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ひろゆき氏投稿「誹謗中傷は被害者が自殺すると逮捕ができない」をファクトチェック

こんにちは!
野嶋ゼミ3年ファクトチェックチーム(木内、田村、中里)です。

今回は、

「誹謗中傷は被害者が自殺すると逮捕ができない」

というX(旧Twitter)の投稿についてファクトチェックを行いました。


検証対象

検証対象は、2023年11月14日にひろゆき(@hirox246)氏によって投稿されたポストです。

このポストは、もともとは
ひろゆき氏のポストの投稿から始まったもの。

元所属タレントらでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」に所属していた40代の男性が、被害を一部メディアで告発したところ、SNSなどでの誹謗中傷が相次ぎ、自殺してしまった。というニュースです。

この記事についてポストしたひろゆき氏に、

“なるほど ジャニーズが誹謗中傷を煽って自殺に追い込んだのか 警察ら粛々と誹謗中傷奴を逮捕して欲しいね”

という引用コメントがしの(@shino00100)氏によってされました。

投稿を基にFCチームが作成

その引用されたコメントを受け、発言したひろゆき氏の投稿。

ひろゆき(@hirox246)
誹謗中傷は被害者が生きていれば名誉毀損なりの罪に問えます。
被害者が自殺すると本人が告訴出来ないので、警察官は逮捕が出来ません。
誹謗中傷をした加害者から見ると、自殺まで追い込めば、罪に問われずに逃げ切れる事になります。

https://twitter.com/hirox246/status/1724438905657692454?s=20

こちらが、今回の検証対象です。

誹謗中傷を受けて被害者が自殺してしまったら、本当に加害者は逃げ切れてしまうのでしょうか。

SNSでの誹謗中傷が相次ぎ、深刻な問題となっている昨今。
こちらをファクトチェックしてみました!

何故このテーマを選んだのか

今回の対象者は、実業者であり、インフルエンサーのひろゆき氏。

ひろゆき氏のYouTubeより引用

彼は実業家でありながらYouTubeでの配信は毎度20万~40万回の再生数
YouTubeでの登録者数は161万人、X(旧Twitter)でのフォロワー数は246万人と、とても注目を集めている方。

そんな彼が発信する言葉は、多くの方に届き、目に触れるものです。
今回の投稿も、2023年12月15日現在、
899件のリポスト、5191件のいいねがリアクションされていました。

検証対象であるポストの反応(2023年12月15日取得)

さらに、このポストの反応には「確かに、酷い話ですよね。」「死んだら加害者を追い詰めにくくなる」など、同意を示すコメントから、「名誉毀損は親告罪ですからね。 殺人みたく非親告罪にすれば、被害者が亡くなっても罪に問えます。」という反論のコメントまで、様々なものがあり、ファクトチェックの必要があると踏みました。


レーティング


大東文化大学社会学部野嶋ゼミでは、ファクトチェックのレーティングを行う際、特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のレーティング基準に乗っ取り、レーティングを行っています。

出典:FIJのレーティング基準 https://fij.info/introduction/rating

そして、レーティング結果としては

・「誹謗中傷は被害者が生きていれば名誉毀損なりの罪に問えます。」
・「被害者が自殺すると本人が告訴出来ないので、」

の部分は正確

・「警察官は逮捕が出来ません。」
・「誹謗中傷をした加害者から見ると、自殺まで追い込めば、罪に問われずに逃げ切れる事になります。」

の部分は不正確であり、投稿の根幹部分に事実の誤りがあると判断したため今回のレーティングは誤りとなりました。


検証過程

①情報の発信者について​
②自殺したら告訴できない?​
③自殺と告訴(考察)​

4₋①. 情報の発信者について​

ひろゆき(@hirox246)氏​の普段のポストは、
話題のニュースへの意見​
政治への考え​
・ひろゆき氏への意見に​対する返答
日常的な投稿​

が主な内容でした。
攻撃的・飛躍的だと思われる投稿は少ないものの、
誤解の生まれやすい投稿は多く見られました。

4₋②. 自殺したら告訴できない?

この問題については、
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)で明らかになりました。​

第二百三十三条
死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、​
告訴をすることができる。​
② 名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、前項と同様である。但し、被害者の明示した意思に反することはできない。​

ここで注目して頂きたい2つの点は

➀刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)と書いてあるように、
 この法律は昭和23年からある。
 →ひろゆき氏が投稿した頃には確実にある法律である

②被害者の明示した意思に反することはできない。​というのは、
 被害者が生前に「告訴を希望しない旨」を​明らかにしていた場合、
 告訴することができないという意味​である。

です。

急に話は変わってしまいますが、
皆様はひろゆき氏がデマ情報を出す印象はありますか?

