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借りたものは自分のもの・・・ではない

知人・友人から借りたものを自分の管理する範疇に置いてしまい返さなないということがあるよね。

貸した人からすると、「ちょっとだけ貸して」というので・・・、なんだかんだと理由をつけて返してくれないって、だまされたような感じがする。

ひどい人はオークションなどに出品してしまうようだ。
これって、法律上はどういうことになるんでしょうか?
今回はそういう貸し借りに関してちょっとだけ書いてみます。


|貸し借りに関する法律

一般的なことでいうと、民事上、貸し借りにかかる行為は当事者間における賃貸契約ということになり、公序良俗人に反しない限り、契約自由の原則が適用される。
つまり、契約は当事者間において自由意思、自由な内容で合意すれば契約が成立する。

一方、刑事法上は、この当事者の間の合意が自由意思を阻害したり、欺罔手段を用いたりして契約した場合や自由意思で合意したにもかかわらず適切に履されなかった場合などに、刑法等の刑罰法規に抵触することになり、刑事罰が科せられることになるのだ。

言い換えれば、刑法や消費者契約法など、刑事罰の対象とならない限り自由な内容での契約が有効になるということなのだ。

|貸借に関する法律

マンガの単行本、DVD、グッズ、さらにはコスプレ衣装など、オタク同士や友達同士で物の貸し借りをすることも少なくはないかもしれない。

何気なく行っている友達同士の普段の貸し借りが緩慢になってしまい、借りたものがいつの間にか返し忘れてしまい・・・・・・そのうち、うっかり別の人の手に渡ってしまうことも。
つまり、また貸ししてしまったり、〇〇オークションやフリマーなどで転売してしまうということがあるかも・・。

実は、昨今のSNSやネットオークションなどの普及により、借りたものの転売などの事案も少なくはないのだ。

|借りパクリ

「借りパクリ」とは、他人から借りたものを、自分のものにしてしまうというような形態。

もちろん最初からだまして自分のものにしちゃおうと考えて「借りる」場合もあるだろうし、借りているものであることをうっかり忘れて(もしくは勘違いして)いる場合もあるかもしれないが・・・。

借りたものであることを忘れたり勘違いした場合には、直ちには違法性があるかというと必ずしもそうではなく、「窃盗罪」にあたることはないかもしれない。

しかし最初から借りパクするもりで借りたのであれば「詐欺罪」が、借りた後でそのままパクれば「単純横領罪」に抵触する可能性があるのだ。
ちなみに単純横領をした場合(横領罪)は、5年以下の懲役が科さられることになる。

|使用貸借と賃貸借契約

両者の違いは、無償か有償なのかということ。
タダ (無償)で物の貸し借りをすることは、法的には「使用貸借」という契約になり、一方、有料での貸し借りは「賃貸借契約」ということになる。

いずれの契約にしても、借りた人は当然に、借りたものを持ち主に返す義務を負うことはいうまでもない。

私たちは子供のころからそのように教育を受けてきたはずであるが・・・、やはり一部には「欲に目がくらみ」悪意のある契約を結某うとするやからがいるのだ。

契約は、必ずしも契約書を取り交わさなければならないというわけではなく、当事者同士の合意、つまり、ある条件で、貸す、借りるという意思の合意があった段階で契約は成立する。

契約書は合意の内容を明確にし、後日のトラブル防止、契約内容の確認のために取り交わす文書で、外部に対しても契約内容を示す文書ということになる。

|貸借に係る主な犯罪行為

貸し借りに関して生じる犯罪行為としては
〇 横領罪
〇 詐欺罪
〇 器物損壊罪
などがある。以後簡単に説明する。

イメージ:筆者撮影

|横領罪

横領罪は、「自己の占有する他人の物」を「横領」した場合に成立する犯罪。

ここでいう「自己の占有する他人の物」というのは、「自分の支配下に置かれている他人の所有物」という意味である。

「横領」するとは、本来その物の所有者でなければできない財産的処分行為をすることである。

すなわち、一般的には
・ 借りた物を返さずにそのまま所有者のように使い続ける
・ 借りた物を他人に販売する
などの行為は、本来はその物の所有者でなければできない行為であるので「自己の占有する他人の物」を「横領」したとして、刑法第252条の「横領罪」に抵触することになる。

