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はるか/宿野かほる

あらすじは以下の通りだ。

 
賢人は小さな頃、海岸で一人の少女と出会い恋に落ちる。彼女の名前ははるか。

大人になり偶然再会した二人は結婚するが、幸せな生活は突如終わりを告げた。

それから月日は経ち、賢人は人工知能の研究者として画期的なAIを発明。「HAL-CA」と名づけられたそのAIは、世界を一新する可能性を秘めていたー。

 
 
前作の「ルビンの壺が割れた」も読む手が止まらなかったが
今作は更に読む手が止まらず
先が気になって寝不足になった。

 
用事の合間に購入して少し読み
色々終わらせ、22:45から続きを読んだわけだが
そろそろ寝なきゃ…というところでまだ読み終わっていなく
だがオチが気になる私は
最後のエピローグだけ先読みしたのだ。

 
そこには予想外の展開とオチが書かれており
私は「え?は?え?え?えぇぇえ!?」と一人困惑し
布団をかぶった。

 
だが
すっかり興奮した私はなかなか夜寝つけず
早く先を読みたいという気持ちが先行し
次の日も早起きしてしまうという始末だった。

 
賢人がHAL-CAに夢中になるように
私は「はるか」に夢中になってしまった。

読み終わり
今こうして感想を書かずにはいられない。

 
 
運命の人との再会や結婚の幸せが
あっという間になくなり
またはるかに会いたいと願う賢人の気持ちは分かる。

亡くなった人と何らかの形でまた話したいと願うのは自然なことなのだ。

 
ただ、昔から死者を蘇らせようとする者には大抵罰が与えられる。

賢人もそうだったのだろう。
オチはあまりにも切なく、寂しいものだった。

 
賢人は賢すぎた。
HAL-CAに全てを与えすぎた。
その先にあったのが
あのオチなのだろう。

それでも誰を責められるだろうか。
愛する気持ちを、再会したい気持ちを、誰が責められるだろうか。

 
ジオードの水は手の届かない幻で理想なのだ。
それを後半、HAL-CAが口にした時、なんとも言えない気持ちになった。

 
賢人は生前、はるかが好きすぎて
結婚後、はるかとのやりとりを記録していた。
はるかの声や会話を小まめに録音していたのだ。
そしてそれをラジオ代わりに繰り返し聞いていた。

映像も残したいと、裸での姿さえ撮影していたようだ。

 
賢人は研究者としては立派で、天才だが
愛する人に対しては一歩間違えばストーカー並な言動が目立つ。狂っている。

でもそれを良しとしたはるかもある意味では狂っている。
お互い様だったのだろう。

 
私もかつて好きだった人のメールをノートに写したり
印刷にかけて繰り返し読んだりもした。
好きな人からもらったものは大切に保管していた。

私も好きすぎるとストーカーに近い行動に出た。

だから私も狂っている。

好きすぎると
人は狂う。

 
だからほどよく好きな人の方が
結婚生活は上手くいくのかもしれない。

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