#01 【戦前|幼少時代】生まれてはじめて味わうショック
舞台
(福岡県)久留米
人物
主人公 :花山 三吉
家族構成:父、母、七人兄弟(五男二女)
三吉は四男坊
題名
草笛の記
物語
戦中 戦後 青春のおぼえがき
第一章 幼少時代
(一)大家族に育つ
祖父の死のショック ★
「くるまや」全盛時代
(二)父母のこと
仕事ひとすじの父
父、良木への思いひとしお
大家族を支えた母
自然に恵まれた母の実家
(三)雄大な筑後の山河
第一章 幼少時代
(ー)大家族に育つ
祖父の死のショック
花山三吉が、どうやら物心がついた頃、祖父(利三郎)が死んだ。
その日、道路に面した屋敷いっぱいに引き幕が長々と張られて、「剣かたばみ」の家紋が風に舞った。
玄関の提灯に灯りがともる頃には、おおぜいの人が弔問におとずれた。
仏間では祖母と父が神妙な顔つきで応対していた。
祖母は武家出の女らしく、涙も見せず丸っこい体の背筋をピンと伸ばして座っていた。父は如何にも商人然として、ときには愛想の一つも云ってみせた。
座敷では通夜の振舞い酒に酔った人々の声が、高く荒く聞こえていた。三吉は事態が分かったような、わからぬような気持ちで人のあいだを、うろちょろしたが、今日ばかりは相手をしてくれる者はいなかった。
この日のことは三吉の人生ではじめてのショックであり、人の死の無常感は、いつまでも心から消えることがなかった。
続く
坂田世志高
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