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ロシアのウクライナ侵略は非, 即刻撤退すべき, だが一方で, アメリカ合州国のそれほど巨大で醜悪な 〜 偽善とダブルスタンダード 〜 は 他にあるだろうか?

ウクライナに一部ネオナチ勢力がいるにせよ(本 note 後段の章にて詳述), そのことでロシアによるウクライナ軍事侵攻(侵略)と民間人の殺戮が正当化されないことは論を待たない。だがしかし, この機会に, 例によって「正義の味方」然とまさに当然の「反侵略」の声を上げて国際社会の中心に躍り出るアメリカ合州国のそれほど, 巨大で醜悪な 偽善とダブルスタンダード を筆者は知らない。 

いや, 彼らは「正義の味方」面などしてないとか「躍り出」たりしてないとか言うのだろうが, 自らの狭義の「国益」の為なら他国・他民族の人権の問題や他国・他民族に属する人々の生命を軽視なり無視なりしてきた(無視どころか 市民の命を奪ったりもしてきたわけだが)これまでのあの国の歴史が, あの国の為政者たちやそこに連なる自称「ジャーナリスト」たちを含むエスタブリッシュメントの面々をそう見せているに過ぎないのだ。

前説

念のため繰り返し書いておくと, ウクライナに一部ネオナチ勢力がいるにせよ(実際, 少なくない数のネオナチ勢力が存在するようだ), ウクライナ東部に「民族紛争」の類があるにせよ, だからと言ってロシアがウクライナに軍事侵攻(侵略)したり, 民間人を殺戮したりすること等に正当性などあるはずもなく, 言わずもがな, 文字通り今回のロシアの軍事作戦は言語道断である。

しかし一方で, 戦争(ロシアのウクライナ侵略)が終わってからではなく, これはこれでいま指摘すべきだと思うのは(自分が note や Twitter などで吠えても影響力など無いのはもちろん承知しているが, 要するに戦争終結後にあらためてではより有耶無耶になりやすい), アメリカ合州国(以下, アメリカ)という国がこういう機会に国際社会で「正義の味方」面することには強烈な違和感という以上のものを感じる, ということだ。

「戦争(ロシアのウクライナ侵略)が終わってからではなく, これはこれでいま指摘すべき」であることの理由は, もっと的確にイスラエル出身の反シオニストの歴史学者イラン・パッペが述べている(本 note 後段の章において当該のイラン・パッペのテキストを掲載)。

さて, 国連安保理などを通じた国際社会の合意を無視した他国への侵略や政権転覆(「成功」したものや「試み」に留まったもの犠牲を払いないがら失敗したものを含め), また国連安保理における不当な動機の拒否権行使など, 今回のウクライナ侵略に関わってロシアが批判・非難されている行為なら, それらは既にアメリカの「お家芸」「十八番」でもあると言うべきである。 

今世紀に入ってからのまだ記憶に新しいものを一例として挙げれば, アメリカのイラク侵略は, 同国の大量破壊兵器保有, そして同国のアルカーイダとの関係(世俗主義の独裁者だったサッダーム・フセインがイスラム原理主義者たちを匿っているなどと疑うなど, それはもちろん有り得ないとまで言えなくとも極めて奇抜な発想だったが)に絡むアメリカ側のでっち上げによって「正当化」したものだったし, 要するにその 2点ともウソだった。そして, そのアメリカのイラク攻撃は国連安保理決議を経ず, フランスやドイツなどの反対も押し切ってのものだった(「開戦」早々, イギリスとともに真っ先にアメリカ支持を表明したのが小泉「日本」だったわけだが)。

そもそもアメリカの国連無視の他国攻撃は, 今世紀の対イラク, アフガニスタン, リビア, イエメン, ソマリア等に留まらず, 前世紀の数々の「前科」から通算したなら, それはもう数え切れないほどと形容したくなるほどなのだ。

アメリカ合州国による歴とした外国政府の転覆例は枚挙に遑がない 〜 中には当該国国民の民主選挙で選ばれた政府の転覆例すら

今回, ロシアによるウクライナの政権の転覆が取り沙汰されてきたが(勿論これも言語道断), 歴とした外国の政府を転覆させた回数なら, アメリカ合州国政府によるものの方がよほど多い。

今世紀に入ってからのイラク等の例は記憶に新しいが, 遡れば例えば 1973年911のチリ(アジェンデ大統領), 1954年のグアテマラ(グスマン大統領), 1953年のイラン(モサッデク首相)なども挙げられ, これらは全てアメリカCIA が(イランの時はイギリスMI6と共謀して)暗躍して各国の軍にクーデターを起こさせたもの。しかもこれら3国のケースは全て, 其々の国の国民が民主選挙, 自由選挙で選んだ政府だった。

