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本能の赴くまま、他人の目を気にせず「好き」を探求 岩田リョウコさんインタビュー

好きな言葉は「重版出来」!

本って一人で作ってないんです。著者って一番前に出る人なんですけど、その後ろにものすごいたくさんの人が居るので、売れないとものすごい重圧です。

売れなかったら私のために一生懸命徹夜してくれた方や、身を粉にしていい本にするために頑張ってくれた人たちを“下げちゃう”気がするので、プレッシャーです。

本を一冊作ると仲良しになるし、すごいチームワークが生まれる。「ここ、どうしたらいいですか?」って相談したり、アドバイスを受けながら作りました。編集の方々みんなで導いてくれるので、それを頼りにしています。

そう軽やかに話すのはエッセイストの岩田リョウコさん。

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初の著書は2015年、アメリカ本国で出版した『COFFEE GIVES ME SUPER POWERS』。しかも全米ナンバー1の快挙を成し遂げた強者。

帰国後、『週末フィンランド ちょっと疲れたら一番近いヨーロッパへ』(大和書房)、『エンジョイ! クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』(KADOKAWA)、『コーヒーがないといきていけない! 毎日がちょっとだけ変わる楽しみ方』(大和書房)、『HAVE A GOOD SAUNA!』(いろは出版)を続々出版。

重版率100%という岩田リョウコさんに、軽やかに人生を飛び跳ねる方法を聞いた。

 * * * *

お堅いキャリアから一変、なぜかコーヒーブログ

少し私の話をすると。日本の大学を卒業後、渡米。コロラド大学大学院で日本語教育学を学び、2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館に勤務しました。

この時に、自分でプログラミングのコードを書けるようになりたいと思ったんです。というのもコロラド大学で日本語を教えていたときに、「もっとテクノロジーを教育現場に!」って感じていました。アメリカの日本語教師の先生達は年配の方が多く、いまだに「マイケルジャクソンは~です」っていう古い教材を使っていたんです。もちろんテクノロジーを教室に入れてない。でも高校生も大学生もテクノロジーで日本語習っているのでギャップがすごかった。

先生たちも古すぎるとわかっていても、自分たちで教材を作るのが面倒くさいというのもあって、ずっと古いものを使い続けているという状況でした。

「ありえないだろー!」と思って、誰もやる人がいないんだったら私がやろうかなと。コードが書けたらサイトを自分で作れると気づいて、プログラミングの練習用に立ち上げたコーヒーブログが、気づいたらメインになっちゃった。2011年だったので、はや10年。

アメリカの大学まで行って、なんでコーヒー売ってるの?

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それが1年もたたないうちにバズって、出版オファーまで来たから、ありがたい話なんですが、それなりの苦労もあったんです(笑)

わざわざアメリカの大学院にまで行って、アメリカの大学で日本語を教えて、さらには外務省に勤務ですよ? 結構がっちりしたキャリアを築いていたのに、その後ブロガーって、180度変換しすぎてて。

「私大学院で頑張ったのにブログ書いてる…。これでいいの?」って思っていました。

おばあちゃんは「なんでコーヒー売ってるの?」って怒ってしまうし。

よく「どうやって折り合いをつけたんですか?」って聞かれるんですけど、ブログのPVがすごくて、かなり稼げたんです。それで楽しくなってきた。

ブログ運営もちゃんとした労働なんですよ。でも目の前で、ブログがすごいお金になって行くのが面白くて。1日に10万人来るようになったら、すごく面白いですよ。

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こんなことできるんだと思うと、もっともっとサイトを良くしたいと思い始めました。とはいってもそれは一時的なものだと冷静な自分もいて。ちょっとした株トレードみたいなイメージでやってました。だから書籍化の話が来たときはすごくホッとしたんです。やっと形になると。

いくら稼いでいたとはいえ、やはり不安定で刹那的なことだったので、形になった時点で「ああ、やっていてよかったなあ」と思いました。

これどれぐらい続けてやってくんだろう、いつかもう書くことなくなるなとか思ってたんです。でも、そしたら次は何か他のことをやればいいかなぐらいの気持ちではあったんですけど。

目指すものも目標もなく

実際のところの私は、楽しかったんですけど、何も目指してなくて……。それにはきっかけがあって、シアトル領事館勤務時代に東日本大震災があったんです。あの時一瞬で人が居なくなっちゃってあんな風に生活が変わって、さっきまで一緒にいた人が津波で流されていなくなってしまうということを、目の前で経験してないんですけどすごく大きなきっかけでした。

明日死ぬかもしれないと思ったら、「自分がやりたいこと」「好きと思えること」とか「気分が良いこと」をやりたいなと思って、領事館を辞めました。

そこでやってみたかったけど時間がなくてできなかったことって何だろうと思ったら、「私、プログラミングやりたかったんだ」と思い出して、学校に行き始めたんです。

それからというもの、いいと思ったことはすぐ人に伝えた方が良いと信じています。もしかしたらその人が明日いなくなっちゃうかもしれないのに、伝えられずに終わっちゃっうかもしれない。嫌なことが言いたいときは、それをちょっとだけ抑える。もしくはちょっとだけ冗談ぽく言うかすればいいんじゃない?って。

