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【PJ実施レポート】自然と生きものにやさしい未来の電化製品をデザインする

開催概要

日程|2022年3月30日(水)
場所|パナソニックセンター東京
参加者|ご応募いただいた大学生・高校生のみなさん
やり方|生態系に貢献する新しい電化製品のアイデア創発ワークショップ

背景

「SDGs」や「環境問題」が世の中的にも注目されており、学校教育の中にも積極的に取り入れられています。ですが、取り組むことが大切なのはわかるけど、自分とは遠い話のようにも思える学生さんも少なくありません。
実際、大学生向けのSDGsに関する意識調査では、目標への関心の偏りがあり、ジェンダーの問題には関心が高い一方で、生物多様性や気候危機への関心は低いという結果も出ています。
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SDGsではさまざまな問題が取り上げられていますが、17の目標のうち、生態系に関わる4つの目標が、その他の目標に係るジャンルの「社会と経済」を支えています。
生態系とはいのちが互いに活かしあう関係性から成り立つシステムであり、SDGsの基盤、そして私たちの生活の基盤でもあると言えます。
この生態系ってわかるようでよくわからない…。でも私たちの暮らしに密接に絡んでいます。私たち人間は、都会でどんなに便利な生活を送っていても必ず生物多様性の恩恵を受けています。
たとえば私たちが毎日食べているお米が育つためには、水、空気、そして田んぼの中に暮らしているたくさんの生きものの働きが必要です。呼吸だって植物が光合成を行って酸素をつくってくれなければできません。私たちは決して人間だけの力で生きているわけではないのです。
これまでパナソニック様では、よい暮らしを創造し、世界中の人々のしあわせと、社会の発展、地球の未来に貢献することをお客様にお約束し事業を行ってきました。
これからの「よい暮らし」を考えるときには、私たちの暮らしを支える生態系・生物多様性の持続可能性も含めて考えないといけない時代に突入しています。
今回のワークショップでは、次世代を支える高校生・大学生と一緒に、生態系に貢献する未来の家電のアイデアをデザインするワークショップを通じて、未来の「よい暮らし」の可能性とそこに向けてひとりひとりができることを考えてくきっかけとなるよう、企画しました。

ワークショップのテーマ

自然と生きもの、生物多様性、生態系に貢献する電化製品のアイデアを考える

ワークショップの流れ

1.イントロダクション

ウォームアップとして「好きな食べ物」が何によって成り立っているか、マインドマップ的に分解して書いてみるワークからスタートしました。

ハンバーグって何からできてるんだっけ??

自分の好きなハンバーグがわたしの口に入るためには・・・料理をするための食材、調理器具はもちろん、それらを育んだ土や水や太陽や、先人たちが築き上げてきた食文化など、はてしない射程のさまざまな事物の存在があります。普段当たり前に食べているものが、さまざまないのちのつながりの結果から生まれているものだということを書きながら、イメージしながら、感じていきます。

2.生態系と暮らしのつながりを実感する

パナソニックセンター東京のAkeruEには、アクアポニックスと呼ばれる生態系による自然循環の姿を表現したアート作品があります。

アクアポニックス
魚の排泄物など有機物を含む水を微生物が分解することで栄養を作り出し、それらを野菜や植物の生育に活用しています。

みんなでアクアポニックスを鑑賞しながら、私たちが生きる環境を支えてくれている生態系と自然循環の基本事項について学びました。 そして本来は人間もその中の一部であるはずなのに、人間の害になる虫や細菌を一方的に抹殺したり、食材となる植物や動物を過剰に作り効率的に得るためにいのちを操作したり、分解者である微生物に排出物を何も渡していなかったり、自己中心的に搾取だけしていて貢献していない私たちへの問題提起を行いました。

3.生態系に人間がもたらしているネガティブな影響を理解する

さらに、人間がもたらす生態系への悪影響が、長期的に見てどういったネガティブな影響を与えるのか、「もしもこの世界からミツバチがいなくなったとしたら」という架空の(でも残念ながらありえなくはない)未来を想像して、生態系のつながりに人間も含めてどういった影響が出るのかシミュレーションするワークを行いました。
受粉に重要な役割を果たすミツバチは、現在農薬によって数を減らしています。そうすると、ミツバチが受粉を媒介している果物や野菜などを中心にスーパーの品揃えが激減するかもしれないと言われています。

「いま普通に買えてるものが買えなくなるんだね・・・」
「効率的に農作物を得るために農薬を使ってるのに、ゆくゆくは農家にとって逆に悪影響が出そうじゃない?」
「土壌が貧弱になって住んでいる大地そのものがあぶなくなるんじゃ・・・?」
自分達の生活・暮らしに大きな影響が出ることを感じると共に、普段意識していないけれどすべてはつながっていること、私たち、もしくは未来世代が受ける影響を手を動かしながら驚きと危機感を持って感じていきました。