上記のアメリカ政府による国家犯罪については, 先の民主党大統領候補選挙の際, バーニー・サンダースが言及したほどで, もはや歴史上の常識(とはいえ, これまでのアメリカ大統領選挙の歴史の中で有力候補が公の場でこうした国際社会におけるアメリカの闇の部分に言及したことなど, バーニーの前にはなかったのではないかと思うが)。

以下, インスタグラム投稿動画。バーニーの右で「おいバーニー、何言い出すんだ」といった風情の呆然とした表情をしているのが, 現アメリカ大統領, ジョー・バイデン。

アメリカは戦後75年余の間に, 一体どれだけの数の外国の政権転覆を企てたのか。以下は比較的初期の 3例だが, 特徴的なのは, これらについてはいずれも各国の国民・有権者による民主的な選挙で選ばれた政府であったということ。

1) イラン

モハンマド・モサッデク(1882年5月19日-1967年3月5日)。1950年代前半期にイランの首相を務めた。民主選挙で選ばれた彼の政府は, イギリスの石油会社に独占されたイランの石油の権益を母国に取り戻そうとし, その為にアメリカのCIAとイギリスのMI6が画策したイラン軍によるクーデターによって転覆された(1953年8月)。

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やり直しが効かない以上どうにもならないことではあるが, 当時のアメリカとイギリスの国家権力によるイランの内政への介入と不当極まりない政権転覆が無かったなら, 回り回っての, 巡り巡っての, 1979年のイランのイスラム革命は無かったのではないか, と思えてくる。

宗教上の権威・権力者であるホメイニが政治権力の座に就くことになるイスラム革命は, 選挙で選ばれた世俗的な民族主義者であったモサッデクがアメリカとイギリスが画策した軍事クーデターで倒れ, 両国が代わりに政権(政治権力)の座に君臨させた皇帝パフラヴィー2世(パーレビ国王, 事実上アメリカの傀儡であり且つ親イスラエルで同国とは同盟関係, 軍事的な協力関係を保っただけでなく世界「最強」の諜報機関の一つモサドを持つイスラエルからパーレビ創設の秘密警察サバク SAVAK は訓練を受けてもいた)のその後の長年の反対勢力弾圧への反動として左翼と宗教勢力による革命運動が起きたときに, 最終的に後者が政治権力を握る結果になったものなのだから。

アメリカとイギリスによる 1950年代の前半期の不当なイラン内政への介入と政権転覆が無かったなら, イランはいずれ中東(西アジア)随一の民主的な国になっていた可能性すらあったのではないかと思えてくるのだ。

歴史で「たら, れば」を語ること。しかしこれは現在と未来を展望する際には重要な作業にもなる。

関連 note 2点。

(1) イラン, 革命から4年後のテヘラン 〜 1983年11月15-17日, Teach Your Children ♫

目次
1. イラン革命, 「たら, れば」 〜 米英によるイラン介入と不当極まりない政権転覆(1950年代前半)が無かったなら, 回り回っての, 巡り巡っての, 1979年のイランのイスラム革命は無かったのではないか, その前にイランは「中東」(西アジア)随一の民主的な国になっていたのではないか。
2. テヘラン, イラン・イスラム共和国 〜 1983年11月16日(写真 6枚)
3. テヘランの路地裏で出会った, イランの子供たち 〜 1983年11月16日(あのときの20ヶ国以上の旅で撮った写真の中で最も好きな写真のうちの 2枚)
4. イラン・イスラム共和国の旅, 最初の3日間 〜 1983年11月15-17日(旅日記 4ページ)
5. イランの旅 関連 note, 以前の4点
6. イランに入る前の, 2度目のトルコ滞在記 〜 1983年4月26日の日本出発以降そこまでの各国各都市の旅 note 全リンク付き
7. Teach Your Children (CSNY): 歌詞和訳 〜 世界の子供たちの写真と映画と

(2) イラン, 革命から4年後のエスファハンとザヘダン 〜 1983年11月17-21日

目次
1. 1983年4月26日に日本を出て, ソ連・ヨーロッパ・中東諸国を旅し, 11月15日からはイラン・イスラム共和国, まずは首都テヘラン
2. エスファハン 〜 家に招いてくれた地元の人, 美しいモスク, バザール(1983年11月18-19日・写真12枚)
3. ザヘダン 〜 地元の青年と, 昔々の「悪の枢軸」3ヶ国出身バックパッカー揃い踏み(1983年11月21日・写真1枚)
4. イラン, 革命から4年後のエスファハンとザヘダン 〜 1983年11月17-21日(テヘランから離れれば離れるほど「世俗」が顔を出して "楽しさ" も "不道徳" もより見えやすくなる, 旅日記9ページ)
5. The End 〜 The Doors ♫

