なんでもない日にケーキを
金曜日のこと。
ケーキを作ることにした。
お祝いごとがあったわけではない。
何か特別がんばったごほうび、というわけでもない。
むしろ、なーんにもしていない日だった。
普通の平日。予定の入っていない、何でもない日。
きみとぼくとが生まれなかった日、だけど、
ケーキが食べたい気分の日。
近所にあったケーキ屋さんは、昨年末お店を閉めてしまった。
ショーケースにはいつも、何種類ものケーキが並んでいた。頻繁に通った訳ではなかったけれど、今日のように突然ケーキが食べたくなる時に何度かお世話になっていた。
個人経営のお店のようだったし、昨今ではいろいろ大変だったろうと思う。
もっと何でもない日に、ケーキを普通に買いに行ったらよかったな。自分の分だけでも。
そしたら、もう少しお店は長いこと続いていたのかも知れない、とふと思う。
冷静に考えたらそれでも無理だろう、ということは分かるのだけれど。
少し離れた別のケーキ屋さんに、わざわざ買いにいく気は湧いてこなかったのだが、
私でも、こんな日に作れるかも知れないケーキがある、と思い出した。
調べてみたら、生クリームとベーキングパウダーだけ買えば、後は家にあるものでいけることが分かった。
日焼け止めを塗り直してスーパーへ行く。洗濯物を干しに外へ出た以外は、本日初めての外出。
食パン、牛乳、生クリーム、っと。
ほうれん草が安いのでカゴに入れる。レタスは高いからやめておいた。
レジへ向かう。
いやあぶないあぶない、ベーキングパウダーだった。
午後。最近料理人に興味を示している次男が学校から帰ってくるのを待つ。
「ただいまー」
帰り道が暑すぎて、頭から湯気が上がっている次男を、帰ってくるなり玄関で捕まえた。
「ねぇねぇ、今日ケーキ作ろか!」
やったー、作る!というかと思ったら、「待って、暑いから顔洗わせて」と言われた。
ほんまに。ママちょっと前のめりすぎたね。
顔を洗って、手も洗って。ついでに足も洗ってもらった。
次男が漢字の宿題に手間取っていると、長男も帰ってきたので、同じシチュエーションで出迎えた。
えー、いいけど、なんでケーキ?と不思議そうな長男に、次男が、なんかママが今日ケーキ食べたいんやって、と教えている。
じゃあ俺はケーキ作ってから宿題にするわ、と言うので、二人とも台所へ集合、さっそくとりかかることにした。
「今日は、今から、これを見てケーキを作ります!」
ママー、米粉って?
あー、今日は薄力粉で作るよ。
へー、油も入れるんや!
おれ卵割る!
ママー、ベーキングパウダー、10g入りなんやけどどうしたらいい?
余ったらゴムで閉じとくから大丈夫ー。
タッパのサイズが小さかったのか、レンジで加熱すると中身が爆発して溢れていたが、記事にするにあたって確認し直すと、長男が小さじと大さじを間違えてベーキングパウダーを入れ過ぎていたことが判明。(10g入り一袋とさらに半分使っていた。)
無問題!
気温が高いせいか、手際が悪いせいか。生クリームがなかなか固まらないので、ボウルに冷たい水を張って冷やしながら振ると、みるみるうちに「クリーム」らしくなってきた。
ママ、なんで生クリームって振ったらかたまるん?
それは、生クリームって中に脂肪分が入ってるからやろ。
何で脂肪分が入ってると、振ったらかたまるん?
振ったら、空気と混ざるからやろ。
何で空気と混ざるとかたまるん?
‥
ごめん、ママも分からんかった。
(調べました。)
振り続けることで、網目構造が緻密になり、粘りが増して硬さが出てくるらしい。
まだ緩めではあったものの、ケーキに塗れそうな感じになってきたので、早速絞り出すことにする。
フルーツを買い忘れ、家にあったキウイを使おうと思ったが、まだ固かったので、急遽冷凍庫のジップロックの中で眠っていたデラウェアの粒を出してきて、トッピングにした。
なんでもない今日は、
誰かにとってのお誕生日かも知れないし、
誰かにとっての悲しかった日かも知れない。
なんでもない1日は、実はなんでもないことなんか全然ない。
今日は、買い物に行って、ケーキを作って、ケーキを食べた1日になった。
いや、ボーイズにケーキを作ってもらった日、かな。
きみたちと美味しい手作りケーキを食べた日だ。
今度は、旬のフルーツも買ってこよう。
クリームももう少し長く振り振りしよう。
もう、大さじと小さじは間違えないね。
ふらおさん、何でもない日が楽しい日になるレシピを、いつもありがとうございます。
↑他にも作りたくなるデザートいっぱい載っています。
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