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座右の書「貞観政要」――歴史から現代のリーダーシップを学ぶ

日本生命で要職を歴任後、ライフネット生命保険を創業し、その後、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長に就任した出口治明さんの『座右の書「貞観政要」』を久しぶりに読みました。

中国唐代の皇帝・太宗(李世民)の治世を中心に、リーダーシップや国家運営に関する哲学を記録した名著です。太宗の「貞観の治」と呼ばれる時代は、平和と繁栄の象徴とされ、令和に生きる我々も学ぶことが多分にあるなぁと思います。

『貞観政要』は、単なる歴史書ではありません。リーダーや組織運営者にとって「普遍的な教科書」であり、現代のビジネスやマネジメントにも応用可能な洞察が数多く詰まっています。



『貞観政要』とは何か?

『貞観政要』は、中国唐代の学者・呉兢(ごきょう)が編纂した政治論集です。唐の第二代皇帝・太宗(李世民)の言行や政策を記録し、彼のリーダーシップや統治の理念を余すところなく記されています。君主と臣下の対話や、過去の王朝から学んだ教訓、国家運営の基本原則などが収められており、当時だけでなく後世にも大きな影響を与えました。

太宗の治世「貞観の治」(627~649年)は、中国史上でも特に安定した時代とされています。民衆の生活は比較的豊かで、国家は政治的・経済的にも安定していたと言われています。そして、この成功の背景にあったのが、太宗の卓越したリーダーシップです。『貞観政要』は、その成功を支えた考え方や実践の数々を記録しており、現代にも通じる「普遍的な知恵」が多く含まれていると思います。


『貞観政要』から学ぶ普遍的な教え

1. リーダーの謙虚さ――諫言を受け入れる姿勢

太宗が治世で特に重視したのは、「諫言(率直な意見)」を受け入れる姿勢でした。彼は次のように述べています。「君主が耳を閉ざしてしまえば、いずれ国は滅ぶ。諫言は私を磨いてくれる鏡であり、それを失えば、自分の欠点に気づけなくなる。」

この考えを実践した例として、魏徴(ぎちょう)という臣下との関係があります。魏徴は遠慮なく太宗を批判し、政策の誤りを指摘しました。太宗はその意見を真摯に受け止め、必要に応じて政策を修正しました。この姿勢が、安定した統治を可能にした大きな要因の一つです。

リーダーとして、部下や同僚からのフィードバックを積極的に受け入れることは、組織の成長に不可欠だと思います。(私もまだまだ出来てなくて、言われると、ついついイライラしてしまいますが苦笑)
自分の非を認めることを恐れず、率直な意見を歓迎する姿勢が、信頼を築き、より良い意思決定を可能にしますし、特に現代のように複雑で変化の速い環境では、多様な視点を取り入れることが成功の鍵となるんだろうなぁ。と。


2. 適材適所――人材を見極め、信じて任せる

太宗のもう一つの大きな特徴は、人材を適材適所に配置する能力でした。彼は、出身や地位に関わらず、その時々で最適な人材を選び、適切な役割を与えました。たとえば、魏徴のような批判的な臣下を重用する一方で、軍事や行政の専門家にも権限を与え、それぞれの才能を最大限に活かしました。

太宗は「賢人がいれば国が栄える。愚か者を用いれば国が滅びる」と語り、個々の能力を見極めることの重要性を説いています。

組織の中で、個々のメンバーがその強みを発揮できるポジションに配置されているかを見直すことが重要。で、リーダー自身が信頼して任せることで、メンバーが主体的に動く環境を整えることも欠かせないと思います。


3. 歴史から学ぶ――過去を反面教師にする

太宗は、隋(唐の前の王朝)の滅亡を反面教師として徹底的に分析しました。隋が滅亡した主な原因は、無謀な事業計画や過度な税負担による民衆の疲弊でした。太宗は、これを教訓に「民衆の生活を大切にする政策」を実施しました。たとえば、税負担を軽減し、無駄な事業を削減するなどの取り組みを行いました。太宗は「歴史は未来を照らす鏡である」と考え、常に過去の事例を学びに生かしていました。

ビジネスにおいても、過去の成功と失敗から学べることは多いです。ケーススタディの宝庫です。例えば、新規プロジェクトを立ち上げる際にも、似た状況で行われた過去の取り組みを調べて、そこからリスクや成功要因を抽出することで、より高い成功率を目指すことができますし!


4. 組織の利益を優先する――自己を捨てるリーダーシップ

太宗の統治を支えたもう一つの柱は、「自己利益ではなく、全体の利益を優先する」という哲学です。彼は、国家や民のために自分の欲望を抑え、リーダーとしての使命を全うしました。この姿勢は部下や民衆の信頼を得る基盤となり、安定した統治を可能にしました。

企業や組織のリーダーとしても、個人の評価や利益に固執するのではなく、チームや組織全体の利益を優先する視点が重要です。このような姿勢は、部下やメンバーの信頼を生み、組織全体の士気を高める効果があると信じています。


名著を読む重要性

今回、出口治明さんの『座右の書「貞観政要」』を読み直して感じたのは、名著には「時代を超えた普遍性」が宿っているということ。唐代の書物でありながら、その中に描かれている「謙虚さ」「適材適所」「歴史から学ぶ」という原則は、現代のビジネスや組織運営にもそのまま適用できます。


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