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ポストコロナの消費者行動

こんにちは。ここ数年で、私たちの生活や社会は大きな変化を経験しました。消費統計、消費者意識調査、消費者購買データ、人流データといったデータに基づくアプローチから、ポストコロナの消費者行動を分析し、解説しているのが、『流通情報』2023年11月号です。
ここでは、そのポイントを紹介します。


「ポストコロナの消費者行動」のポイント

✔ 消費支出は概ね回復するも、カテゴリーによりばらつきあり
 ~公的消費統計より

✔ 「買物習慣なし」層が増加する可能性
 ~「ショッパー・マインド定点調査」より

✔ 40代50代女性の調味料・冷凍食品購買増、20代や男性の内食回帰傾向
 ~「QPR」より

✔ 欧米圏からの人流が大幅増、地方都市のインバウンド需要に期待
 ~「モバイル空間統計®」より

「ポストコロナの消費者行動」をもう少し詳しくご紹介します

(公財)流通経済研究所 上席研究員/流通ビジネススクール 統括
祝 辰也
(『流通情報』11月号「特集にあたって」より一部加筆)

 2023年5月、新型コロナウイルスの分類が2類相当(新型インフルエンザ等感染症)から5類感染症に移行となった。2020年1月に日本で最初の新型コロナウイルス感染者が報告されてから2類移行まで、3年4ヶ月もの 月日を要したことになる。

 とはいえ、国民の行動を大きく制限する「緊急事態宣言」は 2021年9月末まで、都道府県単位での「まん延防止等重点措置」も2022年3月までで、それ以降実質的な行動制限があったわけではない。しかし5類移行は人々の意識や行動を変える号砲となったと言える。

 しかし一方で、 コロナ下での国際間の物流の滞り、世界的な需要の回復、ロシアによるウクライナ侵攻など国際的な要因によるエネルギー価格や原材 料価格の高騰による商品価格の上昇が、ポストコロナの消費者行動を読みにくくしている。
 
 「ポストコロナの消費行動」と題した本特集は、消費統計、消費者意識調査、消費者購買データ、人流データなど多様なアプローチからコロナ前、コロナ下、5類移行後のポストコロナの現在までのわが国の消費者の意識と行動の変化を明らかにし、今後の施策の一助となることを目的として企画したものである。

 では、ここでそれぞれの論文を紹介しよう。

○我が国における個人消費の動向と変化

総務省 統計局 統計調査部 消費統計課 調査官 大澤朗子

 主に家計調査などのデータから2019年のコロナ前からコロナ下、コロナが実質下火になった2022年の期間を通じての消費支出の動向について論じて頂いた。 対面サービスが息を吹き返してきたものの、物価上昇を割り引いた実質ベースの消費支出の対前年増減率が2023年3月から顕著にマイナスに転じており、物価上昇が消費の重しとなっている点がデータに基づいて指摘されて いる。また同稿の主旨とは外れるが、筆者の様に日ごろ同調査を使わせて頂いている者にとって、家計調査の活用の幅広さを学ぶことができる。

○新型コロナウイルス感染症の流行下における消費者の購買行動と買物意識の変化

公益財団法人流通経済研究所 主任研究員 鈴木雄高

 流通経済研究所が3ヶ月ごとに実施している「ショッパ ー・マインド定点調査」のうち、コロナ禍前、感染症の本格的流行期、5類移行後に実施した調査結果を比較し、買物の仕方や買物に対する考え方や意識の変化を追った。また、「EDLP 指向 対 Hi-Lo 指向」「NB 指向 対 PB 指向」「品質重 対 価格重視」などの視点で、物価上昇下における消費者の買物先の選択や商品選択に関する意識の変化についても触れている。

○購買データからみたコロナの流行と収束による食品購買の変化

公益財団法人流通経済研究所 研究員 田嶋元一
公益財団法人流通経済研究所 常務理事 山﨑泰弘

 消費者購買データ(QPR™)の集計・分析から新型コロナウイルス感染症の拡大・収束期における食品購買状況を明らかにしている。 同稿では購買金額全体の推移だけではなく、食品スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストア、通信販売(EC を含む)といった小売業態、調味料や冷凍食品、菓子、清涼飲料、アルコール飲料といった商品カテゴリー、さらに消費者の性・年代の視点から、消費者の購買行動の変化を把握することができる。

○人流の変化:コロナ前後での生活者行動とインバウンド需要

株式会社ドコモ・インサイトマーケティング 代表取締役社長 江島賢一郎

 調査データから消費者の感染不安と行動意欲の変化についてご紹 介いただき、さらに同社の統計データサービス「モバイル空間統計®」による、日本人および訪日外国人のコロナ前後での人流の比較から、人流の回復や訪日外国人の行動における地域差について論じて頂いた。コロナ前に比べ、欧米系の旅行者の割合が増えていることが同社のモバイル空間統計®からも明らかにされたが、今後の我が国の地域経済において低からぬウエイトを期待すべきインバウンド消費について、各地域が訪日外国人を惹きつけるために取るべき戦略・施策に示唆を与えてくれるものである。

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