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続・小さい塾なのに東大合格者が誕生する理由:知的好奇心を育む「対話型指導」

 こんにちは。教育家夫婦が開いた小さな塾「Dear Hope」です。
 いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 この記事は、理数担当の副塾長(夫)が書いています。 


 先日の記事で、私たちが「対話型指導」により生徒を「本わかり」に導き、その過程を通して「いま、ここで、考える力」を養おうとしているということをご紹介しました。

 今回は、この「対話型指導」のねらいを、最近読んだ書籍をご紹介しつつ、別の角度からお話ししたいと思います。キーワードは、「知的好奇心」です。

知識の獲得には「知的好奇心」が欠かせない

 私自身、高校時代は数学や物理に没頭していたわけですが、その原動力は「もっと知りたい」という強い知的好奇心でした。

 人は、勉強であれ他のことであれ、興味があるものなら自ら進んで知識や技術の習得に励むということは、多くの人が頷くところだろうと思います。
 一方、好奇心無しに勉強しなければならないのであれば、それは苦痛にしかなりません。

 例えば、私は、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組が好きでよく見るのですが、この番組に登場するプロフェッショナルたちは、総じて探求心(知的好奇心と言ってもよいと思います)が旺盛です。ある回では、料理人が休日に新しいメニューの創作に没頭している様子が紹介されていましたが、これも「どうしたらもっとおいしい料理ができるか、素材を活かせるか」という好奇心の発露だと思います。

どうすれば知的好奇心が育まれるのか

 では、どうすれば知的好奇心が育まれるのか。つまり、どうすれば「どうやって」、「どうして」という「問い」をもつことができるのか。

好奇心に関するある研究結果

 この点に関して、最近読んだ書籍(『子どもは40000回質問する』、イアン・レズリー著)に次のような興味深いエピソードがありました。それは、1930年代のある研究で、ミネアポリスに住む生後1歳半か月から4歳半の140人の子どもたちを観察したところ、低所得層よりも中間所得層の家庭の方が、子どが好奇心に基づいた問い(「どうやって」、「どうして」という質問)を発する傾向が顕著だったというのです。この事実に対する著者の考察を以下に引用します。

 中間所得層の子どものほうが質問を通して好奇心を深める傾向が目立つのはなぜか。理由は必ずしも、彼らの方がより多くの答えを得ているからではない。(中略)では何が違うかというと、中間所得層の子供たちのほうが多くの質問をされていた。母親からたくさんの質問をされる子どもは、自分からもたくさんの質問を発していた。つまり、質問するという行為は相手に伝染することが明らかになったのだ。

「子どもは40000回質問する」イアン・レズリー著、須川綾子 訳、文光社未来ライブラリー、2022年

 私たちの塾が対象としている生徒たちは、この研究で調査されている子どもたちほど幼い年齢ではありません。しかし、さまざまな質問を重ねていく「対話」によって、彼ら、彼女らの好奇心が引き出されていくということは確かにあると考えていますし、実際、私たちが行っている対話型指導においては、(もちろん、他の生徒さんからの刺激などさまざまな要素が関係していると思いますが)、意欲的に学習に取り組むようになる生徒さんが多くいらっしゃいます。

「知識の獲得」と「知的好奇心」は循環する

 さらに著者は、「好奇心駆動型」の教育スタイル、すなわち、「伝統的な科目を教えることに大半の時間を費やすのではなく、創造性や問題解決、批判的思考といった抽象的な能力を養おう」とする教育スタイルを批判しつつ、好奇心の特性について次のように指摘します。

「好奇心駆動型」の教育スタイルの致命的な欠陥は、好奇心が知識の獲得の原動力になるのと同じくらい、知識が好奇心を育む原動力になることを見落としている点である。人はそもそも、自分の興味の範囲外にある事柄を学ぶのが苦手だ。だから、特に子どものうちは他人の力で適切な場所に導いてもらう必要がある。

「子どもは40000回質問する」イアン・レズリー著、須川綾子 訳、文光社未来ライブラリー、2022年

 「知ると、ますます知りたくなる。」このことは、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。
 ひとつ知ると、新たな疑問がわいてきて、その結果さらに学ぶ。知識と好奇心は、螺旋階段を登るように互いに循環する働きがあるようです。この働きが機能しているとき、「学び」は主体的に展開され、成績はどんどん上昇していきます。

 私たち塾の講師は、このような知識と好奇心の循環が適切に機能するように、「対話」によって好奇心を引き出す試みに加え、好奇心の燃料ともなるべき「正当な基礎知識」を生徒らに伝えることも大切だと言えます。これによって、彼ら、彼女らを、好奇心の手が届く「適切な場所」に導くことができるのだと思います。

「対話型指導」では生徒と講師がともに成長する

 「対話」によって好奇心や「問い」をもつ力を育み、さらに、正当な知識と理解を「対話」によって生徒らに伝える。この循環は、実は私たち講師にも跳ね返ってきます。つまり、生徒らからの「問い」によって、講師の側の理解や指導技術が一層深まる場面も少なくありません。
 「対話」は、生徒らを「本わかり」に導くための効果的な手段であるとともに、生徒と講師が共に学びあえる指導形式だと考えています。

 最後に、本書を読んで、私自身も、一人の探求者として好奇心を忘れずにいたいと改めて感じました。


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 このnoteでは、教育家夫婦が開いた大学受験の小さな塾「Dear Hope」のスタッフが、大切にしていることや、日々考えていることなどを書き記していきたいと思います。

 今後とも、よろしくお願いいたします。

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