見出し画像

道路交通法をひも解く ~一時停止~

一時停止規制に従って、停止線で停止しても左右が見えない場所ではどうすれば安全確認ができるのでしょうか・・・。交通安全を考える際には、基本法である道路交通法の制定趣旨を知ることが必要であろう。


「指定場所における一時停止」(道交法第43条)

道路交通法第43条は「車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前で一時停止しなければならない」と規定している。

一時停止の必要があるところでは、標識や標示によって一時停止を義務づけることにしているのだ。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項)

|一時停止の趣旨

一時停止義務が制定された趣旨としては、交通の危険が生じている場所や危険回避上特に必要がある場所に交通規制として道路標識を設置し安全を確保しようというもの。
この一時停止義務の趣旨は
 ① 停止線の直前で一時停止する
 ② 交差道路を通行する車両等の進行を妨害してはならない
ということだ。

|なぜ停止線の直前で停止

見通しの悪い交差点の場合などには停止線の直前で停止しても左右は見えないではないか。ということがよく言われる。
しかしこの規定は②の「この場合において・・」とあるように交差道路の進行妨害をしないための手段として一層厳密に左右の安全を確認することを求めているのだ。

 「一時停止義務」にかかる二つの誤解

一時停止の必要性は徐行が必要とされる場所より、さらに危険の発生する可能性が高い。当然、いったん止まり左右の安全を確認しつつ徐々に前方へ進むことが必要なのだが、一時停止について大きく二つの誤解が生じているようだ。

〇 ーつ目の誤解
「形式的でも行なえばよい」
ということ。
教習所で教えられたことの実践と運転免許試験にパスするため、警察に違反として指摘されないために一時停止標識に従って「一旦停止すればよい、左右を見さえすれはよい」という形にだけとらわれて、本来の安全確認をしていないと感じる。

〇 二つ目の誤解
安全が確認ができればいいのだろう」と、低速度や徐行状態ではあるが停止線の直前で停止せず、左右の見えるところまで進行してしまうことである。

|徐行と一時停止は違うということ

一時停止は、形だけでは意味がなく、安全確認をしなくてはならないことはいうまでもないが、徐行と異なり、一時停止しなくてはならないというのは、とにかく停止線直前で 止まらないで前方に出ることが危険だ、まずは停止線直前で一旦停止すべきであるということを規定しているのである。

|一旦停止することで回避できる危険とは

停止位置は停止線の直前であることを条文上明示しているがこれは
 〇 車両の先端を停止線より先、交差道路に進入させないこと
 〇 停止後徐々に発進停止を繰り返することで交差道路を通行する車両等
   にも自分の進行を知らせることができる
などにより、危険を回避するとともに交差道路の進行を妨害することが可能になるからだ。

徐行のようにすぐに停止できるような速度で進行しながら安全を確認するという確認作業とは異なっているのがこの条文の趣旨なのだ

徐行の場合は進みながら安全確認をしたが、一時停止の必要な場所というのは、その確認のための進行自体が引き起こす危険を回避しなくてはならない場所なのである。

乗用車の場合、運転席から車両先端、前面バンパーの位置までは一般的に2m程度あるが、停止線の直前で停止しないで左右の見えるところまで進行し停止しても、すでに2m程度は交差道路に進入してしまい歩道や道路端を進行してくる自転車や歩行者などとの事故や進行を妨害したりしてしまう危険性が高まる。

|左右が見えなくても停止の意味はある

以上説明したように、停止線の直前の左右の見えない場所で一旦停止することには大きな意味がある。

一時停止規制のある交差点での出合い頭の交通事故の際に、一時停止規制を見落としたとか、あえて一時停止しなかった場合などは論外だが、一般的に標識が設置されていることを認識している運転者は
〇 停止線で停止した後発進したら自転車と事故った
〇 徐行しながら左右の見えるところまで進んで止まろうと思った
というようなことを弁明する人が多いのも事実。
このことは車だけではなく自転車も同じである。

|どうしたらよい

繰り返しになるかもしれないが、一時停止標識の設置された交差点では
① 停止線直前で確実に一旦停止(見通しがよくても悪くても停る)
② 見通しの良い場合には、交差道路の安全を確認して進行する。
③ 見通しの悪い交差点等では、一寸刻み(小刻み)に発進停止を繰り返しながら左右の安全確認を行う。
という方法を講じて進行することが、一時停止の意味する危険回避のための行動であろう。

|さいごに

一時停止と徐行の法律上の規制目的の違いは、危険回避と左右の安全確認という行為にあることを理解いただけたでしょうか。

参照:
・野下道交法(東京法令)
・道交法とつきあう法(内海倫著)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?