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自治会未加入者とごみ収集所

自治会は任意加入であるが、未加入だと自治会が管理するごみ収集所は使えない?
全国的にこのような問題が起こっており、最高裁で審議されている事案もあるというから驚きです。


|自治会・町内会とは?

自治会とは町内会と呼ばれているところもあるが、自治体の中で一定の区域の住人で構成された任意団体のことをいいます。
なおここでは「自治会」という表現で記事を書きます。

自治会の目的としては、住みやすい地域づくりのために、区域の住民相互の連絡や環境の整備、集会施設の維持管理、良好な地域社会の維持や形成に関する共同活動を行うことです。

地域や個々の自治会によりその具体的な活動内容は異なるが、一般的な自治会の事業としては次のようなものが挙げられます。
● 地域の防災(災害に備えた防災訓練や備蓄の確保等)
● 地域の防犯(夜間パトロールの実施や防犯講習会の開催等)
● 地域の見守り活動(単身高齢者の見守り訪問や子ども食堂)
● 地域交流(お祭りやレクリエーションの企画・開催・参加)
● 地域の安全に関する広報及び自治体からの情報の伝達共有等
● ごみ収集所の管理運営
などの活動を行っており、自治会に加入することで、これらの活動のメリットを享受できます。

|自治会に加入は強制?

自治会への加入は任意なのか?強制なのか?という問題について時々話題になるが、過去には裁判に進展したこともあります。
判例がいくつかありますが、現在では加入は任意、また加入者が退会することも可能(任意)であるというのが見解・定説となっています。

マンションの場合でも「マンション管理組合規定等」で自治会に加入することを内容としていても管理組合の構成員(住民)が、自治会への加入・退会が任意であり、自治会会費を徴収することをマンション管理規約等で定めてもその拘束力はないとされた事例もあります。(東京簡判 平19-8-7 HP下級裁主要判決情報)

戸建ての場合にも自治会への加入は任意が原則であり、もちろん退会も任意になります。
仮に自治会の規約で退会を認めていなかったとしても、そのような規約に法的な拘束力はなく、会員は自由に退会することができます。

|自治会費の使途は

自治会の活動を維持するために必要な費用として会員から徴収される会費は年間6千円前後が多いという。

自治会費についいては、会費の額や使い方は自治会・町内会ごとに異なりますが、防犯灯の管理や防災、住民同士の交流事業など幅広い活動に使われているほか、活動の拠点となる集会所の維持・管理など、会の運営のためにも使われています。

|自治会未加入者とごみ収集の使用の問題

自治会の会費でごみ収集所の施設の設置、管理を行っているが、自治会に未加入者がこれを使用しているのは不公平だという意見が自治会員から提出されたことがあります。

多くの自治会では、共同で設けたゴミ収集所の清掃や管理を行っています。

自治会では、環境への配慮や自治体の行うごみ収集活動の利便性の観点等から、地域内の特定の箇所をゴミ収集所として共同で簡易の収集施設等を設置しこれの保守管理をしています。
そのため自治会に加入せず会費を支払わないことを理由に、地域のゴミ収集所の利用を断られるというケースも少なくないようです。

自治会の規約等で、会員のみがごみ収集所を利用できるというルールになっていたら、未加入者や退会した後はそのゴミ捨て場を利用できなくなります。
しかし、このルールはあくまでも任意団体としての自治会が定めているルールであり法的な拘束力のある規定ではないのです。

|ごみ収取は自治体の責務

家庭から排出されるごみなどは、一般廃棄物の収集・運搬・処分は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により、市町村などの自治体が行う業務とされています。

つまり、住民が必要とする公共サービスの一つと考えられており、下記記載の同法第6条の2に基づき、一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならないのです。

市町村などの自治体は、家庭の一般廃棄物を収集がスムーズに行われるよう自治体にごみステーション(ゴミ収集所)の設置管理、共同利用を要請したり、分別収集等をお願いしているのです。
これに伴い市町村によっては自治会に若干の補助金等を支給しているところもあります。

