、週末の朝食として作ることも多く、私も子どものころから大好きです。
作り方はとっても簡単。材料を混ぜて、焼くだけ。 ジャムや練乳をかけて、食卓に並べます。本当に美味しいので、素敵な朝になりますよ!

【材料】作りやすい分量

<生地>
カッテージチーズ(こしたタイプ*)………200g
小麦粉(薄力粉)………20g
溶き卵………14g
砂糖(できればブラウンシュガー)………15g
レーズン………30g
小麦粉………適量
バター(食塩不使用)………適量
*こしたタイプが手に入らなければ、裏ごしして使う。

【作り方】

1)レーズンを湯に浸し、少し柔らかくする。

2)ボウルにカッテージチーズ、小麦粉、溶き卵、砂糖を入れる。

ロシアのトゥヴァローク(カッテージチーズ)には数種類あり、シールニキには、こしたタイプが使われています。日本でもこしたタイプが市販されていますが、手に入らなければ、ブレンダーにかけるか裏ごしして、大きなダマをなくしたほうが、本場の味に近づけることができます。

3)砂糖が溶けるまで、スプーンでよく混ぜる。

4)1のレーズンの水気を、ペーパータオルで拭き取る。

5)4を3の生地に入れ、よく混ぜる。

6)バットに小麦粉を入れ、生地を厚さ1.5cmほどのクッキー形にしながら、小麦粉をまぶす。

7)フライパンを火にかけ、バターを入れ、6を並べる。弱火から中火ぐらいの火加減で焼く。

8)焼き色がついたら裏返す。

9)蓋をして、弱火にして5~6分焼く。器に盛り、ジャムや練乳などを添える。

両面に焼き色をつけたあと、天板に並べ、180℃に予熱したオー ブンで5~6分焼くと、もっと美味しくなります。
焼きたての熱いままでも、冷めても美味しいです!

次回は3月25日(金)に掲載予定です。どうぞお楽しみに!
これまでの記事は、こちらから。

文:Vitaly Yushmanov(ヴィタリ・ユシュマノフ)/サンクトペテルブルク生まれ。マリインスキー劇場の若い声楽家のためのアカデミーで学ぶ。ライプツィヒ音楽演劇大学を卒業。2015年春より日本に拠点を移す。びわ湖ホールオペラ、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」、「東京・春・音楽祭」、NHK-FM、NHKワールド・ラジオ日本、BSテレ東、NHKワールドTV、東京芸術劇場他の全国共同プロジェクト、新国立劇場オペラなどに出演。「日本トスティ歌曲コンクール」第1位、「日伊声楽コンコルソ」第1位、「東京音楽コンクール」など、受賞多数。これまでに4枚のCDをリリース。幼いころからの料理好きが高じ、YouTube「Café Vitaly」(カフェ・ヴィタリ)でも、その腕を披露している。
オフィシャルサイト:http://vitalyyushmanov.com/
twitter:https://twitter.com/vitaly_jpn
写真:ローラン麻奈


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