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【父親主導の療育】トンネルの施工業者をやめた

5月末から今日に至るまで、緊張の連続が続いている

遡ること7年前。やはり最初は驚く。
彼女は母体内にいる時から10ヶ月程度までは両親の脳に直接感情を伝達することができた。産まれても鳴き声らしい鳴き声も出さず、なんの怯えもない顔で5分も立たないうちに手遊びをしていた。「この人達知ってる」「全てを信用している」言葉では無い感情が脳に直接伝わってくる。

そんなフィクション的超展開に涙したが、ちょっと後になり冷静になると、それが何と結びつくか薄っすら頭のどこかに過る。
保育園に入り、他の子と遊び始めれば一発だ。
第一子で経験した緘黙なんてもんじゃない。本格的に言語の遅れがある。
正しくは「言語の必要性がわからない」だ。だって伝わるんだから。

テレパシー(正確にはそう読んでいない。一言も発していないのに見つめ合った人間の間で発生する恐ろしい容量の情報伝達。)の存在は、何故か私に関わった研究者連中+日本の名だたる国立大学の超連合に加え、私の中退した学園やら企業やらが作った装置を使い証明した。恐ろしい国家予算を投じ、世界に数台(もちろん日本にここだけ)しかないその装置と、ありえない数の親子を動員し産学官連携国家プロジェクトの大規模治験が行われたのは、自宅からたった7km以内にある工業団地。

知ってる顔が記者会見場の1番真ん中に座っていた。
「あまりに話ができすぎている。Trueman Showの始まりなのか?」「自分は今でも彼らに観察されているのだろうか」と過ぎったが、すぐに忘れた。考えても仕方ない。それがどれだけの発見で、創薬なりなんなりできたとしてもいつになるかわからないし、期待するだけ損。

次にそれを思い出した時は、この第三子の言語問題にぶち当たった時だ。
「ヤバい」と思った。
が、それは第一子の時のように担任が体罰を加え、妻が虐待の限りを加える展開へは繋がらなかった。

特殊で繊細な子往々にしては、この第三子まで行かなくても過剰にまで人の感情が読めるので、負の感情が緘黙を作り、それに余計大人が苛立ちを持って制裁を加えようとする。絶対数では少なくなっても虐待が絶対無くならないのは、そういった負の循環を解説し、事前に子どもと大人双方の怯えを取り除く仕組みが無いから。
信頼した人に信頼する。蓋を開けてみればオキシトシンのサイクルとはたったそれだけのこと。

「早生まれの中でちょっと遅いくらい」という程度の第三子は、遊びを通してほぼ平均と変わらない言葉を手にしてゆき、テレパシーは完全に消えた。

もう1つ問題があった。テレパシーは所詮動物間にしか通用しない。器物に心は無いからね。そんな人間が全てを信用してしまっている。まず風呂に入った最初の日からキャッキャ笑って潜水することにしばらく自分の心臓が持たなかった。溺れて泣いたことなど今日まで1度も無い。そして家中の全ての棚を開け、物を取り出す。すぐに手の届く所全てに鍵を作った。場所によっては浜岡原発のような防護壁を作り、角という角をクッションテープで覆った。

それでも何の対策もされていない旅先のホテルでポットの熱湯を被り、重度の熱傷で救急搬送された。
風呂は胎児的にまだわかるけど、「危険予知」の4文字がどこかに行ってしまっていることはキツい。

記者会見場の真ん中にいたあの男の言葉が何度も浮かんだ。
「毎日仕事から帰ってきて、泣き止まない子どもが寝付くまでずっと車を走らせなければならない。殆ど寝れない。」みたいなことだったと思う。

まあ、それもなんとかなるもので、次第に扉を開けなくなっていく。聴力検査や視力検査の度に引っかり、その度に専門医で再検査。異常なし。まあこれも予想の範囲内。言語発達の問題があってこの程度で済んだだけよかったじゃないの!