2) グアテマラ

ハコボ・アルベンス・グスマン(1913年9月14日 - 1971年1月27日)。彼も選挙で選ばれた大統領だったが(1951年 - 1954年), 米ソ冷戦下で左派の政権を嫌ったアメリカ CIA が画策した軍事クーデターによって失脚した。その後の政権は、御多分に洩れず, アメリカの言うことを聞いてくれる独裁政権(かつ軍事政権)。

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なお, 2011年になって, グアテマラ政府はアルベンス・グスマン(失脚後はメキシコに亡命, その後もスイス, フランス, チェコスロバキア, ソ連, さらにメキシコに戻るといった逃避行の人生を余儀なくされ, 最終的にメキシコで客死している)の名誉回復と公式謝罪を行なうということで彼の遺族と同意書を交わし, 同年10月には同国政府による公式謝罪が為されているが, 遺族はクーデターを画策したアメリカ政府にも謝罪を求めてきた。

しかし, アメリカ政府は今に至るまで, 謝罪を行なっていない。アメリカ(の政治権力)とは, はっきり言って, そんなものである。政治権力なんて他の国も似たり寄ったりだろうと考える向きもあろうが, しかし他の国々はアメリカほどグローバルに, そして数多く, その種の所業に手を染めていないし, アメリカほど国際社会で「正義の味方」面して大見得を切ったりもしない。要は, 他の国々は, アメリカほど巨大な 偽善とダブルスタンダード の国ではない。

3) チリ

何度も言うように, 例えばウクライナに一部ネオナチ勢力がいたにせよ, ロシアによる軍事侵攻(侵略)や民間人の殺戮はもちろん非。言語道断の不当な犯罪。

だが一方で, 例の如く「正義の味方」「人権の守護者」面して声高にロシアを非難するアメリカのエスタブリッシュメントのダブルスタンダードには, 毎度のことながら, 心底うんざりする。

アメリカが起こしたとも言えるチリの悲劇の 911 を含め、アメリカによる歴とした外国の政府の転覆例は枚挙に遑がない。

サルバドール・アジェンデ(1908年6月26日 - 1973年9月11日)。1970年から1973年にかけてチリの大統領を務めた。民主選挙, 自由選挙で選ばれた世界初の社会主義者による政権だったが, やはりアメリカが初期から(経済など含め)介入し, 常套手段の軍事クーデターによる政権転覆を図った。

アジェンデは 1973年9月11日, アメリカ CIA が画策し, その支援を受けた同国のアウグスト・ピノチェト将軍率いる軍事クーデターの部隊と大統領警備隊の間で銃弾が飛び交う最中, チリ共和国国民に向けて 6度にわたるラジオ演説を行なった後, 自死(自殺)した。

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アメリカが企図した軍事クーデターによる政権転覆が「成功」した後は, 他の国でのアメリカによる同様の悪行の後と同じく, 同国は長期にわたる独裁政権・軍事政権の時代となった。

権力を一手に握ったピノチェトはクーデター直後に戒厳令を敷き, 反対勢力をサンティアゴ・スタジアムに集めたうえで虐殺した。その犠牲者は 3,000人近いとされる。1974年6月に正式に大統領に就任したピノチェトは, その後もアメリカの政府や経済界から支援を受け続け,  1990年3月までの 16年間, 文字通りの長期独裁政権, 軍事独裁政権を維持した。その間の反体制派弾圧は苛烈を極め, 彼の政権下における政治弾圧による死者・誘拐・行方不明者は数千人に上るとされる。

関連 note 1点。

911 を振り返る 〜 1960年, 1965年, 1973年, 1983年, 2001年, 2019年, 2020年, そして 2021年

What a wonderful world

What a Wonderful World ruled by so called "democratic" country, the United States of America ♫

映画 "Bowling for Columbine" (Michael Moore, 2002) より。この部分, 犠牲者数などの細かい数字は諸説あれど, 大枠は史実通り。ただし 1点, この映画の公開の後, 前章で取り上げた通りで, チリのサルバドール・アジェンデ(民主選挙で選ばれた当時の大統領)の 1973年9月11日の死については, ここで語られている(アメリカ合州国 CIA が演出したピノチェト将軍による軍事クーデターの最中の)「暗殺」によって命を落としたということではなく, 繰り返すがアメリカ合州国 CIA が演出したピノチェト将軍による軍事クーデターの中で「自死」したものと, チリ政府による調査が認定している。

なんと 素晴らしくない 世界!