私の中では、様々な番組に出ていたり討論していたりと、
あまりデマ情報を流す印象はありませんでした

では、今回なぜこのような情報を投稿したのでしょうか?
その点について次で考察していきたいと思います。

4₋③. 自殺と告訴(考察)

「自殺まで追い込めば、罪に問われずに逃げ切れることになります」
このように発言したのは、
自殺をすると告訴は難しくなるからではないかと考察しました。

考えられる理由として​
1. 加害者を特定出来ない場合​
2. 親族や子孫に話せず自殺
3. 「告訴を希望しない」と偽装工作出来る可能性 ​
4. 個別にこっそり誹謗中傷された場合
が挙げられます。

1つ目の加害者を特定出来ない場合​は、
主にインターネット上で誹謗中傷されて自殺してしまった場合です。
最近では誰が書いたかを特定できるようになってきましたが、
それでもまだ特定できない状況は多くあると考察しました。

そもそも、特定するにしても告訴をするにしてもお金が必要になる
場合があります。
そのため、その段階にまでいけない経済的理由、または既に精神的問題を
抱えてしまいその段階に行く気力を消失してしまっている等の理由により、
特定できない(告訴できない)場合があるのではないかと考察したのです。

2つ目の親族や子孫に話せず自殺は、
「死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、​
告訴をすることができる。」という刑事訴訟法から考察できる問題です。

被害者本人が告訴できず、​親族や子孫にも何も言えず自殺してしまうと、
告訴する手段がなくなってしまうため、この場合も告訴はできません。

3. 「告訴を希望しない」と偽装工作出来る可能性 ​
誹謗中傷は、インターネット上だけでなくとも起きてしまうものです。
例えば、

子どもが親に誹謗中傷されていた。
それを理由に子どもが「告訴してください」という旨の遺書を遺し自殺
(見つけるのが親族や子孫ならまだいいですが、)
それを加害者であるが見つけた場合、そのままにしておくのかどうか
という問題です。

警察の方などに話を聞かれた親が、
子どもは「何か起きても誰かを訴えたりしないでね」と言ってて…。
と言ってしまえば、告訴できない状況を作れる可能性も0ではありません。そのため、偽装工作出来る可能性もあると考察しました。

最後の個別にこっそり誹謗中傷された場合ですが、
これは公然的に誹謗中傷をされないと告訴できないという決まりから
なっているものです。

SNS上で誹謗中傷、周りの人が認識できるレベルの誹謗中傷なら
「公然性」という問題をクリアして告訴できる可能性は高まりますが、
直接こっそり誹謗中傷をされてしまった場合は、
「公然性」がないため告訴することが出来ないのです。

以上のことを踏まえると、ひろゆき氏が投稿した
「自殺まで追い込めば、罪に問われずに逃げ切れることになります」
という投稿は誤りでありつつも、実際に自殺をしてしまうと
生きている時よりも逃げ切れてしまう確率が高いということが言えます。

まとめ


検証過程によって、今回の検証対象の

「誹謗中傷は被害者が生きていれば名誉毀損なりの罪に問えます。被害者が自殺すると本人が告訴出来ないので、」

の部分は正確であると判断しました。しかし、刑事訴訟法などを対象に検証した結果、

「警察官は逮捕が出来ません。誹謗中傷をした加害者から見ると、自殺まで追い込めば、罪に問われずに逃げ切れる事になります。」

などの投稿の根幹部分は不正確であると判断したため、今回のレーティングは誤りとなりました。

今回の検証対象はいじめの被害者側が命の危険にさらされる可能性のある危険な投稿であり、インフルエンサーは自身の知名度を自覚し、ある種の責任を持って情報を発信する必要があると感じました。

また、情報を受け取る側のリテラシーも重要であり、仮に情報発信者が知名度や社会的地位がある人物・機関であったとしても、それらが発信する情報を鵜呑みにせずに真偽を見分ける力が現代社会では必要であると考えられます。

参考文献

  • 菊池法務事務所 告訴権者(告訴が出来る人)名誉棄損罪の場合​

 告訴ができる人(告訴権者) - 告訴状・告発状の作成行政書士 菊地事務所 (office-yoshihito.com)

  • デジタル庁 e-Gov法令検索 ​

 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000131



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