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マズローの5大欲求を外食/中食業に置き換えて考える。

飲食店やデリバリー/テイクアウト店の開業や運営をするにあたり、

誰を対象にするのか?商品は何を提供するのか?価格を(競合含めて)どうする?内外装はどうしよう?接客の仕方など、業態や運営などを考え、試行錯誤するシーンは多々あると思います。

言い方はあれですが、外食・中食業を営む皆様については、「こうしたい!、ああしたい!、これを売るのが良いだろう。」が既に決まっている状態で、業態や運営を決めることは多いのではないでしょうか。(似たような言葉でプロダクト・アウトという言葉がありますね。)

一方で、この業態設計や運営方針を顧客の欲求やニーズから逆算をした上で(似たような言葉でマーケット・インという言葉がありますね。)、店舗や商品、施策に落とし込んでいくという方向性もあるのではないでしょうか?というのが今回のお話しです。


この、顧客の欲求やニーズを捉える上で、使うのが「マズローの5段階欲求」です。(もちろん、今目の前にいるお客様がこんな理論的なニーズを持っている訳ではありません。)

「マズローの5段階欲求」を簡単に覚える

まずは、下記にマズローの5段階欲求を簡単に説明します。(画像引用

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①生理的欲求:人の生命維持に関わる欲求

②安全の欲求:外界に対する防衛的、安全確保の欲求

➂所属と愛の欲求:孤独を避け、所属や他者との関与の欲求

④承認の欲求:自分が認められたい=尊厳や自尊心の欲求

⑤自己実現の欲求:より一層自分らしく生きたい欲求

(⑥超越的な自己実現欲求:至高体験=興味深い事柄に魅惑させられ、熱中し夢中になることを求める欲求)

今回は⑥についてタッチをしませんが、この5つで構成されているのが人間の根源的欲求になります。今の目の前にいるお客様が求めている欲求やニーズは、これらが細分化されたり、個々人や時代に合わせて言い換えられたものと思ってもいいかもしれません。


飲食店、デリバリー/テイクアウト店に置き換えてみる

ではこれを飲食店やデリバリー/テイクアウト店っぽく置き換えるとどうなるのでしょうか。

①生理的欲求:空腹を満たしたい=簡単に、なるだけ早く、沢山、食べたい。簡単に、わかりやすく注文したい。
②安全の欲求:安全な食材や調味料を使ってほしい。目に見える形で調理して欲しい。健康的なメニューであって欲しい。
➂所属と愛の欲求:常連や特別な客になりたい。店員と仲良くなりたい。
④承認の欲求:食事に行ったら特別扱いされたい。良い店を使う自分を周りの人に見て欲しい。
⑤自己実現の欲求:理想の自分になれる(健康、利用することによるステータスなど)。追い求めた内容の食事を出してくれる。

このように置き換えてみました。もちろん異なる視点や言い方もありますが、これをイメージのベースにしてみてください。

これらを更に細かくみていきましょう。


①生理的欲求

生理的欲求で求められるのは空腹を満たすという食事の原点的な欲です。そのため、店側が満たし、訴求すべきは、

・簡単に=行きやすい場所にある、安価での提供、選びやすいメニュー

・早く=提供や配送の時間が短い

・沢山=商品のボリューム感

が考えられます。言い方は失礼ですが、牛丼チェーンやテイクアウト唐揚げ店はある程度の金額に抑えられて、時間・手間など含めて、手早くお腹を満たせることが期待されている場合がほとんどだと思います。「お腹すたいね。何課無いかな?」といった衝動的発生する需要の受け皿です。

そのため、行きにくい立地の悪いところにあったり、価格が高い、提供までの時間が掛かるというのはお客様が来ない、付かないことの原因になります。

そのため、こういった業態を考える場合、立地の良さは必須ですし、価格は競合・原価を鑑みながらも、安く設定する必要があります。もちろん素早く提供するためのオペレーションの試行やスタッフ教育も必要です。(そう考えると、企業努力によって確立された大手ファストフードチェーンの店舗運営は本当に凄いものですね。。。。。)


②安全の欲求

安全の欲求で求められるのは、言葉の通り「食の安全」です。そのため、店側が満たし、訴求すべきは、

・食材/調味料=産地や生産業者の見える化、食品表示

・調理=オープンキッチンやオーダー後調理のような工程の見える化

が考えられます。食事表示のように義務化されている事があるように、この安全の欲求のついては、日本というお国柄、この点はほとんど保障されていることがほとんどで、目立って(それを一番のウリとして)訴求している店舗はあまり見ません。