国連安保理決議でロシア同様, 不当に拒否権を使いまくるアメリカ合州国

前章に例を挙げた外国政府の転覆例の他にも, アメリカの 偽善とダブルスタンダード の例を挙げたら, これもキリがないのではないか。

今回のロシアによるウクライナ侵略に際して, 国連安保理決議の際のロシアの拒否権発動が批判された。

これまでの安保理決議拒否権発動回数は, 西側が国際社会において優勢だった米ソ冷戦時代のソ連とソ連崩壊後のロシアを通算すると同国が一番多いことになるものの, しかし通算回数2位のアメリカの不当な拒否権発動も非常に多い。

2022年2月現在の拒否権の通算行使回数は, ソ連・ロシアの合計が 120回, アメリカ合州国が 82回, イギリスが 29回, フランスが 16回, 中華民国(台湾)・大陸中国(中華人民共和国)の合計が 17回。

ただ, ソ連・ロシアの総数が第1位であるのは米ソ冷戦時代に国際政治において西側の方が優勢であったこと等の背景があるものと考えられ, 1946年から 1971年の間はソ連が 84回, アメリカが 1回(たった1回!)であって, 1972年以降で比較すると, ソ連・ロシアの合計は 36回, アメリカは 81回となり, アメリカによる拒否権発動の回数はソ連・ロシアの合計の 2倍以上の多さになっている。

ただし公平を期し, もう 1点加えると, ソ連崩壊後の1992年以降はロシアが 30回, アメリカが 17回と, 逆にロシアの回数がアメリカのそれの 2倍近い。今のウクライナ情勢を考えるとまず 2014年のロシアによるウクライナ・クリミア半島の併合の際の安保理決議が想起されるが, しかしこの間のロシアの拒否権発動回数の多さには, 2011年から2020年までの 10年間にシリア内戦に関わる安保理決議が非常に頻繁に議題に上がり(回数にしてなんと 16回), その度にシリアのアサド政権側の後ろ盾になっているロシアが拒否権を行使している, という背景がある。

アメリカはと言えば, 前世紀からの過去数十年間にわたり, 国連安保理でのパレスチナ占領地からの撤退要請や占領地における国際法(ジュネーヴ条約等)違反の入植地建設などに係る, 対イスラエル非難決議の殆どを, アメリカの拒否権発動によって葬ってきた。

要するに, ロシアのシリア擁護にせよ, アメリカのイスラエル擁護にせよ, その拒否権発動は不当なものばかりというわけだが。

今回のロシアによるウクライナ侵略が国際法に関する無法国家の所業であるのは間違いないが, 他国の政権転覆, 国際社会の合意や国連安保理など無視した軍事侵攻・侵略などの歴史を振り返れば, アメリカこそが世界随一の無法国家であり, 莫迦ブッシュがよく言った「ならずもの国家」こそアメリカだと言いたくなるくらいだ。

そういうわけで, プーチン・ロシアは無法者なれど, そうした指摘・論難自体は正当なれど, しかし一方で, バイデンのアメリカだろうが, オバマのアメリカだろうが, クリントンのアメリカだろうが, クリントン夫妻のアメリカだろうが, ブッシュのアメリカだろうが, トランプのアメリカだろうが, 要するに民主党のアメリカだろうが共和党のアメリカだろうが, アメリカという国の政府なりメディアなどにおけるエスタブリッシュメントなりが「正義の味方」面することほどに醜悪な 偽善 の例が, 国際政治の世界においてあるだろうか。

.. アメリカのブルーズとかロックとか映画とかには, 子どもの頃から好きなものが多いんですけどねぇ..

* 国連安保理決議のおける拒否権行使回数や決議議題については,

アメリカ合州国エスタブリッシュメントの偽善とダブルスタンダード 〜 最近の一例(パレスチナ/イスラエル問題に関わって)

最近の例を一つ。この男は言わずと知れたアントニー・ブリンケン(Antony Blinken), アメリカ合州国の2021年1月以降のバイデン政権下での国務長官。1962年ニューヨーク州生まれで, 父親はウクライナ系ユダヤ人の銀行家, 母親は社交界の名士で, 裕福なハンガリー系ユダヤ人の娘。

但しこれはある意味たまたまのことで, 別に国務長官がユダヤ系の時にだけアメリカがイスラエル寄りになるということは全く無く, アメリカのイスラエル一辺倒の偏向した対「中東」外交は 1948年のイスラエル「建国」以来ほぼ一貫したもの。

トランプ時代のニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)国務長官の時だって, オバマ時代のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官の時代だって, イスラエルひたすら「擁護」だったことには変わりない。

なお, Josep Borrell Fontelles はスペインの政治家で, 2019年12月より EU外務・安全保障政策上級代表(EU外相に相当する)。

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さて, 昨年1月, イスラエル最大の人権擁護団体 B’Tselem が, ある意味「ようやく」(パレスチナ人の多くが, そしてパレスチナ/イスラエル問題に関心を持つ人の多くが, 既に10年あるいは20年以上前から指摘してきたことなので), 

