自転車事故の責任
自転車が加害者となる交通事故が増加傾向にあるという。そして加害者は刑事と民事などの責任が生じるのです。
|自転車の事故
道路交通法では自転車も「車両」です。
したがって、自転車で歩行者や他の自転車と衝突したり接触した場合には、交通事故となり 運転者は刑事上の責任が問われます。
また相手にケガを負わせたり死亡させた場合等は、 民事上の 損害賠償責任も発生します。
万が一、自転車で事故を起こした場合、道路交通法にしたがって、自動車やバイクなどの交通事故と同様に、警察への報告と救護義務があるのです(道路交通法72条)。
|自転車が加害者となった事故の責任
冒頭記載したように自転車が加害者となった場合、
・刑事上の責任
・民事上の責任
が、また、余り表に出ていないが、自転車の事故の内容によっては、
・行政責任
・社会的責任(道義的な責任)
があります。
|刑事上の責任
刑事上の責任とは、死傷という重大な結果を起こした人に対する国による制裁です。
自転車事故の刑事罰には、
・ 過失傷害罪:不注意により相手にケガを負わせた
・ 過失致死罪:不注意により相手を死亡させた
・ 重過失致死傷罪:重大な不注意により相手を死傷させた
などがあります。それぞれ、懲役や禁錮、罰金といった処罰が科せられます。
|民事上の責任
民事上の責任とは、民法第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」に従って、被害者に与えた人身損害や物損を賠償する責任です。
たとえ自転車事故であっても、被害者を死亡させたり後遺障害を負わせてしまうと賠償額は高額になります。
|交通事故の過失割合
過失割合とは、加害者と被害者の過失(不注意)の割合です。
事故の過失割合は当事者同士の話し合いで決めますが、保険会社などが交渉してくれる場合が多いです。
具体的には、過去の裁判例や書籍『別冊判例タイムズ』、いわゆる「青本」や「赤本」などの情報を参考に検討し妥当な割合を考えてます。
例えば、事故の場所、衝突地点、速度、交通規制の状況など種々のさまざまな状況によって過失の割合は変わってきます。
例:
歩道上においては、基本的に自転車側が100%の責任を負うことになります。
信号機のない交差点で自転車と歩行者の事故が起きた場合、責任の割合(過失割合)は「自転車:85」「歩行者:15」と自転車側に大きな責任が課せられます。
|”責任能力”があれば損害賠償責任を負う
一般的に、未成年者(18歳未満)は責任ある行動や認識が大人ほどとれないことから、契約や商取引などにおいても未成年者取消権が認められています。
そこで、民法では、加害者の未成年者が「責任能力を備えている場合のみ責任を負わせる」と定め、未成年者を保護しています。
一般的に「責任能力を備えていない」とされるのは、12歳未満。
つまり中学生以上からは事故の損害賠償義務を負うということになります。
とはいえ、未成年者の場合、実質的には支払い能力がない可能性が高いので、通常は損害賠償請求訴訟においては本人とその保護者に対して損害賠償請求を行うことが多いです。
なお、「責任能力を備えていない」場合は、保護者や監護者に損害賠償責任を請求する可能性があります。
|事故に備えた対策
自転車には自動車のような強制保険(自賠責保険や共済保険)制度はありません。
自転車も過去における高額損害賠償判決などを考えると、自動車と同じ仲間であることからく事故の危険のある車両を運転するということを自覚し、責任を持ち、もしもの事故に備えて保険に入るなど事前対策を講じることが重要です。
自転車事故に備えるための保険としては、大別して下表のよう区分されます。
つまり
事故の相手方の身体・生命、財産(モノ)に対する賠償責任に備える「個人賠償責任保険」と自分の身体・生命の損害(死亡や怪我)に備える「傷害保険」
の二種類です。
この二種類を別々に販売する商品やこの両者を含めた自転車総合保険という商品で販売されています。
自転車利用者などの実態に合わせて保険に加入することをお勧めします。
|行政責任と社会的責任(道義的な責任)
上記の他に行政責任と社会責任があると書きました。人によってはそれ聞いたことないよという人がいるかもしれませんね。後日書きたいと思いますのでさわりだけ。
○ 行政責任
自転車事故で、いわゆるひき逃げなど悪質危険な行為をした場合で、その行為者(自転車運転者)が運転免許を持っている場合には、道交法上「危険性帯有者」ということになり、運転免許の効力が一定期間停止されるという「点数によらない行政処分」という制度の対象になる場合があると言うことです。
○ 社会的責任(道義的な責任)
自転車通勤などの際に大きな事故を発生させた場合に会社名が公表されたり、場合によっては個人が特定されたりして、社会的な批判を受けたり、企業活動に影響が出たりということがあります。
また、事故事案の内容によっては社内規定などによって、処分を受けることがあります。
さらには、相手方への謝罪、病院への見舞いなども道義的な責任に入ります。つまり民事上の賠償以外の責任ということになるでしょう。
交通事故の場合、当事者としてのしかかる責任として重いかもしれません。
|おわりに
自転車は、便利で多くの人が利用している交通手段ですが、同時に誰もが交通事故の当事者になり得ます。
ルールを守ること、自転車保険に加入することを徹底し自転車利用者(運転者)として責任を果たしましょう。
過去の例では、自転車保険に加入していたため被害者の損害が賠償されたことで被害者との示談が成立していたため、刑事事件で刑罰を科することが猶予されたり減刑された例もあります。
ほとんどの都道府県条例で自転車保険の加入を義務付けています。個人的には条例の定める損害賠償保険にも対応している全日本交通安全協会が提供している安価な「サイクル安心保険」をお勧めします。
参考:
一般社団法人日本損害保険協会HP:https://www.sonpo.or.jp/about/useful/jitensya/index.html
一般財団法人全日本交通安全協会_サイクル安心保険:
https://www.jtsa.or.jp/ https://saitama-cycle.com
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