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専門職大学「未来を創る人材を育てるヒント」

AIやIoTといった技術革新による「第4次産業革命」が目前といわれ、自動車の自動運転の実用化やレジの簡素化など、それこそ間近といった状況です。

一方で、新規技術のリスクといった倫理的な問題や、今回のコロナウイルスともどう付き合っていくか、等々の課題も挙げられます。

では、そのような多様化する将来において、「未来を創る人材」を育てるために、大学は、企業とどう協力(協業)していくべきなのでしょうか?

今回は、そういった点を昨今の状況や課題に触れ、最後は2018年に制度化された専門職大学に着目し、まとめようと思います。


1、大卒の約3人に1人が3年以内に離職

 
若者の離職率の高さは、厚生労働省(2019年10月発表)「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」にて確認することができます。

新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒の就職者は39.2%、新規大卒の就職者は32.0%と、大卒の約3人に1人が3年以内の早期離職といった状況にあります。

割合として、サービス業が最も高いようです。

とはいえ、実はここ20年の間、「3年3割」といった状況は横ばいで、これは今に始まったことではありません。

もっとも離職する理由は様々あり、これは大きなくくりで言えば、単純に双方(企業と学生)のミスマッチということに尽るでしょう。


2、企業と学生の意識のギャップ


㈱EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(2019)『就活ルール変更に関する意識調査と将来の採用トレンド』によると、

学生の約4割は就活のアピールとして、「大学生活でアルバイトに力を入れた」と答えたのに対し、「アルバイト経験を重視する」と答えた企業はたったの2割程度に過ぎません。

一方で、企業側は「社会貢献活動」や「ビジネススキルの習得」といった活動に対し評価する傾向が出ており、単純に多くの企業が即戦力を欲していると解釈できます。

これらのことから、「学生が思う採用ターゲット」と「企業側の採用ターゲット」には意識のギャップがあるようです。

つまり双方のミスマッチの要因は、採用時から起きていると言え、ひいては大学生活からと理解できます。

このように、学生たち(あるいは大学側)は『企業が求める学生像を理解できずに学生生活を送っている(または送らせている)』とも言い換えることができます。

では、大学側は今後、必要な人材を育てるために何を教える必要があるのでしょうか?


3、これからの学生に必要な能力とは?


産学連携の必要性が叫ばれて久しい昨今、日本全体を盛り上げるには、企業と大学が手を取り合い、人材育成をする必要があるとして、

日本経済団体連合会と大学は、2019年1月に『採用と大学教育の未来に関する産学協議会』を設立しています。

その『中間とりまとめと共同提言(2019年4月)』では、論理的思考力と規範的判断力をベースに社会システムを構築する力を備えた人材が必要であると述べています。

具体的には、以下のような内容が考えられます。

①課題発見・解決力
・在学時に現実社会の課題解決に取り組む
②未来社会の構想・設計力
・パラダイムシフト先を見据え、ロードマップを描ける
③論理的思考力と規範的判断力
・1つの専門分野を深く学ぶことによって得る「論理的な考え方」
・望ましい社会や企業を考える「規範的判断力」

 
そのため、大学はインターンシップはもとより、今後は上述した①~③を含む教育、すなわち『学生へ学修経験の中で、社会に出て活躍できる力を付けるための支援』が必要になるといえます。

これには、ハード面の準備も必要かもしれませんが、

ソフト面では、社会人経験豊かな教員の起用といった、大学外の異分子を取り込むことで、社会課題の解決に役立つ人材を育てることができるのではないでしょうか?


4、大学の現状


これまで大学は、いわゆる鎖国的にクローズドな状態で経営を行っていたといっても過言ではありません。

それでも、組織的に産学連携といった外部連携は進められている一方で、内部からの変革といった点では、まだ十分とはいえない状態でした。

しかし、今回の『高等教育の負担軽減(高等教育の修学支援新制度)』の方策において、大学を含む高等教育機関に対し、「実務経験のある教員の配置」や「外部理事の登用」といった外部人材を取り入れるよう命じています。

2020年6月7日現在、高等教育の修学支援新制度の対象機関は、以下の専用ページに記されています。

ちなみに、当方策は当初予定されていたよりも徐々にハードルが下がったため、ほとんどの高等教育機関が利用しています。

話を戻すと、この方策の背景には、大学に対し「教学」と「経営」の両方から内部変革することを期待しているのかもしれません💪

例えば、企業が内部変革する場合は、M&Aで外部ベンチャー企業等を買収し、当たり前のように企業の『新陳代謝』を起こすことで、イノベーティブ機能を高めようとします。

そのため、大学は外部人材および産業界等ともうまく協力(協業)し、社会に出て活躍できる力を養うカリキュラムを構築していく必要があると考えられ、今回の制度をきっかけに改めて内部変革について、考えなければならないのかもしれません。


5、専門職大学の可能性


最後になりましたが、ここでようやく専門職大学に触れていきます。

前項で触れたように、「実務経験のある教員」や「外部人材」の登用を設置基準としている大学があります。

それが、『専門職大学』『専門職短期大学』です。

2018年に制度化され、すでに開学している大学もありますが、申請を取り下げる等、ハードルは高いようです(なので、許可された大学はそれだけですごい!と思います😲)。

現時点の専門職大学数は文部科学省の専用ページに記されています。

ざっくりいうと、専門職大学は「理論と実践」をバラバンスよく学ぶことを目的に、「授業の3分の1以上が実習・実技」といった、専門学校と大学の良いトコ取りって感じです。

さらに、カリキュラムを考える際にも、『教育課程連携協議会』という外部人材(例えば、産業界のCEO、自治体の経済担当者など)を登用した学内における第三者機関を設けなければなりません。

この協議会によって、出口である産業界がどのようなことを考えているのかが分かりますし、大学が疎(うと)いといわれる市場の理解といった点でもメリットがあると考えられます。

このように、専門職大学が制度化された背景には、産業界と学生のミスマッチが原因とも考えられ、既存の大学に足りないところを補っているとも言えます。

そのため、専門職大学には既存の大学にとっても学ぶべきところが沢山あり、『未来を創る人材を育てるヒント』が隠れているのかも、、、しれません。

まとめるきっかけになった参考図書をご紹介いたします。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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