イスラエルは民主主義国家ではなく1948年「建国」戦争後のテリトリーのイスラエルと 1967年以来 違法「占領」を続ける東エルサレム・ヨルダン川西岸地区およびガザ地区を実質支配する「アパルトヘイト」レジームであると認定した(2021年1月12日付, 同ウェブサイト上)。

その後, 世界最大の人権擁護団体である Human Rights Watch および Amnesty International も, それぞれの調査に基づき, 同趣旨の指摘をした上で, 明確に, 

イスラエルの国家が, ヨルダン川から地中海にまたがって「アパルトヘイト」支配をしている旨, 認定している。

以下は 筆者による関連 note で, 特に 5) 以降は アメリカ合州国政府による加担・関与・共犯性を取り上げているもの。 

note 1) イスラエルはヨルダン川と地中海の間に存在する 「アパルトヘイト」 レジームである(イスラエル最大の人権擁護NGO) 〜 これに対しイスラエル「擁護」専門家の抗弁は?

note 2) イスラエル批判、反シオニズム、BDS を 「反ユダヤ主義」 と見做す思考の、度し難い愚かさ

note 3) イスラエル批判を「反ユダヤ主義」として封じようとすることの度し難い愚かさ

note 4) イギリス/イスラエルの学者が イスラエル批判を沈黙させる IHRAによる「反ユダヤ主義」定義の拒否を呼びかけ

note 5) アメリカのイスラエル愛 〜 バイデン政権になろうが変わらぬその愚かさ

note 6) アメリカ合州国のお気の毒なまでに「一途な」イスラエル「愛」 〜 その度し難い非合理

note 7) アメリカが加担し続けるイスラエルのパレスチナ人弾圧を止めさせようとしてイスラエルに殺されたアメリカ人女性 Rachel Corrie

note 8) 終わらないパレスチナ人の悲劇 〜 アメリカ合州国による徹頭徹尾のイスラエル支援のもとで

いわゆる西側諸国の偽善とダブルスタンダード 〜 イスラエル出身のユダヤ人歴史家・反シオニスト, イラン・パッペのテキストより

ここから 5章にわたって, 見出しにあるイスラエル出身の歴史学者によるテキストの引用(転載, 以下に転載元のリンク)。テキストは本年, 2022年3月4日付。

Navigating our Humanity: Ilan Pappé on the Four Lessons from Ukraine

イラン・パッペは 1954年, イスラエル(1948年の同国「建国」以前はイギリス委任統治領パレスチナ)のハイファ生まれのユダヤ系イスラエル人歴史家で, 現在, イギリスのエクセター大学(University of Exeter)の教授。

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Israeli warplanes attacked hundreds of towers and civilian 'targets' in the Gaza Strip. (Photo: Mahmoud Ajjour, The Palestine Chronicle)

イラン・パッペのテキスト, 前文

The USA Today reported that a photo that went viral about a high-rise in the Ukraine being hit by Russian bombing turned out to be a high-rise from the Gaza Strip, demolished by the Israeli Air Force in May 2021. A few days before that, the Ukrainian Foreign Minister complained to the Israeli ambassador in Kiev that “you’re treating us like Gaza”; he was furious that Israel did not condemn the Russian invasion and was only interested in evicting Israeli citizens from the state (Haaretz, February 17, 2022). It was a mixture of reference to the Ukrainian evacuation of Ukrainian spouses of Palestinian men from the Gaza Strip in May 2021, as well as a reminder to Israel of the Ukrainian president’s full support for Israel’s assault on the Gaza Strip in that month (I will return to that support towards the end of this piece).

"I will return to that support towards the end of this piece" とある通り, ウクライナの現大統領(因みに彼はユダヤ系ウクライナ人, 参考まで)が 昨年5月のイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区攻撃の際に イスラエルを全面支持した ことに関しては, 本 note 後段で取り上げるイラン・パッペの本テキスト第4章においてあらためて言及される。

Israel’s assaults on Gaza should, indeed, be mentioned and considered when evaluating the present crisis in the Ukraine. It is not a coincidence that photos are being confused – there are not many high-rises that were toppled in the Ukraine, but there is an abundance of ruined high-rises in the Gaza Strip. However, it is not only the hypocrisy about Palestine that emerges when we consider the Ukraine crisis in a wider context; it is the overall Western double standards that should be scrutinized, without, for one moment, being indifferent to news and images coming to us from the war zone in the Ukraine: traumatized children, streams of refugees, sights of buildings ruined by bombing and the looming danger that this is only the beginning of a human catastrophe at the heart of Europe.
At the same time, those of us experiencing, reporting and digesting the human catastrophes in Palestine cannot escape the hypocrisy of the West and we can point to it without belittling, for a moment, our human solidarity and empathy with victims of any war. We need to do this, since the moral dishonesty underwriting the deceitful agenda set by the Western political elites and media will once more allow them to hide their own racism and impunity as it will continue to provide immunity for Israel and its oppression of the Palestinians. I detected four false assumptions which are at the heart of the Western elite’s engagement with the Ukraine crisis, so far, and have framed them as four lessons.

