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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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100字物語「少年のさがしもの」#第1話

少年はフェンスを探していた。港の突堤を、猫が夕陽にむかってぶらついている。その背は太陽の残照を浴びて黄金に輝く。朱色に染まる波をからかうように、カモメが低く旋回している。サギが一羽、高く空に舞い上がった。 (to be continued ) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第2話

少年は羅針盤を探していた。海沿いの国道を見下ろす高台の公園。海は凪いでいた。金木犀の香りがゆるやかな風にのって流れていく。見上げた空に雲はなく。忘れ去られたブランコのきしむ音に振り返ると、猫が走り去った。

100字物語「少年のさがしもの」#第3話

少年は約束を探していた。外人墓地へと続く坂道。木漏れ日がアスファルトにプロジェクションマッピングを描く。風が枝をなでるたび、光の絵が変幻する。猫がついてこいと言いたげに前をゆく。古い教会の鐘が鳴った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」第4話

少年は扉を探していた。裏通りに入ると、街は迷路のよう。雑多な色が混ざるキャンバス。兄が教えてくれた古着屋は、さびれた雑居ビルの2階。仄暗い階段の前で猫がまどろむ。背伸びして、くたびれたジーンズを買った。

100字物語「少年のさがしもの」第5話

少年はフレームを探していた。セピアに退色したモノクロームの写真。トタン屋根の工場の前でポーズをとる青年たち。肩を組んでいるのは、たぶん祖父だ。屋根の上で猫があくびをする。アルバムを閉じて、窓をあけた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第6話

少年はシグナルを探していた。細い路地の先の踏切が警笛を鳴らしている。近づく音。遠ざかる音。音の洪水が通り過ぎると、舞台は暗転し、日常に引き戻される。猫が忍び足で擦りよる。かたわらを自転車が通り過ぎた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第7話

少年は旋律を探していた。粗い砂まじりのコンクリートの石段を跳び下りる。ひと気のない砂浜。朝の光にさんざめく波を潮騒が追いかける。猫が蟹をもてあそぶ。見あげた西の空には、まだ白い月のかけらが残っていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第8話

少年はトンネルを探していた。裏山の崖に作った秘密基地。ガラクタを持ち寄った。切れかけの懐中電灯。壊れたリモコン。空き缶。自転車のチェーン。入口のカモフラージュに集めた枝と枯れ葉は猫が蹴散らしていった。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第9話

少年は背景を探していた。午後の陽のさしこむ図書館の窓辺。スチールの棚に並べられた色褪せた背表紙の群れ。高い天井にヒールの足音が響く。木枯らしが、落ち葉の舞を指揮する。猫がシルエットだけを残して消えた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第10話

少年は翼を探していた。広い河川敷のグラウンド。小春日和の日曜。ジョギングの波にエールを送るトランペットの叫びが、空に吸い込まれてゆく。陽だまりに目を細める猫。河原の土手に寝転べば、ひとすじの飛行機雲。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第11話

少年は轍を探していた。岬を巡るワインディングロード。自転車を嘲笑うように、エンジン音が風を切り裂き駆ける。展望台の柵から伸びる望遠レンズ。鷹が急降下する。轟くシャッター音。猫がバイクを値踏みしていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第12話

少年は問いを探していた。誰もいない放課後の理科室。鍵のかかった薬品庫。化学記号のラベルは文字が滲んでいる。棚のフラスコを冬の薄い光が照らし、イチョウの幹で猫が鳴く。窓辺に顕微鏡が一台、忘れられていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第13話

少年は無限を探していた。テスト勉強に飽きた深夜。小銭をポケットに突っ込んだ。コンビニまでの道。吐く息が白い。車のライトが闇を運ぶ。駐車場の隅で光るキャッツアイ。南の夜空にオリオンの三つ星が瞬いていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第14話

少年はを自由を探していた。高架下のアーケード街。雑多な色彩が軒を連ねる。狭い通路。店から漏れるBGMが喧噪とセッションを繰り返す。シャッターの閉まった店。その前に猫が居座る。新しいスニーカーを買った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。