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今年一番大きなイベントで販売した日

いよいよこの日が来た、と思った。

今までで一番大きなイベントでの販売。

 
事前に二時間に及ぶ説明会に参加した際
資料は30ページ以上に及んた。
それからも資料はメールや郵送で送られてきたり
変更点があったりで
最終的には資料は50ページ以上に及んだと思う。

 
会場の下見にはまず新施設長が行き、別日に私と事務長が行った。

 
二転三転する話や担当者の素っ気ない対応や新施設長からの要望
提出書類の量に疲れる日々だった。

 
でも、一緒に勤務するリーダーが準備をするだけして
「あとは当日にならないと分からないから、その時にやってみましょう。」と言ってくれたのが救いだった。

 
職場で一番信頼しているリーダーと一緒なのは
とても心強かった。
一緒に販売に行くのは一年ぶりだ。

 
 
当日は晴天だった。

 
交通規制がある為、集合時間はいつもよりだいぶ早い。
何時に職場に行けるか分からず
私は自宅を早めに出た。結果的には50分も早く着き、車内でリーダーを待った。

 
この日は交通規制がある上、駐車許可証がある車しか現地には行けない。
遅れたら終わりなのだ。リーダーに迷惑をかけるわけにはいかない。だから早く着きすぎるくらいでよかった。
どうせ誰よりも早く職場に着くリーダーは早めに来るのだ。

 
しばらくしてリーダーが到着した。今日も素敵で胸がキュンとなる。
二人で雑談しながら仕事をしながら利用者を待つ。
利用者も朝が早い集合だったが
みんな早起きを頑張っていた。
保護者は保護者で交通規制を警戒し、早めに来てくれたようだった。

 
利用者が時間通りに来た。
もうそれだけで全員の頭を撫でて、ハグしたい。エライ。

 
荷物を積めて車に乗る。
交通規制のため、遠回りで会場を目指す。
渋滞が予想されたが、無事早めに着いた。
おびただしい警備員や係の数だ。

 
指定された駐車場に車を停め、荷物を降ろす。
なお、たまたま隣に駐車した方がポルノグラフィティのTシャツを着ていて、私は「あ!」となった。
こちらが荷物を降ろしている間に行ってしまわれて、声がかけられずに残念だ。

 
みんなで台車に荷物を乗せ、売り場を目指す。
駐車場から会場までがなかなか遠い。
日差しは更に強くなる。

 
今日は専用のIDカードを持っていて、身分証明書がある人しか入れない。
検温、消毒、IDと身分証明書確認をし、更に荷物チェックをしてから入口を抜ける。

 
更に歩くと、今日の売り場に着いた。
周りの福祉施設の方々に挨拶をする。
今日は福祉施設と一般企業を含めて100~200の出店らしい。

 
既に周りでは準備を始めていた。

私達も準備を開始する。
思ったよりも売り場が狭く、想定していた以上に製品が並べられず、ディスプレイの変更をするしかなかった。

 
私とリーダーは気が合う。

二人で意気投合して、今日はこういうディスプレイにしよう、と決めるや否や
リーダーがパパパパパッと準備し
利用者にもこれを手伝ってほしい、と伝える。
相変わらずリーダーはさすがリーダーだ。

 
さて、ここで予想外のことが起きる。

売り場の風が全く通らないのだ。
  
 
どうやらコロナ対策が最優先で仕切りが分厚く、熱中症対策は二の次のようだった。

 
なんとか準備は頑張った利用者だったが
販売が始まる前に暑さで座り込んでしまった。
それは分かる。
私も職員でなかったら、仕事でなかったら座りたい気分だった。
滝のように汗が流れ、ペットボトルを一気に飲み干す。

 
暑い中マスクを外せないので、それもまた苦しかった。
最高気温30度だったのだ。

 
イベントが始まる前に、各店舗代表者が事前打ち合わせに参加とのことで
私は参加した。
こういった打ち合わせをしていると
いよいよだ、という気持ちが更に高まる。

 
最初はサッパリだったが、午前中はお客様がたくさん来た。
今日会場には1、2万人のお客様がいるという。
利用者と飲み物を買いに行ったり、トイレに行く時にチラ見をすると
場内はものすごい人で、入場口は規制さえしていた。

 
私とリーダーが二手に分かれて会計をしたり
一人でいくつも買っていく方も多く
バタバタしてう。

 
そんな中、両親が来た。
両親はメインステージを見に来たのだ。

 
私はリーダーに両親を紹介し
私は両親にリーダーを紹介した。

母は記念に写真を撮ってくれた。

「他のお店も見てくるね。」と、両親は去った。
ちょうど他にもお客様が来ていたので気を遣ったようだった。
のちにリーダーが「家族と仲がいいですね。明るいお母様で。」と言った。

