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障害者は自己主張してはいけないの?~思いが言えない理由と、言いやすくなるコツ~

日本にはどれくらいの障害者がいるか知っていますか? 「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」(厚生労働省)によると、障害者の総数は936万人。全人口の約7.4%が何らかの障害を抱えている計算になります。これだけ大勢の当事者がいると、困りごとの種類や程度など、多種多様を極めることが想像できるでしょう。

「社会で活躍したい!」「個性を発揮したい!」と純粋に願っている当事者も、きっと多いはず。ところが、障害があるという理由だけで、自己主張が抑え込まれているケースは少なくありません。

「自己主張」というと言葉が強いかもしれないけれど、自分の思いを口にしたい欲求は誰もが持っているはずです。呼吸をするように自然なことですよね。

  • なぜ当事者は自己主張しづらいのか

  • どうすれば当事者が自己主張しやすくなるか

発達障害(ASD)のある当事者の立場から、考えてみたいと思います。

障害者が自己主張しづらい3つの理由

1.自己主張が苦手である

当事者にコミュニケーションが困難な特性がある場合、周囲の人にうまく意思を伝えられないかもしれないです。

本人は正しく自己主張しているつもりでも、周囲の人にはワガママであると受け止められて、誤解が生じることも。このようなすれ違いが度重なれば、自己主張を諦めてしまう人もいるかもしれません。

2.障害に引け目を感じている

当事者が必要以上に遠慮して、自己主張をためらうケースもあると思います。

周囲の人に助けてもらってばかりいるから、これ以上要望を伝えるのは申し訳ないと感じて、口をつぐんでしまう人もいるでしょう。障害ゆえにストレスを抱えることもあるだろうに。その息苦しさを誰にも打ち明けられないと、ますます心がパンクしそうです。

3.障害者としてのレッテルを貼られている

当事者に障害があるだけで、周囲の人から軽く見られているケースもあるでしょう。どんなに素晴らしいことを主張しても、信じてもらえないという悲しさがあります。

たとえば、PCスキルがずば抜けて高いASD当事者が、職場でそれを主張しても、上司が偏見ゆえに評価しないなど。障害のレッテルを貼られてしまうと、その人の秀でた部分まで見えなくなってしまうんですね。


ASD当事者の私の場合

私には発達障害(ASD)がありますが、上記の1〜3の理由から、自己主張しづらいと感じたことはありました。

主張しづらいと特に感じたのは、一般の会社にいたときではありません。実は、障害者として支援される場にいたときです。

私は数年前に再就職活動していたとき、障害者のための施設で職業訓練を受けていました。ところが、自分には意味がないと思える、単調な訓練ばかりだったんです。そのときはすでに、社会人として基本的なスキルは身に付けていました。

「この訓練も、その訓練も、私にはできることばかりですよ。なぜ行う必要があるんですか?」

そう主張しても、なかなか施設側に聞き入れてもらえません。私としては、自分のために訓練したいのに、施設のために訓練しているようでした。翼をもぎとられたように、非常にやるせなかったのを記憶しています。(施設側にも、さまざまな事情はあるかと思いますが……)


障害者がどうすれば自己主張しやすくなるか

では、どうすれば当事者が自分の思いや考えを、素直に口にすることができるのか。

「自分には主張する権利がある」

……当事者はこの思いを胸に焼き付けていいと思います。そう、自己主張は誰もが持つ権利なんです。

そして、自己主張する方法を学んでいけば、だんだんと自分の心を伝えやすくなると思います。コミュニケーション・スキルの本は、世の中に多く出回っているから、自分に合った本を見つけて読んでみるといいですね。

コミュニケーション・スキルの一種である、アサーションはご存知でしょうか?日本に初めてアサーションを紹介した平木典子さんの著書によると、「人として誰もがやってよいこと」(人権)が書かれています。以下、引用しますね。

1.私たちは、誰もが自分らしくあってよい
2.人は誰でも自分の気持ちや考えを表現してよい
3.人間は過ちや間違いをし、それに責任をとってよい

『アサーション入門』平木典子

この人権は、障害の有無に関わらず、本当に誰もが当てはまるものだと思います。

障害があっても、自分らしく生きていいし、自分の思いを伝えてもいい。そして、誰かに迷惑かけても、それを補おうとがんばってもいいんです。

ただでさえ障害に縛られているのだから、これ以上、自分をがんじがらめに苦しめないでくださいね。

アサーション、おすすめですよ。


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