結果論で言えばこの時点のリスク評価としては間違いだった。
でもね、トンネル掘るのと同じで予想されることには全て手を打ってるわけで。全部ほじくり返すなんて仮に専門家であってもできるわけが無いんだ。十分に気をつけて掘って異常出水があったら、先回りするなり止水するなりそれに合った工法を使えばいい。そうやってどう考えても重症例で予断を許さない状況が続いた第一子だって、結果そこらのやってる療育の域を遥かに超えた所まで持ってきたわけだし。

先月、全く宿題の問題を解けない彼女の姿があった。
「よし来たお前はどんな狂い方を見せてくれるんだ!?」長女の感覚で見に行ったら正直絶望したし、絶句した。
問題は読めない。図形がどれで、どこか問題の始まりで、大設問と小設問の関係も理解できてなかった。

「絶望した」のは正確には違うな。これは救済できる問題だ。こっちの方で苦しんでいる子の方が遥かに多い。正規の医療機関でアウトソーシングすれば全て解決案件だ。

正しくはこうだ「今までのノウハウをあまり活かせないから絶望した」だ。

第一子の時の動きは、重症化した自分そのものだった。
感情や感覚の過敏性。
時折現れる学習障害や運動能力の悪さ。
できることとできないことの差。できたとしても常人の何十倍、何百倍の労力がかかっている。だけどできても評価されない。
何も信用できないその感覚。
人の感情や目線など膨大な情報に遮られ溜まっていく出力。

だけどそれは全て自分なのだ。自分という失敗の連続の存在で作られ、蛇行した先進導坑には、一般の車も新幹線も走らせることはできない。だけど、少なくとも自分が経験した年齢なり範囲までの地層は把握しているし、その勢いと余裕を使って未知の領域まで掘り進むことは十分に可能だ。ていうか、第一子が誰かに痛めつけられ、言葉が脳内にあふれているのに出力できない様に呼吸するように、私の脳内では教師や親や親戚にされた体罰や暴言のフラッシュバックが起きる。
本来ならこの社会誰でもぶち殺してやりたいくらいの負の感情だ。
だが、絶妙のタイミングで現れる負の感情は、第一子をどう導けばいいか全てを教えてくれた。線路に飛び込みたくなること地獄は、この子のために全てあったんだと。

そしてある時期から、2人の一体感に快感を得ていた。
きっと定型発達の子を育てていたら味わえなかっただろう芸術的応用力。
どれだけ苦しい時期があっても、未来がどんどん見えて、信じられない程その通りになっていく。家族が家族になり、友達がたくさんできて、大人に評価され、全ての人の笑顔が溢れていく。

ドラマですよドラマ!

寂しかったんだよね。この子(第3子)にはそんなシナリオをあんまり書いてやれないと思うと。

でもさ、鹿島なり大成なりのJV(注:病院のこと)に任せて、セグメントシールドなりSENS工法なりで掘るのも悪くないかと。トンネル以外にもやらなきゃいけないことあるわけじゃないですか。高架橋作ったり、SA作ったり、駅とエキナカ作ったりとかさ。住宅分譲やってもいいわけだ。トンネルだけあっても誰も通れないわけで、そういう専門機関との療育分担ってのをやる時期が来たんだなとすぐに考え直した。やったことないからストレスだけどね。

冷静に考えれば独自療育なんていう中国雑技団を第一子に今日まで続け、邪魔する人間を一旦排除し、結果を出して理解させるなんて人外離れ業をよくやってきたものだよ。

先進導坑はもう終わりにしたいと思う。もう40代も目前に控えてるし。家庭と地域の子どものためにはなんでもするお父さんだけじゃ、まず俺が救われない。そしてもっと根本的に世の中を救いたい。

もう4割の子どもが顕著な発達的特徴を出していると思う。そこまで行けばこれはただの進化でしかない。私はずっと前からそう思っていたけど、本当になりつつある。過半数を超えればもう彼らの時代だ。彼らを生かさなければ、誰も居ない世界になってしまう。その時、旧来人類が彼らを邪魔したり、彼らが旧来人類を置いてくことにならないよう、今からしっかり準備をしておかなければ。

私だって典型的な自閉スペクトラム障害だが、旧人類の文化を愛している部分もある。どちらの邪魔もせず、協力できる世界を作っていく義務がある。
今辛い思いをしている少数とは到底言えない子ども、親、教員。助けに行けなくてごめんなさい。

でも俺は君たちと一緒に世界を作ることが楽しみで仕方ないです。

それにしても今月は病院や学校への説明書き(住民説明会)で疲れたわ。
いや、いいんだけど。

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