見出し画像

ダイナンのユニフォームは、「たくさんの手」から作られています。


ダイナンnote編集部(以下、編) 前回は、ダイナンのユニフォームが重要無形文化財に指定されている技法で作られる織物「久留米絣(くるめがすり)」で作られることになったきっかけについて、デザイナーの村田さん(以下、村田)の想いをたっぷり聞かせていただきました。 今回も引き続き、生地のデザインについてGRAPH榎本さん(以下、榎本)、但馬社長(以下、但馬)、ブランディングチームで話した様子をお届けしていきます!

クレイジーな、クラフトの世界

 ちなみに、下川織物さんの工場見学は、ブランディングチーム全員で行ったんでしたっけ?
但馬 時短勤務の長尾以外、全員で行きましたね。

▫️ 左から、ブランディングチーム井上、吉田、中川。下川織物の下川強臓さん、但馬社長。
下川さんは、久留米絣の技術の継承・革新に挑戦し続け、国内外に発信されている活動をされています。工場見学の際も久留米絣の技術や作り方について、丁寧に熱くご説明いただきました!
https://oriyasan.com/

 生地が織られていく現場、実際どんなでしたか?
吉田 ワクワクしましたね。頭では分かっていても現場を見たことなくて。実際動いてるのを見たらすごい迫力でした。

榎本 うん。音もすごかったですね。織り機がたくさん並んでて、それが一斉にガーッと動いてて、音の迫力がすごかったですよね。
井上 下川さんが設計図の説明をしてくれたんですけど…。
一同 難しかった(笑)。

下川さんの説明を受けている様子

村田  あれはなかなか理解できない(笑)。すごいんですよ、久留米絣は。織物、少しやったら分かるんですけど、作れないんですよ、普通じゃ。 普通じゃ作れない。

榎本 クレイジーですよね(笑)。
村田 絣って、本来は織物の中でも、クラフトの世界なんですよ。手作業の。それをこう、量産できる仕組みを久留米絣が作り上げてて、もう日本で唯一と言っていい。いや、世界で唯一と言っていいかもしれないオリジナルのシステムが、久留米絣ならではの技術なんですね。仕組みについて、何となくは分かっていたんですけど、しっかり理解してないとデザインできないので、 うん。かなり勉強しましたね、今回。

編 村田さんに「世界で唯一」と言わせしめた久留米絣の模様ができるまで。かなりの勉強が必要なくらいの奥深さですので、簡易的にですが、こちらで写真を使ってご説明しますね!

久留米絣の模様ができるまで
1.「括り」
柄になる部分を計算し、染めたくない部分に糸を巻いて防染する。

⬜︎白い糸が後々生地の横糸になる糸、ベージュの糸が防染のために巻いた糸です。

2.「染め」
糸を染める。
3.防染用の糸を取る。

⬜︎青色の部分が染まった場所、白い部分が染まらなかった場所です。
⬜︎右から1.2.3.の手順を踏んだ糸です。

4.柄の1リピート分(約30cm)をシャトルに巻き取る。

⬜︎巻き取られた時点で柄を合わせている為、ズレが無く織ることができます。

5.「織り」
織り機で生地を織る。

⬜︎ダイナンのユニフォームはタテ糸がピンク、横糸の染めたところは青色・防染したところは白。模様の部分はピンク×白、地の部分はピンク×青色で模様が作られています。
⬜︎防染した部分が微妙にずれることで柄のフチに、久留米絣特有の模様のゆらぎがおきます。

厳密には30以上の工程がありますが、模様ができるまでの簡易verです。

ご興味ある方は、下川織物さんのHPもご覧くださいね。 では、引き続きインタビューをお楽しみください!以上、ダイナンnote編集部からでした。

一同 (工程のすごさに、ひとしきり盛り上がる)
村田 で、掘り起こしたらありました。僕が最初に出した図案がこれなんですけど…。下川さんからは「久留米絣はワンピッチ、この長さまでしかできないよ」と聞いてて。そういう制約は僕の頭に入れてたんで、一応このピッチの中でリピートを作ってるっていう感じですね。

たくさんの「手」

 村田さん、改めてこの柄のコンセプトを聞かせていただけますか。
村田 これが提案する時に作った資料ですね。今見たらこれ、2022年の7月に書いてるんですよね。

 約2年前ですね。
村田  ですね(笑)。「縫製には魔法のような力がある」っていうメッセージがブランディングの出発点だったと思うんですけど、 普段から洋服に関わっている僕もすごく共感できたんですね。そこで「じゃあ、ユニフォームの魔法ってなんだろう?」ってことから考えてました。 着てワクワクする。もちろんそういうこともあるし、地元の素材を使うことによって、土地との繋がりを感じるっていうことだったりとか。そういうことが、僕がデザインに込めることができる魔法なんじゃないか?って思ったんです。
あとは皆さんとお話してる時にポロッと出てきたキーワードですね。「結局、縫製って手仕事なんだよね」って。とにかくいろんなことが機械化して、便利になっていっても、現場の人が1つ1つの工程で手を動かしていくっていうことは変わらないというか。