そのようなことから市町村のごみの収集、運搬等の支援のためのごみ集積所であり、自治会未加入者もごみ集積所を使用することができるという考え方になっているようです。

もちろん以下の大阪高裁は判示しているように
「自治会に入っていなくても、必要であればごみ収集所の維持管理費などの負担を求めればよい」
ということになります。

(国民の責務)
第二条の四国民は、廃棄物の排出を抑制し、再生品の使用等により廃棄物の再生利用を図り、廃棄物を分別して排出し、その生じた廃棄物をなるべく自ら処分すること等により、廃棄物の減量その他その適正な処理に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 市町村は、その区域内における一般廃棄物の減量に関し住民の自主的な活動の促進を図り、及び一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たつては、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等その能率的な運営に努めなければならない。
2 都道府県は、市町村に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることに努めるとともに、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の状況をはあくし、産業廃棄物の適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。
3 省略
4 国、都道府県及び市町村は、廃棄物の排出を抑制し、及びその適正な処理を確保するため、これらに関する国民及び事業者の意識の啓発を図るよう努めなければならない。

(市町村の処理等)
第六条の二 市町村は、一般廃棄物処理計画に従つて、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分(再生することを含む。第七条第三項、第五項第四号ニからヘまで及び第八項、第七条の三第一号、第七条の四第一項第五号、第八条の二第六項、第九条第二項、第九条の二第二項、第九条の二の二第一項第二号及び第三項、第九条の三第十二項(第九条の三の三第三項において準用する場合を含む。)、第十三条の十一第一項第三号、第十四条第三項及び第八項、第十四条の三の二第一項第五号、第十四条の四第三項及び第八項、第十五条の三第一項第二号、第十五条の十二、第十五条の十五第一項第三号、第十六条の二第二号、第十六条の三第二号、第二十三条の三第二項、第二十四条の二第二項並びに附則第二条第二項を除き、以下同じ。)

|自治体での対応例

自治体の対応一例ですが、これは栃木県市貝町の対応を紹介します。

自治会未加入その他諸事情により、地域のごみステーション(ごみ集積所)が利用できない方を対象としたごみステーション(ごみ集積所)を設置しています。
 普段の生活の中で排出される家庭ごみ等は、自治会や利用者が設置する地域のごみステーション(ごみ集積所)に集められ、専門の収集運搬業者により回収されています。
 しかしながら、自治会の未加入・脱会、又はその他の諸事情により地域のごみステーション(ごみ集積所)を利用できない方がいることから、当町ではそのような方を対象としたごみステーション(ごみ集積所)を公共施設等に設置しております。~以下略

つまり、自治会未加入者で自治会の設置したごみ収集所を使用できない人などを対象としたごみステーションを設置しているということです。場所は町内2か所なので、どの程度利用者があるかはわかりませんが、自治体の責務として行っているようです。

|ごみ収集場の使用に関する判例

過去には「自治会に入らないことを理由にゴミ捨て場の利用を禁止するのは違法だ」として、裁判になった事例もあります。

〇 ゴミ捨て場の利用禁止は「自治会への入会強制に等しい」として、自治会の対応は「違法」とした事例(大阪高等裁判所(2022年10月))。

この判決では、たとえ自治会に入っていなくてもごみ収集所の維持管理費などの負担を求めればよく、「非自治会員の利用を一切認めないのは正当化できない」と判断。そうした金銭負担の提案を夫妻にすることなく〝出禁〟(出入り禁止)としたのは、入会の強制に等しいと判示しています。
なお、この判決は上告され最高裁で継続中です。

〇 町内会費を徴収することをマンション管理規約等で定めてもその拘束力はないとされた事例(東京簡判 平19-8-7 HP下級裁主要判決情報)

|おわりに

ごみ捨て場をめぐるトラブルは各地で起きているといわれており、国立環境研究所(茨城県)が2022に全国調査した結果、7割もの自治体で、自治会への非加入者が地域のごみ捨て場を利用できない問題を抱えていたといいます。

以前私の住んでいたマンションでも同様な問題が生じていたこともありますし、現在の戸建ての自治会でも未加入者がごみ収集所を使用しています。

大阪高裁判例では、自治会に未加入で収集所を使用している人に収集施設の管理に必要な費用を負担を求めることができる旨も含めて判示しているものの、自治会未加入者は請求してもそれも拒否することが多いです。

この問題は、未加入者の収集施設使用の可否の判決が、必ずしも現実の問題を解消できるかというと疑問が残ります。

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