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現代長歌

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「現代長歌」
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2021年7月の記事一覧

あめつち【息遣い】

あめつち【息遣い】

影法師・闇夜の中で・曼珠沙華を
刈り入れ地には・幾本かの・花弁が落ちる
「こうやって・隠すのが私の・業です」と
人目に触れぬ・影法師の・悪事にかまけ
伝播する・笑いにも似た・泣き声が
「本にはなんと・書いてある?」・刈り入れながら
せせら笑う・「気がついたら・遅すぎた。そういう事よ」
暁の・甘露がしらす・ーー時よ新たにーー
   反歌
皇紀二六七九年の春御世の残りも朝の御光

 生沼義朗さんが全引

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砂の城【息遣い】

砂の城【息遣い】

閉ざされた・砂の城から・真昼の陽を・恨めしく見る
「誰も彼も・何も分かっちゃ・いやせんよ」
口髭を・静かに触る・「包皮を切る・夢を見たのだよ」
西からの・砂嵐に汝(な)の・歯を汚し・我もまた砂を・噛んでいる
「ここを出るには・どうすれば?」「入ればそれで・よいではないか」
ダビデの頃の・記憶から・驟雨が西から・砂を落とす
「誰も彼も・何も分かっちゃ・いやせんよ」
    反歌
砂の城肌に刺さった陽

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砂の城

閉ざされた砂の城から真昼の陽を恨めしく見る
「誰も彼も何も分かっちゃいやせんよ」
口髭を静かに触る「包皮を切る夢を見たのだよ」
西からの砂嵐に汝(な)の歯を汚し我もまた砂を噛んでいる
「ここを出るにはどうすれば?」「入ればそれでよいではないか」
ダビデの頃の記憶から驟雨が西から砂を落とす
「誰も彼も何も分かっちゃいやせんよ」
    反歌
砂の城肌に刺さった陽と土を唾液でこねて目頭に塗る
見えるよ

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