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北風のリュート

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「#創作大賞2024」の応募作品、『北風のリュート』をまとめました。
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#気象研究官

【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)

第1話:遠いうねり    そこは世界の蝶番のような場所だった。  東と西の大地の深くえぐれ…

deko
3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第5話

前話 第5話:奏でるもの(1) 【4月13日、G県鏡原市】  うーん、やはり曇ってるか。  気…

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3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第6話

前話 第6話:奏でるもの(2) 「珍しいね。それ、リュート?」  レイは竜野川の堤に腰かけ…

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3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第7話

前話 第7話:奏でるもの(3) 「このリュート、どこで手に入れたの?」流斗が尋ねる。 「代…

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3か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第8話

前話 第8話:奏でるもの(4) 「デブリが長引いて、お待たせしました」  深緑のつなぎ姿の…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第9話

前話 第9話:奏でるもの(5)  ふうっと一つ大きく深呼吸し、レイは覚悟を決める。たった一…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第10話

前話 第10話:奏でるもの(6)  そうだ、と流斗はレイがテーブルに立てかけている楽器ケースを示し、 「それ弾いてみせてあげてよ」と促す。 「ヴァイオリンですか?」立原が席から伸びあがる。 「レアな銀のリュートだよ。しかも、レインボーにしか鳴らせないんだぜ」  なぜか流斗が誇らしげだ。 「レインボーって何?」レイはいつになく甲高い声をあげる。 「レイ、レイ坊、レインボー。レイの最上級だよ。虹は最も美しい気象現象だ」君にぴったりだろ、と片頬をあげる。  レイは口を開けたままフ

【連載小説】「北風のリュート」第12話

前話 第12話:謎の増殖(2) 【4月23日 小羽田家】  あいかわらずの曇り空に夕陽がにじむ…

deko
2か月前
71

【連載小説】「北風のリュート」第13話

前話 第13話:謎の増殖(3) 【4月26日】  学会を控え論文やデータの整理に追われ、流斗は…

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2か月前
70

【連載小説】「北風のリュート」第14話

前話 第14話:糸口(1) 【4月28日 鏡原】  昨日の気象学会でも、鏡原の現況が話題にのぼ…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第15話

前話 第15話:糸口(2) 「赤い浮遊物の正体が知りたい。こいつが鍵を握ってると思うんだ」 …

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第16話

前話 第16話:糸口(3)  小羽田家は、県道を挟んで基地の東の住宅街のなかにあった。百坪…

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2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第17話

前話 第17話:糸口(4) 「四日前に、空の魚がレイさんにコンタクトを取ってきました」  向…

deko
2か月前
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【連載小説】「北風のリュート」第18話

前話 第18話:糸口(5) 「結婚式の前日に母に呼ばれてね。座敷に桐の箱が一つ置かれてたの」  美沙の実家は岡崎にあるという。 「庭のハナミズキが満開で、空に捧げられた薄紅の花束のようだったわ」  記憶をたどるように美沙は目を閉じる。 「桐箱には、銀に光る弦楽器が一棹入っていて。娘が生まれたら必ず嫁入りのときに持たせなさいといわれた。もらったのは、それだけ。他には何もなかったはず」  美沙は静かに目を開けた。流斗は美沙から目を離さずに聞いていた。 「龍秘伝なんて巻物、渡され