入院96日目:大規模と小規模
お母さんが死ぬ夢を見た。
容態が急変したらしい。
やけにリアルな夢で、ハッとしてスマホを見るとまだ4時だったので寝直した。
そしたらまた、お母さんの夢を見た。
今度は生きていたのでホッとした。
今日は土曜日だが、出勤日だった。
仕事が終わらないため、早めに職場に着いた。
残業すると残業代を払わないくせに上はうるさい。
今日は職員は私一人が出勤だ。
仕事をするにはもってこいだ。
うちの職場はタイムカードがない。
職員一人で出勤する日は、退勤時に上にLINEをしなければいけない。
だけど、出勤時はLINEはしなくていいのだ。
だから、たまっている仕事を片付けるなら今だ。
書類をやっていると、やがて利用者がやってきたので中断し、販売に出掛ける準備をした。
普段は朝掃除等が必須なので早く出勤しなければいけないが
販売日は朝の掃除等がないので、本来ならばギリギリに出勤してもいい。
なのに、いつもより早く来て書類を作っているのだから笑ってしまう。
今日の販売場所に行くのは二回目なのだが、駐車場がない場所なため、高い有料駐車場に停めなければいけないし
搬入や搬出も面倒だし
集客も見込めないイベントのため、正直あまり気乗りしなかった。
だが、今年は様々なイベント出店に落選しているし、年間目標金額を思うと、行かないわけにはいかなかった。
イベントは案の定、前回に引き続き、搬入や搬出が面倒だったり、話がちがかったりと相変わらずのストレス案件だった。
集客も予想よりひどく、ほとんど人は来なかったので暇を持て余した。
仕事中、暇な時間ほどキツいものはない。
スマホでYouTubeを見たり、読書をするわけにもいかない。
ひたすらに立ったまま、時が過ぎるのを待つ。
今日うちの職場の出店場所の隣はAという大規模な施設だった。
その施設は転職活動中に見学に行った施設だった。
いい施設だったが、働く条件が合わずに蹴った施設でもある。
その施設で作るパンは美味しく、私はたびたび買っていた。
私は福祉施設のパンを片っ端から食べているが、福祉施設の作るパンの中で一番美味しいと思っている。
暇を持て余していた私は、パンを買った際にA施設の職員さんに話しかけた。
他の施設もあまりにも人がいなさすぎてグダグダしていた。
聞けば、パン作りは元パン屋の職員が担当しているという。
どうりで生地もクリームも本格的で美味しいわけだ。
「うちはほとんど職員が仕事やっています。だからどんどん職員負担が増えていきます。」
「利用者さんの給料はほとんど家族や他の大人が管理していて、お金の価値が分かってなかったり、自分で買い物をする機会はないです。」
社会福祉法人ならではだと思った。
軽度の人はまだしも、話を聞いていると重度の人にとっての作業や余暇はうちの施設の方が充実しているだろう。
ただ、利用者優先にしているが故に、今の私の苦悩がある。
利用者を優先し過ぎる、小回りがきく小規模の施設が絶対にいいとは私には言えない。
大規模と小規模で価値観が真逆な施設二箇所で働いたからこそ、色々分かる今がある。
メリットもデメリットもある。
その人とはたくさん話した。
お客さんがいない時間帯、ほとんどその人と話した。
障害者福祉施設で働く人との話は共感だらけだし、勉強になる。
イベント出店の苦労や楽しさも分かち合えたし、情報交換もできた。
私が今までで一番ハードに感じたイベント出店と、その人が一番ハードに感じたイベント出店が同じだったのが面白かった。
やはりあれは伝説的なハードさだったのだろう。
その人の話で印象的だったのは、デパート等で委託販売をしても有名パン屋には勝てないし、マルシェで販売をしても有名なキッチンカーには勝てないという話だ。
確かに私もA施設のパンは美味しいとは思うが、有名パン屋と比べたら、やはり有名パン屋のパンが近くで売っているならそちらを買う。
マルシェでも、有名キッチンカーの方が気になるだろう。
うちの職場にしてもそうだ。
キーホルダーやアクセサリーや雑貨を販売しているが、有名な手作り作家さんには勝てないし、100均には負けてしまう。
福祉施設の商品の質を上げ、ブランド化する難しさは各施設、各職員の悩みだと思う。
これだけ人が来ないならもうお店を早じまいして帰りたいな……と思っていたが
イベント終了15分前に一気に人が来て飛ぶように売れた。ビックリした。
他県の人がたくさん集まるイベントだったため、地域色濃いめのキーホルダーやグッズが売れた。
今日のイベント時間は約5時間だったが
最後の15分のために来ていたようなものだというくらい
人がいる時間とそうでない時間の差が激しすぎた。
Aさんはパンがたくさん売れると思ったが
パン以外のものが予想外に売れ、パンは売れ残っていた。
飲食物は雑貨より売れやすいが、単価が安いことや売れ残りの処分(賞味期限の短さ)、ライバルの多さのデメリットがある。
今日福祉施設でパンを販売していた施設は複数だった。
帰り際、挨拶をした際、A施設はパンを袋いっぱいプレゼントしてくれた。ビックリした。
廃棄処分ならば、話した相手に渡した方がマシなのだと思ったのかもしれない。いい人だ。
各施設が早々と片付けて帰っていく中、A施設は一番最後まで片付けに時間がかかっていた。
片道結構時間もかかる。
どこの施設も大変だよなと思う。
名刺を忘れたのが残念だった。
名刺を渡せばよかったかな。
販売後、利用者と施設で後片付けをし、保護者が迎えに来たのを見送った後
再び書類作成をした。
定時の15分後に私は退勤した。
「腰が痛い中、販売お疲れ様。」
上のLINEに殺意が沸く。
分かっているならば、販売を私以外の人に任せてくれよ。
販売は重い荷物を運ぶし
今日はほとんど立ちっぱなしで
腰痛は悪化した。
週末はあれこれ買い物したい。
だけど、販売業務はめちゃくちゃ疲れる。
買い物をしたらドッと疲れが出た。
今すぐ寝たい。
だけど、お米とがなきゃ。
お風呂に入らなきゃ。今日はさすかに汗くさい。
本も読みたい。
だけど、眠い。
帰宅後、根性でお米をとぎ、お風呂に入り、本を読んで倒れ込んだ。眠い。
お母さんはリハビリを今日も頑張っていたらしい。
左足で車の運転の練習もしているようだし
足で運転できるならば、改造車にする必要はないかもしれない。
ピックアップでトイレに行く練習もしたとか。
お母さんが体調がよく、前向きでよかった。
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