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好きな人に似ている芸能人が出ている番組を録画した時代

私は小中学生の頃、ナイナイの岡村隆史さんのファンだった。
好きな芸能人を問われれば、「ナイナイの岡村。」と言っていた時期があった。

 
当時、ナイナイは週にいくつもいくつもレギュラー番組を持っていたので
私は全て録画した。
ナイナイのお笑いライブ映像や岡村さん主演映画「無問題」は親戚からもらって見たし
ナイナイの本を読み
ナイナイのプレステゲームをプレイした。

 
「お前は本当にサル顔が好きだよな。」

  
私と男性の趣味が異なる姉は、半ば呆れるように岡村岡村言っている私に呟いた。

 
私がナイナイの岡村に惹かれた理由は
当時好きだった人に岡村が似ていたからだ。
外見も性格も似ていた。

好きな人がきっかけで岡村ファンになったが
岡村に好きな人を重ねている部分もあるし
好きな人関係なく岡村に惹かれた部分もある。

 
今まで人を好きになったことはあった。
だが、病的なまでに惹かれた恋は 
A君が初めてだった。

 
 
 
 
A君と初めて会ったのは、小学校四年生の春だった。
A君は転入生だった。

目力が強く、坊主で、活発で面白い男子だった。

「転校したくなかった。前の学校がよかった。」と何度も口にしていたし
新しい環境やクラスに馴染もうと必死だったのだと思う。

 
A君とは男女みんなでバカ騒ぎをする仲だった。

姉が指摘したように、私はどうやらサル顔が好みらしく
A君をイケメンとは思わなかったが、好みだとは思った。

A君はスポーツも勉強もできたし
明るく面白くもあるが
目力が強く、芯が強かったり
目の奥に影があることもあった。
健康で、冬場も半袖で過ごしていた。

そんな全てにいちいち惹かれた。

 
気づけば私は、A君を好きになっていた。

 
 
A君が好きな私は、小学校では彼とふざけたり、しゃべって過ごし
家に帰れば彼のイラストを描いたり
日記に彼のことばかりを書いた。

A君は野球部だった。

私は漫画を見ながら野球のシーンをよく絵に描いていた。
スポーツなら、野球部の絵を描くのが一番上手い。
それは紛れもなく、A君の印象だった。

 
当時仲が良かった友達はA君ちの近くに住んでいたので
友達の部屋からA君ちを眺めたり
友達と遊びながら
偶然A君に会えないかを期待した。
露骨に、友達んちの犬散歩を一緒にする時
A君ちの周りを通ったりした。

 
完全にストーカーである。

 
燃え上がった私は止まらず、A君手帳まで作った。

身長、体重、趣味、好きな色、好きなアーティスト、好きな曲等を
聞いたり、調べたりして
私は手帳にまとめた。
手帳はサルの模様であり
私はA君が好きになり、サルモチーフのものをやたら使うようになった。

 
もう、どうにも止まらなかった。

 
 
遠足時はこっそり隠し撮りをして
夜な夜なその写真を見てはニヤニヤし
夢で会えるように枕元に置いた。

友達がA君と同じ町内のため
町内会の行事写真を横流しでくれた。

 
私はA君の写真を部屋に飾り
枕元に置き
A君専用のアルバムまで用意する始末だった。

 
もはや好きなんだか、ファンなんだか分からないが
今までの恋にはないほどの熱量が凄まじかった。

  
A君がナイナイの岡村に似ているからと録画をし始めたのもこの頃だ。
A君が好きなアーティストをたまたま従兄弟が好きだったので
アルバムを録音してもらい
自宅で聞き、話のネタにもしていた。

 
以前、noteにもちょろっと書いたことがあるが
人生で初めて私の顔面を殴ったのがA君だ。
わざとではなく、ふざけていたはずみでぶつかってしまったのだが
その際私は鼻血が出た。
人生初鼻血はその時だった。

  
人生初鼻血がA君によるもの!

  
と、私はむしろ嬉しかった。
本当に病的なまでにA君が好きだった。

 
 
バレンタインデーでは、手作りチョコを渡した。

だが、渡した際はA君にだけではなく、周りにも渡したし
まだA君は恋とか好きとか私が病的だとは知らず
渡したからといって変わらなかった。

 
宿泊学習や修学旅行では堂々と写真撮影を頼んだら快く撮らせてくれたし
私はA君の優しさに、完全に図に乗っていた。

 
 
そんなある日、事件が起きたのである。

クラスメートが私の恋を応援しようと、野球部の練習中にA君の写真撮影に行ったらしい。
私が頼んだわけでもないし、私はその場にいたわけでもないが
A君はそのことに完全にブチ切れ
私はその日を境に無視され、冷たくされるようになった。

 
私が直接友達に頼んだわけではないが
私の存在や恋心のせいで
練習を邪魔したのは事実だし
現場は見ていないから分からないが
恐らく、周りから冷やかされたりと嫌な思いをしたのだろう。

