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テキサスホールデムポーカーにおける期待値の考え方はマーケティングに応用できるのか

アレのパラドックス

みなさん宝くじを買ったことはありますか?

年末ジャンボで10億円。夢がありますね。

しかし今日は夢のない数学的な話をします。
アレのパラドックスという有名な期待値の話をご存知でしょうか。

もし以下の二つの宝くじのうち、どちらか一つだけを無料でもらうことができるとしたらみなさんはどちらをもらいますか。

A:11%の確率で10億円が当たり、89%の確率ではずれ
B:10%の確率で25億円が当たり、90%の確率ではずれ

もちろんBを選びますよね?

期待値からも明らかにBを選択した方がお得であることがわかります。

A : 10億円 × 11% = 1.1億円
B:25億円 × 10% = 2.5億円

では次の二つの宝くじの場合はいかがでしょうか。

C:確実に10億円が当たる
D:10%の確率で25億円、89%の確率で10億円、1%の確率で0円

私はCをもらいます。せっかくのチャンス、1%を引いたら残念過ぎます。
みなさんはいかがですか?Cを選ぶ人が多いですかね?

しかし、期待値を計算すると以下のようになります。

C : 10億円 × 100% = 10億円
D:25億円 × 10% + 10億円 × 89% + 0円 × 1% = 11.4億円

Dの方が期待値が1.4億円も高いですね。

そうなんです。最初のAとBの宝くじでは期待値が高い方を選択するのに、CとDの宝くじでは期待値が低い方を選択するというパラドックスが発生するのです。

これは確実性効果や決定加重が影響しているのですが、この話はまた次回。

ポーカーにおける期待値

ポーカーにおいても期待値は重要なテーマです。

ポーカーは52枚のカードを使って戦います。不完全情報ゲームであるものの、すべてのシチュエーションにおける、勝率・期待値を計算することが可能です。

ポーカーではポッドといって、各ラウンドでベッドされたすべてのチップを貯める場所があります。各ラウンドで勝ったプレイヤーがこのポッドを総取りします。

相手が先に$10ベッドし、ポッドが合計$30になりました。

あなたが勝負するのに必要なベッド額は$10です。
実際にはありえないのですが、たぐいまれなる洞察力で勝率が30%であることがわかりました。

この場合どうするのが正解でしょう。
勝率が30%しかないのでこの勝負は降りるべきでしょうか。

期待値を計算してみます。

勝った場合に得られる金額 × 勝率:$40 × 30% = $12
負けた場合に失う金額 ×(1 - 勝率):$10 * 70% = $7
期待値:$12 - $7 = $5

勝率は3割しかないのに、期待値としてはベッドすべきという結果になりました。面白いですよね。

オッズに馴染みがある方はこちらの方がわかりやすいかと思います。
$10をベッドして勝ったら$50が返ってくるのでオッズは5倍。
20%以上の勝率があれば勝負すべきということですね。

マーケティングにおける期待値

マーケティングにおいても、確率や期待値は重要な役割を果たします。

例えば、ECサイトの売上は以下のような式で求まります。

売上 = PV数 × CVR × 顧客平均単価

PV数:ECサイトへの訪問者数
CVR:ECサイトに訪問した人のうち、実際に購入した割合
顧客平均単価:顧客一人当たりの購入額の平均

下記ECサイトの売上いくらでしょうか。

PV数:10,000
CVR:5%
顧客平均単価:2,000円

10,000 * 5% * 2,000円で100万円ですね。

このとき、以下のような魔法の広告施策があったとします。
あなたが広告施策担当だった場合、この魔法は使うべきでしょうか?

25%の確率で広告効果A「PV数 4.5倍、CVR -1%」が発生する
75%の確率で広告効果B「CVR +3%、顧客平均単価 -1,000円」が発生する
この魔法の広告費用は15万円

期待値を計算してみましょう。

A発生時の売上:3,600,000円((10,000 * 4.5) * (5 - 1)% * 2,000円)
B発生時の売上:800,000円(10,000 * (5 + 3)% * (2,000 - 1,000)円)
期待値:A発生時の売上 * Aの発生確率 + B発生時の売上 * Bの発生確率
= 3,600,000円 * 25% + 800,000円 * 75%
= 1,500,000円

期待値としては、売上1.5倍の魔法のような施策であることがわかりました。

みなさんならどうしますか?
75%もの確率で売り上げが下がる施策、少しためらいますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ポーカーにおいても、マーケティングにおいても、十分な試行回数がある場合は、常に冷静に淡々と期待値に基づいた意思決定が必要です。

一方で、期待値がプラスの選択だとしても、十分な試行回数がない場合は必ずしもその選択が正しいとは限らないですね。

しかし普段から
「期待値は損かもしれないが、今しかないチャンスだから挑戦しておこう」
「確率は低いが期待値が高いからこの分野について学んでおこう」
という目線で日々の意思決定をしていくと、深みのある大人へ、知性の深遠へと近づいていくのではないでしょうか。

知性の深遠では「こうするべきです」「これが正しいです」という結論はあえて書きません。

みなさんが期待値をどのようにとらえ、ポーカーやマーケティング、普段の生活においてどのように役立てるべきか、思考をめぐらし、各々の意思決定をより深く、知性のあるものにしていくための空間です。

これを機に期待値について深く思考を巡らしてみましょう。

いいね・コメントなどフィードバックいただけると幸いです。

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