4.生態系のためになる電化製品アイデアを検討する

このままではまずいぞ、と実感した上で、どうしたらより良い未来を引き寄せることができるか?生態系に貢献したり、他種のためになるような電化製品を作れないだろうか?という今回のメインの問いに向き合っていきました。
アイデア出しをするにあたって、既にいくつか出始めている**「自然と生きものにやさしい未来の暮らしを実現するかもしれない、生態系にポジティブに介入する事例」**を紹介しました。
例えば・・・

などなど・・・。

それらの事例のエッセンスをカード化して、パナソニックさんのすでに世に出ている電化製品と組み合わせて何かアイデアが考えられないか強制発想で考えていきます。

いくつかアイデアを出していったあと、それらを俯瞰して眺めながら、これができたら生態系にやさしい!と思えるアイデアに投票し、具体化していきました。

5.CMを作成する+プレゼンテーション

そしてアイデアをよりわかりやすく示すために「生態系にやさしい新しい電化製品」をPRするCMを作成します。
CMに登場させるために工作用品を活用してアイデアの簡易プロトタイピングも行いながら、立体物を使ってアイデアを具体的に表現していきました。

パナソニックセンター東京の社員の皆さんも作ります。楽しそう(笑)

各グループ思い思いの形でまだこの世にない電化製品の良さとストーリーを伝えるCMを作成し、

プレゼンと合わせて発表していただきました。

最終的にアイデアとしては、

・冷却時の排熱を利用して他種を育み、住処とする自動販売機。街のあちこちでも生き物が人間の営みと絡まり生きている様子が見えるように

・食洗機の中に残った食べ残しなどを利用して微生物を育て浄化を担ってもらう、室内に微生物を排出する加菌エアコン、など家電に微生物を取り入れるプラットフォームSmart Microbe Home構想

・受粉を支援し地域野菜を育て地方創生に貢献するミツバチロボット

・公園を人間だけでなく生き物と共有する公共空間と捉え、植物に優しい音楽が奏でられる遊具型プロダクトなど設置

など、生態系に貢献しながら人間にもメリットのある新たなプロダクトが出てきました。

公園を人間だけでなく生き物と共有する公共空間と捉え、
植物に優しい音楽が奏でられる遊具型プロダクトを設置

6.振り返り

最後に、今回のワークショップを経て得られた気づきと、その気づきを今後どう活かしていきたいかジャーナリングし共有しました。

<気づき>

「人間が生態系から離れた生き方をしているとなんとなくわかっていたことをより具体的に感じられた」

「自然から受けている恩恵を還元できていないんだと感じられた」

「自分達が生きるためにもわたしたちを取り巻くすべてのものと共存していく必要があると実感した」

「人間中心の考え方が中心になっているということは、他生物のことを考えることができないとも言えるので、自然と私たちが共にあることを暮らしの一部として習慣化しやすい製品や仕組みが必要だと思った」

「人間が生態系の一部としての役割も担いながら生きる必要があると感じたが、今回のアイデアはじめ他の生き物の搾取や都合の良い利用になっていないか今一度再考する必要もあると思った」

<気づきを今後にどう活かすか>

「植物等の自然からの恩恵を受けて不自由なく生きていられることを意識して生活していきたい」

「省エネや3Rなどの推進の影響力は大きい一方で、生態系に積極的に関わっていくという新しい視点は活かしていきたい」

「具体的な行動に落とすのはまだ難しい。でも自分のやっている活動に視点を取り入れることから始めたい」

みなさんと生態系と人間の関係やアイデアを考えていく中で、改めてつながりを実感することや新しい発想の可能性を見つけられた感覚がありました。

おわりに

昨今は、製品やサービスづくりはもとより、まちづくりなどの分野においても「ユーザー中心」や「人間中心」が叫ばれています。たしかに、人間の暮らしや人生を中心に困りごとに寄り添い、解決し、ニーズを満たす方向性も必要な一方で、それが行きすぎると自分たちのいのちを支える環境や生態系への意識がなくなり、環境問題やSDGsに逆行する結果を招いてしまうのではないでしょうか。
今回のワークショップでは、これまでわたしたち人間の「よい暮らし」に寄り添い、貢献してこられたパナソニック様と、あえて少し先を見据え、人間以外の他の生き物や環境にも目を向けた電化製品を考えてみました。
学生のみなさんが振り返りで述べておられたように、たしかにこうしたアイデアはエネルギー政策のように劇的に環境問題の解消に貢献するものではないかもしれませんが、日常生活に身近な製品やサービスを通じて、特に都市の中の効率的な生活の中でも都市に住むほかの生き物や自然とのつながりを意識化できるようになると私たちのあり方や、意識が変わるのかもしれません。
ご参加いただいたみなさん、パナソニックセンター東京のみなさん、ありがとうございました。


このような生態系への意識の拡張や未来想像を含めた実験的なワークショプの実施にご関心がある方、人間ならざるいのちへのケアをはぐくむツールや技法などをともに研究していきたい方、プロジェクトで試してみたい方は、ぜひDeep Care Labにお気軽にご連絡ください


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