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発達障害者が考える、「すべての人のためのファッション」に必要なこと ―ユニクロも無印も、障害者のほうを向いて!!

私は発達障害者で、「感覚過敏」という特性を持っています。五感が過敏で、触覚も過敏。実際に皮膚もアレルギーを起こしたりしがちです。それで私には、普通の人なら着られるような服が着られません。

今回、マブダチのくらげくんが「誰もが楽しく着られるファッション」を提唱しているファッションブランドの取材に行って、とてもおもしろい記事を書いてくれました。

くらげくんは私と同じように発達障害者で、聴覚障害も抱え、妻も発達障害という、何重もの意味で福祉と関わりのある人です。ファッションのファの字もわからないような彼が、へんにファッション用語とか使わずにファッションやデザインについて説明してるところが、かえってすごくわかりやすくて、伝わってきて、わが友人ながら嫉妬してしまうような素晴らしい記事でした。

刺激を受けてしまったので、今回は彼の記事への返歌として、「すべての人のためのファッション」について書いてみたいと思います。

発達障害者の宇樹はファッション難民

くらげくんの記事では主に身体障害者向けの服について解説されていました。身体が思い通りに動かなかったり、車椅子ユーザーだったりすると、おしゃれ以前に必要最低限の機能性を求めねばならない。それで、選択肢が極端に狭まって、身体障害者はファッション難民となるわけですね。

発達障害者である私も実は、人知れずファッション難民でした。冒頭に書いた「感覚過敏」が主な理由です。私が着られない服を列挙するとこんなにあります。

・ウール、羊毛、獣毛でできたもの
・麻でできたもの
・綿でできたもの(ものによる)
・通気性のないもの
・身体にぴったりしているもの
・肌にこすれやすい作りのもの
・圧迫感のあるもの(丸首や、肩がきついなど)
・首が詰まっているもの
・ダボダボなもの
・面がでこぼこしたもの(レースは裏打ちしてあってもだめ)

このような服を無理して着ると、痒くなる、のぼせる、冷える、落ち着かない、重たく感じるなどして、体調が悪くなってしまいます。

こんなふうに分析できるのも、自分の特性について、また服の繊維などについて、きちんと学んだ今だからです。最近まで私は、「私は天然繊維じゃないとだめなんだ、化繊がだめなんだ」「高級なウールなんだからチクチクしないはずなんだ」と思い込んでいて、何か無理なものにチャレンジしては体調を崩し、「私はわがままで、こらえ性なしだ」と自分を責めていました。

私は発達障害が発覚したのが30歳のときだったので、着られない服があるのを、小さい頃から「わがままだ」と叱責されて育っています。そこに、世の中に流布している「天然のものは身体にやさしい」「より高級なものはより心地よい」という広告的イメージが重なってしまい、私は長いこと、ファッションに苦しんできたのでした。

「世界的ベーシック服ブランド」、ユニクロと無印

結局、「天然繊維か化繊か、高級かに関係なく、通気性があり、繊維がなめらかで、身体につかず離れず」な服が私にとってファイナルアンサーだとわかったのが、たったここ1年ぐらいのことです。「羊毛がチクチクする人には化繊がいい」という情報を手に入れ、驚いて書いたのがこの記事。

https://decinormal.com/2018/01/05/hypersensitive_knit/

化繊のニットの感触の良さに慣れた状態で、試しに先日、無印良品(ふだんから愛用)の、ウール混のニットを試着してみたら、案の定ベソをかく事態になりました。

私は服のほとんどをユニクロと無印で揃えています。日本のどこに行っても、場合によっては海外でさえもあちこちに実店舗がある点と、機能性とシンプルでベーシックなデザインを兼ね備えている点を気に入っているからです。ベーシック服は、「誰が世界のどこに行っても手に入る」要素を兼ね備えると、「世界的ベーシック服」になりえます。

ユニクロは、以下の点で「世界的ベーシック服ブランドとして頑張ってるなあ」と思います。

・機能性繊維の開発に熱心
・グローバルな観点で服作りをしている
 (ムスリマを念頭に、身体の線を露出しないラインを展開)
・無縫製のニットを作っている
 (ホールガーメントといって、編み機で1着まるまる編み上げてしまう)

もう20年以上前だったと思うんですが、ユニクロが、もともとL.L.Beanとかの海外アウトドアブランドのものだったフリースを日本に紹介し、爆発的に普及させたころのことはよく覚えています。それから彼らは、安価なダウン、発熱繊維、涼感繊維などをつぎつぎに発表しました。

昔は化繊の服なんていうと通気性のないツルツルピカピカしたようなものしかなかったように思います。いま世間にさまざまな機能性繊維が普及しているのは、ユニクロが服飾業界で起爆剤でありつづけたおかげじゃなんじゃないでしょうか。

