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北風のリュート

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「#創作大賞2024」の応募作品、『北風のリュート』をまとめました。
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#航空自衛隊

【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)

第1話:遠いうねり    そこは世界の蝶番のような場所だった。  東と西の大地の深くえぐれ…

deko
3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第5話

前話 第5話:奏でるもの(1) 【4月13日、G県鏡原市】  うーん、やはり曇ってるか。  気…

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3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第7話

前話 第7話:奏でるもの(3) 「このリュート、どこで手に入れたの?」流斗が尋ねる。 「代…

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3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第9話

前話 第9話:奏でるもの(5)  ふうっと一つ大きく深呼吸し、レイは覚悟を決める。たった一…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第10話

前話 第10話:奏でるもの(6)  そうだ、と流斗はレイがテーブルに立てかけている楽器ケー…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第14話

前話 第14話:糸口(1) 【4月28日 鏡原】  昨日の気象学会でも、鏡原の現況が話題にのぼ…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第15話

前話 第15話:糸口(2) 「赤い浮遊物の正体が知りたい。こいつが鍵を握ってると思うんだ」  それでさ、と迅に膝でにじり寄る。 「空自で採取できないかな」  迅は飲んでいたほうじ茶でむせる。 「カブトムシを捕るみたいな気楽さで、何言いだすんですか」  飛び散ったほうじ茶を慌てておしぼりで拭く。 「採取の必要性をどう説明するんですか」  さすがに語尾に怒気がまじっている。 「空中で捕獲するとなると、イーグルではなくヘリを飛ばすことになります。『人命救助の最後の砦』といわれる救

【連載小説】「北風のリュート」第22話

前話 第22話:赤の正体(1) 【5月20日 鏡原基地】  事態は別方面から動いた。  デブリが…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第23話

前話 第23話:赤の正体(2) 【5月25日 鏡原基地】  赤い異物をうまく採取できるだろうか…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第24話

前話 第24話:赤の正体(3)  赤い異物の正体は、無数の鱗のようなものの集合体だった。  …

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第25話

前話 第25話:散らばる異変(1) 【6月1日朝 小羽田家】  二十五日にサンプルを採取してか…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第31話

前話 第31話:鏡原クライシス(1)  政府がぼやぼやしている間に、世間が動き、世界が動いた…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第32話

前話 第32話:鏡原クライシス(2) 【6月10日 つくば・気象研究所】 「鏡原を救うために、気…

deko
2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第34話

前話 第34話:鏡原クライシス(4) 「風蟲は空の魚の餌です」  高塚は椅子の背にもたれ目を閉じる。こんな戯言に構っている暇はない。予算書が溜まっているのだ。 「その変異体である赤毒風蟲は、誘引物質を出し引き付けるため、魚は毒が蓄積し死に至る。鏡原の空の魚は絶滅の危機に瀕しています」 「空のどこに魚がいる?」  天馬を黙らせるつもりだった。 「透明なため我々には見えません。風の化身と考えています」  風が魚の姿をしているだと? まだ懲りないか。 「風という漢字の中には虫がい