  
なんせ、その日を境に無視されだしたので
その辺の話さえできない。
ただ、私が指示したと思い込んでいるらしいと噂では聞いた。

写真撮影をした友達複数が「ごめん。」と私に謝ったが
謝る相手は私より彼だし、部活の人だ。
そして友達は私を思って写真撮影したし、悪気がないのは分かるし
今更何をしてもA君とは関係修復ができるはずもなく
時間だけは過ぎていった。

 
卒業前にプロフィールカードを渡せば破られ
グループワークをすれば冷たい目でつっけんどんにされ
みんなでわいわい集まっていても
私の姿を見ると、不機嫌になってA君は輪から離れていった。

 
笑い合い、ふざけ合っていた日が遠い幻のようだった。
私は毎日のように泣いていた。

 
今まで友達とケンカをしても、すぐに仲直りできた。
だけど、今回の件に関してはどうしようもなかった。
完全に嫌われたのだ。

 
それほどまでに好きな人に不快な気持ちを与えてしまい
ただただ申し訳なかった。
私の存在も恋心も、私にとってさえ邪魔でしかなかった。

 
好きな人との両想いなんて夢の夢だし
私はA君と付き合いたかったわけではない。

ただ、A君のそばにいて笑い合っていたかっただけなのだ。

 
好きな人に全身で拒絶され、嫌われる辛さを味わったのは
この小学校六年生の時が初めてだった。

 
 
  
関係修復はできないままやがて小学校を卒業し
私達は中学生になった。

幸いにもクラスは離れた。
私はどこかでホッとした。

同じクラス内で露骨に避けられるのはもう勘弁だった。

 
私の恋心は冷めず、中学生になってもA君が好きだった。
A君を遠くから見つめ、想い続けていた。
私のA君好きは他の小学校出身の人にも有名で
それがきっかけで話しかけられたり
からかわれたり
友達になったりもした。

 
 
中学二年生になり、私は相変わらずA君と別々のクラスだった。

クラス替えにより、私には新しい友達ができた。ジャニオタの友達だ。
ジャニオタの彼女は私にジャニーズJr.について布教した。

まだ松潤や二宮君がジュニア時代の時で、友達が言っていたジュニアが
後に次々とグループとしてデビューした様を見て興奮した。

 
「誰が好み?」

 
と、友達からJr.図鑑を渡されて、ふんふん言いながらページをめくったり、ジャニーズのビデオを見せてもらい、私はある人に出会った。

上里亮太君である。

 
上里亮太君はジャニーズの某有名グループのバックダンサーをしていて
やや大振りなダンスや笑顔がA君にどこか似ていた。
 
 
私「この、右端でダンスしてる子!誰これ?」

 
友達「上里亮太君だね。」

 
Jr.図鑑に、上里亮太君もしっかり載っていた。
私はその場で名前を覚えた。

 
 
私は上里亮太君がバックダンサーをしていたビデオ(多分Mステ)を
繰り返し繰り返し見た。
なんせバックダンサーなので、たまにしかカメラは上里君を映さない。
何回も見るたびに、何分何秒目に上里君が映るかも覚えた。

 
周りが松潤だとか二宮君だとか渋谷すばる君だとか山Pだとか滝沢君だとかのジュニアにキャーキャーしていた頃(彼等はまだジュニア時代)
私は一人、上里亮太君を推していた。
まだ知名度は低く、周りから誰それ扱いをされた時は悔しかった。

ジャニオタの友達複数人だけは優しく
私に上里亮太君の切り抜きをくれた。
推しかぶりしていなかったのである。
ありがたい。

 
 
そんな中、上里君の知名度が上がる出来事が起きる。

連ドラのレギュラー出演が決まったのである。

「青い鳥症候群」というドラマで
主演は安達祐実であり、安達祐実の幼馴染みの男の子役である。
主題歌はL'Arc-en-Ciel。

 
当時、「ラルク派?GLAY派?」という会話が定番だったくらい
ラルク人気は急上昇していた。

 
主演安達祐実!
主題歌ラルク!
これは当たるぞ!

上里亮太君がついに有名になるぞ!!!

 
私はジャニオタの友達と盛り上がった。
友達は「連ドラレギュラーはすごい!おめでとう!」と、まるで私が出演するかのごとく言ってくれた。
レギュラーは当時の活躍からしたら
私からしたらビッグニュースなくらいの大抜擢だったし
とても嬉しかった。

 
「私はジュニアなら上里亮太君が好き。」と言った時
今までは誰それ扱いを受けたが
このドラマ後は「ドラマで安達祐実の相手役の男の子!ラルク主題歌のドラマ!」と布教できた。

ドラマはもちろん、全て録画した。

 
 
そんな中、やがて私はA君への恋心を揺るがすことが二つ起きた。

一つはA君に彼女ができたこと、もう一つはA君がバンドを始めたことである。

 
A君の彼女は小柄でかわいらしい女の子。
私の目から見てもかわいい。

女子人気や評判は人により、優しい、裏がある、あざとい、といった感じだった。
私はその子と小学校が違い、クラスも違い、部活も異なった為
ほとんど話したことはなかった。