西側諸国の偽善とダブルスタンダード(イラン・パッペのテキストより) 〜 白人の難民は歓迎されるが, その他の難民は歓迎されない

イラン・パッペのテキスト, 第1章

Lesson One: White Refugees are Welcome; Others Less So
The unprecedented collective EU decision to open up its borders to the Ukrainian refugees, followed by a more guarded policy by Britain, cannot go unnoticed in comparison to the closure of most of the European gates to the refugees coming from the Arab world and Africa since 2015. The clear racist prioritization, distinguishing between life seekers on the basis of color, religion and ethnicity is abhorrent, but unlikely to change very soon. Some European leaders are not even ashamed to broadcast their racism publicly as does the Bulgarian Prime Minister, Kiril Petkov:
 “These [the Ukrainian refugees] are not the refugees we are used tothese people are Europeans. These people are intelligent, they are educated people. … This is not the refugee wave we have been used to, people we were not sure about their identity, people with unclear pasts, who could have been even terrorists…”
He is not alone. The Western media talks about “our kind of refugees” all the time, and this racism is manifested clearly on the border crossings between the Ukraine and its European neighbours. This racist attitude, with strong Islamophobic undertones, is not going to change, since the European leadership is still denying the multi-ethnic and multicultural fabric of societies all over the continent. A human reality created by years of European colonialism and imperialism that the current European governments deny and ignore and, at the same time, these governments pursue immigration policies that are based on the very same racism that permeated the colonialism and imperialism of the past.

西側諸国の偽善とダブルスタンダード(イラン・パッペのテキストより) 〜 イラクを侵略することはできるが, ウクライナを侵略してはいけない

イラン・パッペのテキスト, 第2章

Lesson Two: You Can Invade Iraq but not the Ukraine
The Western media’s unwillingness to contextualize the Russian decision to invade within a wider – and obvious – analysis of how the rules of the international game changed in 2003 is quite bewildering. It is difficult to find any analysis that points to the fact that the US and Britain violated international law on a state’s sovereignty when their armies, with a coalition of Western countries, invaded Afghanistan and Iraq. Occupying a whole country for the sake of political ends was not invented in this century by Vladimir Putin; it was introduced as a justified tool of policy by the West.

欧米諸国の連合軍によるアフガニスタンやイラクに対する侵略において, アメリカとイギリスは国家の主権に関する国際法に違反していた。 政治的目的のために他国全体の占領を図ることは, 何もプーチンが今世紀に発明したものではなく, 既に西側諸国によって, 政策遂行において「正当化される」ツールとして導入されていたものなのである。

西側諸国の偽善とダブルスタンダード(イラン・パッペのテキストより) 〜 ネオナチは時と場合によって許容される: ウクライナにおけるネオナチの存在の深刻さと隠蔽

イラン・パッペのテキスト, 第3章

Lesson Three: Sometimes Neo-Nazism Can Be Tolerated
The analysis also fails to highlight some of Putin’s valid points about the Ukraine; which by no means justify the invasion, but need our attention even during the invasion. Up to the present crisis, the progressive Western media outlets, such as The Nation, the Guardian, the Washington Post etc., warned us about the growing power of neo-Nazi groups in the Ukraine that could impact the future of Europe and beyond. The same outlets today dismiss the significance of neo-Nazism in the Ukraine.

またメディア(主として西側のメディア)は, プーチンのウクライナに関する「正当な」(有効な, 事実が含まれた)指摘についても強調することを怠っている。プーチンのその指摘によっても勿論, 決してロシアによるウクライナ侵略は正当化されるものではないが, しかしこのことは, このロシアによるウクライナ侵略の最中においても注意が払われるべきものである。すなわち, 現在の危機に至る前までに, The Nation, The Guardian, the Washington Post などの西側の進歩的なメディアは, ウクライナで ネオナチの複数のグループが勢力を伸ばしており, ヨーロッパやその他の国々の将来に深刻な影響を与える可能性があると警告していたしかし今日, その同じメディアが, ウクライナのネオナチの存在の重要性を否定しているのである。