縫製現場の風景
ミシンで縫っています

僕、すごくいいなと思ったんですよ。なんか、 なるべく手でやらない方に向かってる社会の中で、手でやってる。自分たちの手で作り上げるっていうことの大切さみたいなことを改めて感じて、手が一つのモチーフになりました。
加えて、社内の風通しの良さみたいなことをすごく感じたんですね。社長さんと社員さんのコミュニケーションを見させてもらってたりとか、働いてらっしゃる様子とかから。その、風通しの良さだったり、つながりみたいなことも、ですね。

手と羽根が混ざっているような柄なんですけど、ぼーっと考えてる時に**「あ、手が羽根になる。 で、自由に飛ぶ…。いいな」みたいな。手と手ってつながるじゃないですか。そう、つながったら、より大きな力になることだったりとか、なんかそういう、 手とつながりと風がデザインのキーワードです。
あと、何か一つのものが集合することによって、大きな力になることってたくさんあるなと思って。 子供の童話で、スイミーってありますよね。1つの魚は小っちゃいんだけど集まって、大きい魚を追い出すみたいなお話でしたよね。 そういうものから、手がもたらす自由さと、つながりが空を飛んでるイメージが、僕の手の中から生まれてきたっていう感じですね。はい。手の自由な線を入れたいなと。

それともう一個だけ。ちょっとこう、ナンセンスなものにしたかったんです。 ナンセンスって、僕はポジティブに捉えてて。会社の中はすごくこう理路整然と、ものづくりに対して合理的な空間になってるんですね。 その中で、ちょっと余白みたいなものを作りたいなと思って。着るものって、その余白の部分になり得るんじゃないかなと思ったんです。ゆるさというか。人間らしさと言ってもいいかもしれないですけど入れたいなって、最終的にこの柄に落とし込んだ感じです。

社内の反応

「魔法」という言葉を出発点に、手仕事や風通しの良さ、つながり、余白というものがこういうデザインになって…、こんな風になったんですね。

村田  織物には織物のオリジナリティーというか、「らしさ」があって。こういう素材の揺らぎみたいなとこだったり、絣であれば柄のエッジがぼやける、みたいなことが「らしさ」なんですね。 だからこの図案はあくまでコンセプトをお伝えするもので、織物は織物として完成することはお伝えしていましたね。
 みなさん、図案を最初にご覧になった時、正直どんな印象でしたか?
長尾  私はもう、村田さんが話してくださってるそばから、いい、いい、いい!って。
一同 笑
長尾  直感で、これいい!と思って。ちょっと変な感じがしたけど、そこがいいなって思って。で、それをいいよって言ってくれる社長がいて。形にできること含めて面白いなって思いながら、このプロジェクトを楽しめました。
村田 そうですね。みなさん結構、直感的に同意してくださった。っていう感じです。

井上 良いとしか思わなかった。
吉田 ずっと見てたら可愛く見えてきたっていう。
榎本 じわじわと(笑)。社内の他のみなさんに、これ何柄?なんて聞かれたりしたんですか?
長尾  率直にかわいい、柔らかい、っていうのはありましたね。でも、前の黄色に比べるとちょっと暗く感じるとか、地味とか…人それぞれですよね。 色々な意見は聞きつつも、プロジェクト自体の進行も含めて、想いが染み込んでいってくれるといいなって思ってます。みんな受け入れてくれる社風なんで。
井上  1番年配の方が「こんなの私似合わんわ」って言っていたので「いや、いいから試着して!はい、サイズどれにする!?」って着てもらって。「あら、可愛いじゃない!すごい!」って、ほんとに似合ってるのに「若い人は似合うけど…」って、そんなやり取りもしながら(笑)。
長尾  色がもっと明るかったらもっと、「いや、私これ着れない」とかあったかもしれないので、ちょうどいい。いいところに落ち着いてると思います。
榎本 なるほどなるほど。

外から見えた、余白とつながり

 これ、一番初めに、ブランディングチームのみなさんがいい!って反応されていた時、但馬社長はどんなことを思ってたんですか?
但馬  最初、村田さんから提案をいただいた時ですね。「おお、そうきたか〜」と。

一同 笑
但馬 その、会社に対して感じてもらったことに対して「そうきたか」って。外からの目で見てもらうと、いいように見えてるのかな、って。意識してない、自覚してない部分もあったりして。
 自覚してない部分っていうのは?
但馬 例えば、その「風通し」って言葉が出てましたけど、ぶっちゃけうちの会社、風通しいいんかなと。
一同 笑
 それはさっき、長尾さんも「いい」って言ってましたし。
村田 そうそうそう。
但馬  いやいやいや。村田さんが考えてくださったコンセプトのもとになっている「会社がこう見えている」ってことを、みんながよく理解してくれたら、とてもこう、なんちゅうのかな、 価値のあるっていう言い方とはちょっと違って、なんか、このユニフォームのリニューアル自体が大切なものになっていくと思うんですよね。いかんせん僕は伝えるのが下手だっていうのもあるんですけど…。
いいじゃないですか。こう、大切に考えて作ってくださったものをですね、自分たちで縫って、自分たちで着て。うん。総じて、楽しいじゃないですか。

編 次回、更新予定は、7月30日頃です。リニューアルしたユニフォームの形やこれから先の未来について、このメンバーで盛り上がったお話をお届けする予定です。どうぞお楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?