もはや世界的服飾メーカーとなったユニクロが、ムスリマ(イスラムの女性)向けのラインを展開するに至ったのも、すごいなあと思っています。

これ、ムスリマはもちろん、宗教的理由とは別に、あちこち露出することに抵抗を覚えてる人や、単純に、もともとトレンドとかとは関係なしにこういうデザインが好きだった人からも支持されてるだろうなと思うのです。

ホールガーメント技術で作られた縫い目のないニットは、ラインも美しいし素晴らしい。余計な生地を消費してしまうこともなくてエコだし、人件費は削減されそうだし、これから服はみんなこういう作り方になっていったらいいなあ。ウールが入ってさえいなければ死ぬほど買うのに!! 買うのにィイイ!!


無印も、世界的ベーシック服ブランドとして頑張ってると思います。

無印良品は、「MUJI Labo」というラインのアイテムすべてを、2019年からすべてユニセックスなデザインにしました。

年齢・性別を問わないから、LGBTQフレンドリーでもあるし、家族で共有できるからクローゼットのスペースや服代も節約できる。ユニクロが打ち出してきたムスリマ対応服に対抗して、無印らしい対策を出してきたなという感じ。デザインがシンプルなのも使いやすくていいなと思います。

ユニクロさん無印さん、「すべての人のための永遠のベーシック服」を作ってください!

こういう感じで、ユニクロも無印もめっちゃ頑張ってると思うんです。世界的な店舗展開、そして、ファッション難民への視野の拡大。もはや彼らは、「世界的ベーシック服ブランド」です。

ただ…… ただですよ!  私にとってはあと一歩、あと一歩なんだ!

ユニクロも無印も、あなたがたが世界的ベーシック服のブランドとして、次にもし、新たな潜在ファッション難民に目を向けるなら、 「障害者」じゃないでしょうか? そして目指すべきは、「すべての人のための永遠のベーシック服」じゃないでしょうか?

最近まで、ファッションの世界には難民がたくさんいました。年齢や身体の性別、宗教的理由、病気や障害などから、特定の服が着られない人たちがいっぱいいた。なのに、世間は、やれ、これがトレンドだ、女性はウエストを絞るだ、身体のラインを邪魔しないためにポケットはつけないだ、抜け感がどうの、リュクスがどうの、セレブがどうのと、基本的に「長いものに巻かれる」「みんなとのおしゃれ度の比較の中で勝とうとする」ような潮流が支配していた。そんな中、「おしゃれ以前に、まず着られる服がない」というファッション難民たちの切実な困難は、ずっと無視されてきたわけです。

そうした、無視されてきた彼らに、あなたたちは段階的に目を向けてきた。あなたたちの歩みに感謝している人はきっとすごくたくさんいるはずです。最初にあなたたちが商業的な意味でターゲットにしてきた人たちの周辺にもたくさん。私もとても感謝しています。

ただ、だからこそあと一歩進んでほしい、障害者に目を向けてほしい。福祉的、かつシンプルでベーシックな服を作ってほしい。

病気や障害のある人、高齢者などに向けた福祉的な服はたくさんあります。しかし、なぜかファンシーすぎたりポップすぎたり、なんだか独特の雰囲気があって、私には着る気になれません。障害者だからという理由だけで、皆が着ているようなシンプルでベーシックな服を自由に選ぶことができないのは、わざわざ毎日口に出しては言わないものの、本当はかなりの苦痛です。

感覚過敏対応の、シンプルでベーシックなデザインのニットを作ってほしい。思ったような代わりの繊維がなかったら開発してほしい。作ってくれたら私は必ずヘビーユーザーになります。モニターが必要なら喜んでモニターになります。

男女・年齢・障害のあるなし関係なく、脱ぎ着のしやすい、ポケットなどの便利で十分な収納のある、シンプルでベーシックなデザインの福祉服を作ってほしい。そういう服はきっと、想像以上にいろんな人が潜在的に欲していると思います。モニターやってくれそうな人、周囲にいっぱいいます。

冒頭のくらげくんの記事で紹介されているような、小さなブランドさんのチャレンジも、私は心底応援しています。こうした人たちの活動で元気づけられて、私はこの記事を書いたぐらいですから。でも、すでに広大な販路があり、世界的ベーシック服としての盤石のあるブランドさんにしかできないこと、やるべきことがあるはずです。

どうかお願いします。ユニクロと無印、それからファッション業界の人に、広く届きますように。

最後に宣伝です。2019年9月20日に、初めての単著を上梓いたしました。発達障害女性による、発達障害女性のための「人間生活攻略本」です。私の小さな頃からのストーリーもお読みいただけます。買ってください!


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