The Nation on February 22, 2019 reported:
 “Today, increasing reports of far-right violence, ultra nationalism and erosion of basic freedoms are giving the lie to the West’s initial euphoria. There are neo-Nazi pogroms against the Roma, rampant attacks on feminists and LGBT groups, book bans, and state-sponsored glorification of Nazi collaborators.”
Two years earlier, the Washington Post (June 15, 2017) warned, very perceptively, that a Ukrainian clash with Russia should not allow us to forget about the power of neo-Nazism in the Ukraine:
 “As Ukraine’s fight against Russian-supported separatists continues, Kiev faces another threat to its long-term sovereignty: powerful right-wing ultra-nationalist groups. These groups are not shy about using violence to achieve their goals, which are certainly at odds with the tolerant Western-oriented democracy Kiev ostensibly seeks to become.
However, today, the Washington Post adopts a dismissive attitude and calls such a description as a “false accusation”:
 “Operating in Ukraine are several nationalist paramilitary groups, such as the Azov movement and Right Sector, that espouse neo-Nazi ideology. While high-profile, they appear to have little public support. Only one far-right party, Svoboda, is represented in Ukraine’s parliament, and only holds one seat.”
The previous warnings of an outlet such as The Hill (November 9, 2017), the largest independent news site in the USA, are forgotten:
 “There are, indeed, neo-Nazi formations in Ukraine. This has been overwhelmingly confirmed by nearly every major Western outlet. The fact that analysts are able to dismiss it as propaganda disseminated by Moscow is profoundly disturbing. It is especially disturbing given the current surge of neo-Nazis and white supremacists across the globe.”

ウクライナには確かにネオナチが存在する。このことは, 西側のほぼ全ての主要な報道機関によって圧倒的に(疑いのないものとして)確認されている。アナリストがそれを モスクワが流布したプロパガンダだと片付けてしまうのは, 極めて憂慮すべきこと である。とりわけ, 現在, 世界中でネオナチや白人至上主義者が急増しているということを踏まえれば, なおのこと 憂慮すべき深刻な事態なのである。」

西側諸国の偽善とダブルスタンダード(イラン・パッペのテキストより) 〜 高層ビルへの攻撃は欧米圏内で行なわれた時のみ「戦争犯罪」とされる: ウクライナの体制はネオナチと関係があるだけでなく深刻なまでに親イスラエル

イラン・パッペのテキスト, 第4章

Lesson Four: Hitting High-rises is only a War Crime in Europe
The Ukrainian establishment does not only have a connection with these neo-Nazi groups and armies, it is also disturbingly and embarrassingly pro-Israeli. One of President Volodymyr Zelensky’s first acts was to withdraw the Ukraine from the United Nations Committee on the Exercise of the Inalienable Rights of the Palestinian People – the only international tribunal that makes sure the Nakba is not denied or forgotten.
The decision was initiated by the Ukrainian President; he had no sympathy for the plight of the Palestinian refugees, nor did he consider them to be victims of any crime. In his interviews after the last barbaric Israeli bombardment of the Gaza Strip in May 2021, he stated that the only tragedy in Gaza was the one suffered by the Israelis. If this is so, then it is only the Russians who suffer in the Ukraine.

現ウクライナ大統領は パレスチナ難民の苦境に同情もしなければ, 彼らをいかなる犯罪の犠牲者だとも思っていない。2021年5月, イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区に対する野蛮な爆撃直後のインタビューにおいて, 彼は, ガザでの唯一の悲劇はイスラエル人が被ったものだと述べている。 もしそうであれば, ウクライナで苦しんでいるのはロシア人(つまり「攻撃した」側, 「侵略した」側)だけだということになってしまうではないか。

But Zelensky is not alone. When it comes to Palestine, the hypocrisy reaches a new level. One empty high-rise hit in the Ukraine dominated the news and prompted deep analysis about human brutality, Putin and inhumanity. These bombings should be condemned, of course, but it seems that those leading the condemnation among world leaders were silent when Israel flattened the town of Jenin in 2000, the Al-Dahaya neighborhood in Beirut in 2006 and the city of Gaza in one brutal wave after the other, over the past fifteen years. No sanctions, whatsoever, were even discussed, let alone imposed, on Israel for its war crimes in 1948 and ever since. In fact, in most of the Western countries which are leading the sanctions against Russia today, even mentioning the possibility of imposing sanctions against Israel is illegal and framed as anti-Semitic.

ここで イラン・パッペは「しかしゼレンスキー(現ウクライナ大統領)だけではない。パレスチナ(パレスチナ/イスラエル問題)のことになると, 偽善 は新たなレベルに達するのだ」として, その幾つかの例を挙げ, そのうえで, 「1948年以来イスラエルが犯してきた戦争犯罪に対して, 制裁はもちろんのこと, いかなる議論さえ行なわれなかった。実際, 今日, ロシアへの制裁を主導している西側諸国のほとんどでは, イスラエルに対する制裁を課す可能性に言及することさえ違法であり, 反ユダヤ主義の濡れ衣 を着せられてしまうのだ」と述べている。

関連 note 3点。

1) イスラエル批判、反シオニズム、BDS を 「反ユダヤ主義」 と見做す思考の、度し難い愚かさ

2) イスラエル批判を「反ユダヤ主義」として封じようとすることの度し難い愚かさ

3) イギリス/イスラエルの学者が イスラエル批判を沈黙させる IHRAによる「反ユダヤ主義」定義の拒否を呼びかけ

さて, イラン・パッペのテキストはさらに続く。

Even when genuine human solidarity in the West is justly expressed with the Ukraine, we cannot overlook its racist context and Europe-centric bias. The massive solidarity of the West is reserved for whoever is willing to join its bloc and sphere of influence. This official empathy is nowhere to be found when similar, and worse, violence is directed against non-Europeans, in general, and towards the Palestinians, in particular.