一方で、オープンキッチン(客前調理)やオーダー後調理で調理工程における安全性の確保・訴求を行うこともあります。食材や調味料が安全なのは、前提となっている中で、安全性や安心課感を与えるには調理工程=人がタッチするポイントを見せるというのがその1つであると考えています。(客前調理やオーダー後調理には実演性やしずる感を訴求するような効果もあります。)


➂所属と愛の欲求

この欲求で求められるのは、店側とのコミュニケーションや自分がコニュニティにいるという状態を認識できることです。そのため、店側が満たし、訴求すべきは、

・接客品質や頻度

・顧客管理と顧客レベルに伴うサービスの差別

が考えられます。関係性や愛を求めるこの欲求は、お客様は常連とみなされ、より身近な接客や通常客と異なるサービスを受けたいというものです。ある種の安心できる”場所や関係性”を求めているような状態になります。

もちろん飲食・中食業で接客を訴求するというのは難しい側面はありますが、この場合は接客頻度を担保できるシフトやオペレーション、スタッフ教育、また常連客を把握・管理する労力を投下するといったことが考えられます。


④承認の欲求

この欲求で求められるのは、その店舗を利用することで認められる=凄いと思いたい、思われたいという気持ちです。そのため店側が満たし、訴求すべきは、

・店舗や商品=綺麗さ、高級感、上品さ、珍しさ(隠れ家感)、SNS映え

主には、こういったものが考えられます。承認欲求も”自分で自分を認める”ものと”他人から認めて欲しい”という大きく2つの欲が存在しています。

自分で認める欲で言えば「自分はこのくらいいい店で食事が出来ている」という心を満たすための商品や店舗内外装の高級感や上品さが求められたり、「こんな店を知っているんだ、通っているんだ」といった満足感を満たすような隠れ家立地や外装、会員制度を取るなどが考えられます。

また、昨今ではSNSの利用が広がっており、他人に良く見られたい欲は多くの人が持っています。写真や動画を自分のアカウントにアップし、アピールするために食事をしていると言っても過言ではありません。

その分、目に見えてわかりやすい商品や店舗の綺麗さ、高級感、上品さ、珍しさ、目立ち、などがより求められる場合が多いです。


⑤自己実現の欲求

この欲求で求められるのは、自己実現(=なりたい自分になる、自分の理想を求める、自分らしさ)で、これまでの欲求とは異なり、高次元の欲求になり、店側も提供する価値やその労力のハードルは上がります。例えばですが、

・顧客情報に沿ったカスタムメニュー

・商品を食べ続けることによるメリット(健康など)

・顧客に対する1to1のサービスやアフターフォロー

などが考えられます。

自分の理想を追い求めるようなメニュー=自分の志向や健康状態に合わせたカスタムメニュー提供や、食べ続けることによる健康的メリット(腸内環境、血流、肌年齢など?)を得られるなどがその一例になります。

また、理想を追い求めるという意味では、これまでの注文情報や嗜好から、接客時に顧客の好むだろう商品や食材の提案、顧客ごとの利用頻度(や使用媒体)に合わせたアフターフォローの実施なども挙げられます。

もちろんこれらをいち飲食店として、実現するには事前情報・顧客志向/嗜好の仕入れをする、その上でそれらを(システムなどを使いながらでも)管理するなどのハードルがある分、全ての飲食店ができる、おすすめするというものではありませんが。。。。。。


さいごに

このマズローの5大欲求を飲食業っぽく理解することで、自店が今いるお客様に、何を提供・訴求すべきが適切なのか?を考えるキッカケになって欲しいなと思っています。

例えばですが、①生理的欲求や②安全の欲求を求めるような「ある程度の品質の商品で、ランチではパッとお腹を満たしたい」という考えのお客様に対して、④承認の欲求を満たす商品や店舗のキレイさやSNS映えのする商品を提供するよりも、ボリューム感のある新商品の開発や、いかに早く提供できるか?のオペレーション改善を考える方が建設的だと思います。

また、店員さんの会話やおもしろい接客・サービスを求めて来店しているお客様が多くいるのに、安易に人件費(サービススタッフやサービス力)を削減するのは悪手ではないか?と考えるなどです。

今いるお客様がどんな欲求・ニーズを満たしに来ているのか?をマズローを用い、置き換えて考え、それら自社の長所になる部分を見つけ、それをいかに伸ばしたり、資源投下を判断するポイントの参考になれば幸いです。

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