 
そんなこんなでバタバタしていたが
午後からステージで催しものがあるため
一気に一般客がいなくなった。

 
「先にお昼を食べていいですよ。」

と、リーダーが言い
お言葉に甘えた。
無理矢理おにぎりを食べたが
あまりの暑さに体はバテ、食べるより冷たいものを浴びるほど飲みたかった。
だが、まだ後半戦が残っていると思うと
無理矢理にでも食べないとバテる。

 
私はサッサと食べてリーダーに休憩を交代しましょうと話したが
リーダーは私以上にサササッと食べ、販売に戻った。
そして

「今のうちに周りの様子を見てきてください。今後の参考になりますから。
買い物もしていいですよ。俺は買いたいものないので大丈夫です。」

そう言った。

リーダーはそういう人なのだ。

 
お言葉に甘えて、他店の様子を見つつ、買い物をした。
そんな時に母親からLINEが入り、「飲み物を差し入れしてほしい。とりあえずともかが建て替えて。」と書いてあり、私は飲み物を人数分買って戻った。

 
その日の午後、上空にはブルーインパルスが飛んだ。
青空の下、みんなが一斉に見上げる。

 
勇敢で立派なブルーインパルス。

「写真、撮れたよ。」と利用者は嬉しそうに笑った。

 
前日は予行練習で
作業をしている中、ブルーインパルスの音が鳴るたびにいちいち外に出て
みんなでブルーインパルスを探した。

 
私はたまたま見られたけど
ほとんどの利用者が作業を優先した為、見られなかった。
一緒に販売に行った利用者は悔しがり、今日ブルーインパルスを見ることを楽しみにしていた。

 
コロナ禍で、暗いニュースが続き、制限も多く
もどかしさを抱えながら生きている私達に
ブルーインパルスは確かに希望を届けてくれた。

 
見事な飛行だった。

 
 
時間になり、片付け、私達は会場を後にした。
リーダーは準備の時と同じように
一番重い荷物を持ち
片付けを誰よりも手早にやっていた。

 
周りのお店よりも早く会場を後にしたが
会場周りは渋滞で
施設に戻るまでにいつもの倍の時間がかかった。

 
利用者は私の肩にもたれて寝ていた。
重いけれど、幸せな重みだ。
起こさないように気をつけた。

 
施設に戻ってから売上を確認すると
今年一か二の売上で驚いた。

暑い中、頑張ったかいがあった。

 
周りの施設の話を聞くと
うちの施設は売上がいい方だったと思う。

いつもは保護者や施設関係者がたくさん来てくれるが
今日は入場制限があった為
施設関係者はみんな来られなかった。

 
だから純粋に
うちの施設の製品を気に入った方が買ってくれたと思うと嬉しかった。

 
中には一万円以上買ってくれた方もいた。
「かわいい、かわいい。」と言ってたくさん買ってくれて嬉しかった。

 
「お姉さん、(セールストークが)上手いね。」と言った方もいた。
雑談の後、3000円分も買ってくれて嬉しかった。

 
中でも、一番印象的なお客様は、あるボランティアの方だった。

 
午後になり、メインステージにお客様がほとんど異動すると
入れ替わりでボランティアの方々が買いに来てくれた。

その中の一人は、バッグにあるバッジをつけていて、思わず私は声をかけてしまった。

「あの、そのバッジはどこかでもらったんですか?」

 
「ボランティアの人はみんなもらったんです。かわいいから、早速バッグにつけちゃいました。」

 
「それ……うちの施設が作ったんです。」

 
「え!?」

 
「正確には、たくさんの施設が関わっていますから、そのバッジを私達の施設が絶対作ったかは分かりません。
ただ、春ぐらいに納品して、私達はそれっきり見ていません。だから……かわいいと言ってくださり、身につけてくれて嬉しいんです。それで思わず声かけちゃいました。」

私は嬉しかった。
大量にそのバッジを納品した際も色々あって嫌な思いもしたが
今それを上回る幸せがあった。

 
帰り道も混んでいたらしく
保護者の方はやっとの思いで施設に迎えに来た。

無事に帰ってほしい。
一日お疲れ様でした、と伝える。

あの暑い中、具合が悪くならずにい続けただけで偉い。

 
利用者全員を見送り、私とリーダーだけになった。

「先に帰っていいですよ。俺はまだ仕事があるから。今日は一日お疲れ様でした。」

リーダーからそう言われ
お言葉に甘えて帰る。
私はリーダーより家が遠いし
渋滞がひどいなら早く帰らなければいけない。

 
実際は裏道を使ったら渋滞はたいして巻き込まれなくて
私はホッとした。

 
家に帰り、両親と今日の話をする。

「ともかは暑い中、頑張っていた。」

 
「ともかの施設のディスプレイと製品は一番かわいかった。」

 
「リーダーは目が優しい。想像よりかわいかった。」

そんな風に言ってくれた。

 
親が撮ってくれた写真を見た。
私の隣でリーダーが微笑んでいる。

その写真を私はいつまでも見ていた。

 
 
転職先であなたに会えてよかった。

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