西側諸国において真っ当な人道主義的, 人間的連帯が ウクライナに対して正当に表現されたとしても, その人種差別的な背景ヨーロッパ中心主義の偏りを見過ごすわけにはいかない。西側諸国の強力な連帯は, そのブロックと影響圏に加わることを望む者すべてに留保されている。このような公式の共感は, 一般的に非ヨーロッパ人, とりわけパレスチナ人に対して同様の, そしてより苛烈な暴力が向けられたときには, (西側諸国の)どこにも見いだすことができない。

We can navigate as conscientious persons between our responses to calamities and our responsibility to point out hypocrisy that in many ways paved the way for such catastrophes. Legitimizing internationally the invasion of sovereign countries and licensing the continued colonization and oppression of others, such as Palestine and its people, will lead to more tragedies, such as the Ukrainian one, in the future, and everywhere on our planet.

私たちは良心を持つ人間として, 惨禍への対応をしつつ, 一方で そのような大惨事を招いた 偽善を指摘する責任 を果たすこと, その両者の間を行き来することができるのだ。主権国家の侵略を国際的に正当化したり, パレスチナとパレスチナ人が受けているような他者への継続的な植民地化と抑圧を許してしまうことは, 将来, そしてこの地上のあらゆる場所で, 今日ウクライナで起きているような悲劇を さらに引き起こすことになるだろう。

筆者, イラン・パッペについて(記事の末尾から)

- Ilan Pappé is a professor at the University of Exeter. He was formerly a senior lecturer in political science at the University of Haifa. He is the author of The Ethnic Cleansing of Palestine, The Modern Middle East, A History of Modern Palestine: One Land, Two Peoples, and Ten Myths about Israel. Pappé is described as one of Israel’s 'New Historians' who, since the release of pertinent British and Israeli government documents in the early 1980s, have been rewriting the history of Israel’s creation in 1948. He contributed this article to The Palestine Chronicle.

イラン・パッペが 1954年に生まれた ハイファ 〜 1983年秋, 3週間にわたる パレスチナ/イスラエル の旅のなかで滞在したことがある

以下, note 2点。

1) ハイファ(48イスラエル, 47イギリス委任統治領パレスチナ)への旅 〜 1983年10月4日

* 2021年10月6日 投稿

目次
1. 1983年4月26日に日本を発って, 9月28日からパレスチナ/イスラエル 〜 ここまでの振り返り
2. ハイファで会ったアラブ人(パレスチナ人)の老人 〜 1983年10月4日
3. 1983年10月4日, 「48イスラエル」の都市 ハイファ で見つけた, 「バルフォア・ストリート」 〜 1917年11月のバルフォア宣言 の「バルフォア」, その宣言(当時のイギリス政府によるシオニズム支持表明, イギリス三枚舌外交の一つ)をした主であるイギリスの外務大臣アーサー・バルフォアの「バルフォア」
4. ああ! 疲れる! Heavy だ!
5. "A little love and affection in everything you do, will make the world a better place, with or without you" 〜 'Falling From Above' (Neil Young) ♫

2) ハイファ(48イスラエル, 47イギリス委任統治領パレスチナ)に戻って 〜 1983年10月5日

* 2021年10月8日 投稿

目次
1. 「48イスラエル」, 「47イギリス委任統治領パレスチナ」
2. パレスチナ/イスラエル問題 概観 〜 2021年の今も続く(注:2022年の今も続いている)パレスチナ人の悲劇, 「ナクバ」
3. 『ハイファに戻って』 を書いたのは, イスラエルの諜報機関に暗殺されたパレスチナ人作家 ガッサン・カナファーニー
4. ハイファに戻って あらためて考えた, 1983年10月5日 〜 市庁舎の近くにはなんとヘブライ語と英語とご丁寧にもアラビア語併記で「ハイファ解放 1948」
5. ここまでの振り返り 〜 1983年4月26日に 日本を発って, 9月28日から パレスチナ/イスラエル
6. 早く家に帰りたい, と当時 思ってはいなかったけれど 〜 『早く家に帰りたい』(Simon & Garfunkel, Paul Simon & George Harrison), 歌詞和訳


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