これがきっかけで、さらに目標を持たなくなったかもしれない。

自分がヘルシーでいれる決断

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世の女の子たちは彼氏にプロポーズしてほしいとか、逆に結婚してくれなさそうなら別れるとかよくあるじゃないですか。でもそれって「自分はどうなの?」っていつも思ってて。彼に決めさせるのって……どうなんだろうって思います。でも、不安になることもあるし、悩むこともありますよね。もし、相談されたら、基本的に自分が健康的って思えるチョイスをすべきだって言います。

ヘルシーに感じない決定ってありますよね。自分の悩みなのに人に言われて決めるとか、自分はそう思ってないけど流れ的にこっちにするとか。これってすごくモヤモヤする。

心が健康でいられる決定をして、それが本当に自分が心地いい決定だったら、それがいいんじゃない?って言います。

こんな思いからブログを立ち上げて、三ヶ月ぐらいで大きなサイトに取り上げられたことがきっかけで火がついてしまったんです。

日本だとyahooニュースで取り上げられてバズッたような感じです。そして1年ぐらいして出版社から書籍化のオファーがありました。

すでに知ってる人もいると思いますが、わたしはシアトルに行くまでコーヒーが飲めなかったんです。大嫌いでした!でも、シアトルはコーヒーの街。

どこ歩いてもスタバがあるっていうぐらいスタバだらけで。待ちゆく人はみんなカップ片手に持っている。でもコーヒーが飲めない私は、コーヒーショップで紅茶を頼むわけです。そしたら、熱湯とティーバックを渡されるんです。それならティーバッグ持ち歩くわ、みたいな。

だったら「もうコーヒー飲んでみるか」って飲んだのがきっかけです。
で、「こんな美味しいのか!」と。 みんながこんなに好きだったものを見て見ぬふりして、バカだったなと思いました。

そこからコーヒーへの探求が始まり、ブログを立ち上げることになったんです。

私のもう一つの偏愛・フィンランドですが、こちらもコーヒーつながりなんです。コーヒーの消費量が実はシアトルではなくフィンランドが世界一だったという事実を知ったんです。「絶対アメリカだ! アメリカだろ?」と思ってたんですけどね。

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そしたらコーヒーを飲みに行ってみようと思って、2013年にフィンランドに行きはじめたのがはじまりですね。

そしたらハマりました、フィンランド。アメリカってずっと喋ってないと、間が持たない。だからうるさいんですよ(笑)。スタバでも列に並んでいるだけで、知らない人がしゃべりかけてくるんです。沈黙に耐えられないみたいな。

でもフィンランドの人は、そんなにしゃべんなくていいみたいな感じで話し掛けられたりしない。聞けば、もちろんすぐ答えてくれます。

結局『週末フィンランド』という本まで出版することになりました(笑)。

「好き」だから、周りの目なんか気にならない

よく「好きを仕事にするってどうしたらいいんですか?」とか、「好きが見つからない人はどうしたらいいのか?」と取材を受けるんですけど、あまり考えたことがないんです。

でもよく考えてみると、「好き」ってもっと本能的なんじゃないかって思います。

繰り返しになりますが、本能的に「身体が気持ち良い」とか「これ好きだな」「心地いいな」っていうのを体で感じて、心で感じることに素直でいると、「これ好きって言ったら周りの人はどう思うかな?」とか「これ流行ってるから私も好きって言おうかな」みたいに、もう頭で考えてる時点で「本当に好き」じゃないかもしれない。

もちろん友達が好きなことだから興味持って、自分も好きになるってことはあると思います。でも「世の中でこれめっちゃ流行ってるから私もその一員になりたい」から好きっていうのもなんか違うかなって……。

他人の目を気にせず好きって思えることを見つけられるようなアンテナを立てていると、たぶん自然に好きが高くなっていくだろうし、もしかしたら私がそうだったように好きを掘り下げてそれが仕事になっていくかもしれない。

好きを追っかけている人は、周りからの目を気にしないんだと思います。

少し話はかわりますが、大学生ぐらいから挫折という感覚が全然なくなっちゃったんです。行きたかった高校に行けなかった時が挫折だったんですけど。ゴールを決めて、それしか目指してなかったら、失敗したとき、もう全部なくなったみたいな感じになっちゃう。

けど「ダメでもいいや」とか「ダメでも他に何とかなるかな」とか期待を下げたら、失敗もまあいいやと思えるようになりました。

実は私、「何が何でも本を出版したい」と思ったこともなくて(笑)。でも出版という夢を持って生きてる人が、本を出せなかったらつぶれちゃいますよね。だから「ダメでもいいや」ぐらいに思うと道は広がるんじゃないですかね。

だから好きな事といっても、大きなことでなくてもいいんです。

私、コンビニとかで売ってるチーズ鱈(チーたら)を知らずに生きてきたんです。食べた時「なんだこれ!」って、名前さえ知らなかった。「これめっちゃ好きだわ」って、みんなに「私、チーたら好き」って言ってたら、送ってきてくれたり、会う人がみんなチーたら持ってきてくれたりするんです。

ちっちゃい好きでも「好き!」って言ってたら、めちゃくちゃチーたらもらえるんですよ(笑)。

だから、自分にプレッシャーを与えなくてもいいんじゃないですか?





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