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「宇宙図書館」序章~観察者K

観察者K‹スペック›
種族=人間(おそらく末期)
年齢=30~40代
境界に立つ者。

私はケイ。バツイチ派遣のド底辺。父母、兄弟姉妹、夫、子供、なし。身内は居るが皆疎遠。最早連絡先すら知らない。

唯一の相棒は写真嫌いでツンデレ保護猫のチェシャ。カメラを向けてもブレた写真しか撮らせない。これ、私が下手なだけなのだろうか?

まぁいい。

チェシャは凄い。たった一匹で私をこの世に繋ぎ止めている。「死」に恐怖を抱かなくなった私を。「天秤」が常に平行線な私を。

去年から続くコロナ禍でのシフト減。年齢と共に患った病と過去の仕事で痛めた部位による転職。賃金は減り、物価は上がる。ギャンブルもやらず、お金のかかる趣味もないのに、生活はどんどん追い詰められた。何度も分割払いやリボ払いで凌いでいたのだから当然。それでも外では普通に振る舞い、ただただ安月給で働いた。今振り返れば緩やかな自殺だ(笑)。

市役所には相談した。生活保護は受けられなかった。知ってた。助けてくれるわけないって。知ってたけどやってみただけ。実験。

結果自己破産をする事になった。弁護士さんや役所の職員さんが「自己破産なら債務がなくなり楽になる」と言っていた。

で?自己破産後はどう生きるの?

車はなくなるけどそのまま働いていけば、、、

無理に決まってる。

私は今パニックを抑える為に向精神薬を処方されている。

そう。突然、糸がプツリと切れたのだ。今まで蔑ろにしていた自分が喚きだしたのだ。

元々食費を抑えて生きてきた為か、薬が効きすぎていて、ふらつき、傾眠が酷い。意識していないと室内でも周りにぶつかりまくり、コップも落とす。気付けば十数時間も気絶している。

結局生きるか死ぬかは自分次第。

知ってた。だって私は一般人。ゴイム。羊。アレらからすれば、多少病んでてもまだ使えそうだから働かせる。それだけ。

でも職員さんや弁護士さんは、アレらの思惑を知らない事も知っている。制限の中でも出来る事をしようとしてくれてるのも。だから責められない。

この社会、いや地球、宇宙?は元々失敗作。神?ワンネス?それ?呼び方は何でもいいね。平穏に飽きた、それ、が好奇心で「制限」を創った。こうしたらどうなるかな~?スリリングな物語が見たいな~。ただそれだけで。

制限をつけたら格差が出来た。「純粋な人間」は魂の記憶なんて忘れてるのに、全部知ってる奴らが干渉してきた。楽したいからね。虐めて楽しみたいからね。人間に資源を調達させたり、人間自身からアレを抽出したり、そのまま食べたり。無防備な人間達は嘘情報で煽動するなんて簡単だし。

で、今更焦った、それ、が、尻拭いをし始めた。今更記憶を取り戻せとか、騙されてる事に気付けとか。まだ日本にはあまり到達していないけどね。物理的な変化は。

分かれたとはいえ人類は皆自分の一部であり、子、でもある。自分の子を苦しめてしまった。自分の好奇心で。

やっちゃったものは仕方ないよね。それで今大虐殺が起きてても。自殺者が増えてても。何も気付かず落ちてく羊が沢山居ても。

むしろどっちかな?減らしたいのか助けたいのか。

それ、の「目」の一つである私、にとっては、それ、はまだ人類を「助けたい」のだろうと思っている。そう見える。だから伝えられる事は伝える。

観察者、の一人として。

ウォッカと少しずつ貯めた向精神薬を握り締めながら。本当の限界が来るその日まで。

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