A君から告白したらしく
二人が一緒に帰る姿をよく見掛けた。
楽しそうにA君と彼女が笑う。

あんな笑顔を私は見たことがなかった。
いや、私はそれどころか今は挨拶さえできない間柄になってしまった。

 
帰りはたびたび、その二人と一緒の時間になった。
彼等の後ろ姿を見ては
くるっと引き返し、私は別ルートで帰ったりしていた。

 
 
ちょうどA君が付き合い出した頃、A君は部活をサボり、ギターに夢中になった。
当時、A君は野球部だったが、ルール違反な行動が目立ち、退部になった。

 
 
A君はどんどんヤンチャ系になった。

彼女もどんどん強気になっていき、素行の悪さや態度の悪さから二人の評判は悪くなっていった。

 
私は彼女ができたから諦めなきゃいけないと強く思った。

そして何より
反抗をかっこいいとするA君も
そんなA君にまんまと影響を受けてヤンチャ系になる彼女も
反抗をするA君をかっこいいとする彼女も
私はいいとは思えなかった。

 
気持ちは徐々に徐々に下がっていった。

 
 
小学校四年生から始まった恋は、こうして中学二年生で終わりを告げた。

私の人生で一番長い片思いが、A君だった。

 
 
そのA君がきっかけで気になったナイナイの岡村や上里君だったが
恋心を失っても、私は彼等のファンのままだった。

 
だが、やがて私はポルノグラフィティに大ハマりし
それと共にナイナイや上里君への熱は冷めていった。

 
そして今もなお、ポルノグラフィティの熱は冷めないまま
ファンクラブに入って応援している。

 
 
 
A君は中学三年生の時に文化祭でバンドを組み、発表した。

私はそのバンドを見に行った。
野球部を辞め、素行が乱れてまで情熱をかけるバンドやギターとやらを見てみたかった。

 
だが、特にときめくことはなかった。
バンドや演奏が荒削りなのは仕方ないとして
心意気やポリシーや思い入れが弱いと感じた。

 
なんだ、こんなものか。
野球を辞めて生活が乱れてまでのめり込んでこの程度か。

 
私は確かに、落胆したのを覚えている。
もうA君の彼女に羨ましさも何も感じないほど
心は冷めていた。
 
 
その時、他に好きな人ができていた私は
次の恋に夢中になっていた。
A君とはまたタイプの違う人で、一緒にいると楽しかった。

次に好きになった人はクラスメートも好きで
私達は三角関係だった。
だが、その好きな人は別のクラスメートが好きで
正確に言えば四角関係だった。

まるでドラマの相関図のような恋だと思った。


 

 
私が好きな人にストーカーもどきをしたり
好きな人に似ている芸能人に夢中になっていた頃
かわいい子は中学生になり、よりかわいらしくなっていた。
かわいい子は気持ち悪いことをせず
普通にかわいがられた。
そして、順調に男子から告白された。
自分から告白しまくり、フラれている私とは大違いだ。

かわいい子が羨ましかった。
私もかわいくなりたかった。

中学時代、先生も男子も明らかにかわいい子に優しかった。
付き合いだした人もちらほらいた。

 
私はヒロインにはなれない。
かわいくない私は、他の女子とは違う。

恋愛体質ではあったけど
私は容姿も性格もかわいくなくて
男子ウケしないと自分か一番分かっていた。

 
私は女芸人のようなポジションだった。
みんなを笑わせて、そんな自分が好きではあったけど
【女】としてはダメなんだと分かっていた。

 
恋愛面において、私は女として自信が全くなかった。
そんな10代の若かりし頃。

 
 
 
未来を伝えるわけにはいかないから言えないが
あの頃の私が聞いたらビックリするだろう。

あなたにはやがて、ちゃんと両想いの初彼ができる。
優しくてイケメン(一般的にはイケメンではないが、私からしたら、めちゃくちゃかっこよくて好み)の初彼ができる。

 
そして別れるが、次の彼氏はお医者さん。
あなたは医者と付き合う未来が待っているんだよ。彼は人情家であなたを大切にしてくれる。

 
更に、次の彼氏はイケメンだ。
すごいイケメンだし、女心が分かって優しい。
ただし、女癖が悪くてめちゃくちゃ苦労する。

そんな中、あなたはほぼ同時に三人から告白されるという
人生初モテ期がやってくる。
あなたは20代後半からモテ期突入するんだよ。

 
 
こんな未来、中学時代の私に言っても、きっと信じてもらえないだろうな。

 
 
「実はさ~20代になったら彼氏はできるわモテ期は来るわで色々あるんだけど、まさに色々あって、30代になっても結婚できていないんだわ。ごめんね。」

これを伝えたら中学時代の私は落胆しそうだから
例えタイムマシンがあっても
絶対に言えないな。

 
人生何が起きるか分からない。
5年後の私に今は会いたいよ。

5年後、私は仕事をちゃんとしているかな。
恋や結婚はどうなっているのだろう。







 







 

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