娘の黒糖、母の花林糖/沢野ひとし
二十数年前、娘は奄美諸島の徳之島に一年ほど滞在をしていたことがある。村の食堂で働き、気ままな一人暮らしであった。村の片隅のサトウキビ畑に囲まれた小さな小屋で寝泊りをしていた。
我が家には黒いラブラドール・レトリーバーがいたが、娘は「会いたい」とよく電話をしてきた。そこで妻と犬と“三人”で夏休みに飛行機に乗って徳之島を訪れた。
空港の出口で娘は手を振って立っていたが、犬はよほど嬉しいのかリードをぐいぐい引っ張り、娘に飛びついてちぎれんばかりに尻尾を震わせていた。
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