ただし、自ら使い続けているという場合には、「後で返すつもりだった((所有者として振る舞うつもりはなかった)」という弁明をすることができるので、単純横領罪で検挙されない場合が多い。

|紛失と横領罪

貸したものの返還を求めたが「なくした」といわれた場合には、直ちに犯罪が成立することはない。

ただし、「なくした」と嘘をついていた場合には、横領行為の一連の流れの中の行為として横領を完成させるためにうそをついた(騙した)として、横領罪にあたる可能性が高い。

なお、物を返還する債務を免れるという「不法の利益」を得たということになるので、横領罪よりも重い「詐欺利得罪 (刑法第246条第2項)」が成立する可能性もあるという見解もある。
 ※ 詐欺利得罪の法定刑:詐欺罪と同様10年以下の懲役

|詐欺罪

刑法上の「詐欺」とは、人を欺く行為をして相手方を錯誤に陥らせ、相手方(もしくは第三者)に財産的処分をさせることをいう。

詐欺罪は、以下の構成要件を全て満たしていることが必要である。
・ 人を欺く意思をもった上での行為によって
・ 相手が錯誤に陥り
・ 財産的処分行為をすること
・ 財物の交付または財産上の移転があること
である。

貸し借り行為において、借主が当初より「返すつもりはない」、「転売してしまおう」などの意思のもと、「必ず返す」などと詭弁をもちい貸主をだまして、お金や物を借りることで成立する犯罪なのだ。

法律上「詐欺罪」は、「人を欺く意思があって相手を錯誤に陥らせ、財産処分行為がなされること」であり、財物の交付を受ける時点で「欺く意思」つまり「だます」という故意が無ければ成立しないことになる。

この種犯罪を立件する上で難しいところは、検察官等捜査機関において「欺く意思があった」ということの証明(内心意思の立証)をしなければいけないことである。
この証明がを出来なければ詐欺罪として処罰することが出来ないことになるのだ。

詐欺罪は、未遂についても罰せられる(刑法第250条)。
法定刑は、10年以下の懲役

|器物損壊等罪

借りていたものを捨てた、壊したというような場合には器物損壊罪に該当する可能性がある。

器物損壊罪は、単に破損したり、捨てたという場合のほかにも、物の本来の効用を失わせている場合には「損壊」に当たるという。

たとえば、皿の上に排泄物を乗せた場合などのように、皿を物理的に壊してはいないが、洗浄•消毒してもその皿を再度使おうという気持ちはおこらない。このような場合も器物損壊に当たるのだ。

この罪は、親告罪なので被害者の告訴が必要になる。
法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。

|損害賠償責任

借りパクされた場合や、貸したものを壊された場合などには、物理的な返却は困難であり、不法行為に基づく損害賠償請求の対象になる。
つまり、当然であるが損害を弁償してもらうことができる。

その際の賠償金額は、物によって異なる。
原則としては、弁償 (損害の賠償)は、物を壊す前 (損害を受ける前)の状態に戻すために行うものあり、市場で再調達可能な物の場合、その再調達(原状回復)にかかる金額が損害額となるのだ。

たとえば、貸したカメラを勝手に売られたという場合、購入時は20万円であったとしても、希少価値の高い製品であり値上がりして市場価格が25万円だというときはその金額を請求することが可能なのである。

そのほか、迷惑料である慰謝料の請求なども可能であるが、ケースバイケースで判断されることなる。

|おわりに

物の貸し借り、お金の貸し借りなどが社会生活においては付きまとってくることになる。
特に、知人や友人同士の場合には、貸してくれといわれるとなかなか断り切れないこともあるかもしれないが、できるだけ避けたい。

不要なトラブルやその後の人間関係を壊す原因にもなるので、慎重に行って欲しいものですね。

そしていろいろな詐欺が流行しているので、だまされないようにしたいですね。

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