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5年前からテレワークをしていた僕は、ようやく「家族」と「仕事」を重ねることに挑戦できた

家族関係をより豊かにするものとして「テレワーク」をとらえる人たちを特集する「テレワークを、家族のために」。
第5回目は、世間よりも一足先に、5年前から新潟でテレワークをはじめていた竹内さんのお話です。

5年前からはじめた、新潟でのテレワーク

僕が本格的にテレワークをするようになったのは、今から5年前の2017年のことだ。

もともと神奈川で開発職の仕事をしていた僕は、1998年の28歳のときに、実家を継ぐため新潟にUターンをした。そこからいくつかの会社を経て、個人事業主として独立したのが2007年のこと。だから厳密に言えば、15年前からテレワークをしていたことになる。

けれど、会社勤めのテレワークという意味では、サイボウズに入社した2017年からだ。

「複業採用」という枠組みで採用され、最初は具体的な働き方も決まっていなかったけれど、入社から数ヶ月経った時点で「新潟からのリモートでやっていけそうだね」という話になり、週2日でテレワークをすることに。

それから今に至るまで、自身の会社とサイボウズの二足のわらじを履きながら、テレワークを実践しつづけている。

「やっとわかってくれた」が正直な気持ちだった

今から5年前といえば、まだ新型コロナウイルスもなかった頃だから、世の中の多くの人の働き方は今とはずいぶん違い、テレワークをしている人は少数派だった。打ち合わせをするときも、僕以外のみんなは対面で、そこに自分だけが画面上で参加することもしばしばだった。

そして僕はその頃、このような気持ちを抱いていた。

打ち合わせ時にタイムラグがあって、発言するのがむずかしい。対面で話すよりも冷たい印象で伝わってしまう。自身の心や体の状態を共有しづらいし、仕事の進捗や成果も見えにくい──。ちょっとした雑談や飲み会に参加できないことによる「さみしさ」も大いにあった。

サイボウズはオンラインコミュニケーションが活発なので、テレワークをすることによる仕事上の大きな問題や情報の格差はなかったけれど、上述したようなちょっとした悩みはたくさんあった。けれどもそれを、なかなか周囲に言い出しづらかったように思う。

「困っています!」が少数派のとき、それはどんなに柔軟な職場であれ、なかなか言い出しづらいものだ。

だから新型コロナウイルスがやってきて、世の中でテレワークをする人が急激に増え、同僚や世間から僕が以前から持っていたものと同じような悩みの声が聞こえるようになったとき、僕は「やっとわかってくれたか!」と思い、正直なところうれしかったのだ。

家族のためにテレワークできるのは「今」だから

テレワークが世の中に広まってから、その働き方が家族に与える影響も、以前より格段に増えたように思う。

僕には大学生と中学生の娘がいる。

昨年、娘が大学受験をするときには、受験する地方まで新幹線で一緒についていって、娘が試験を受けているあいだ僕はホテルで仕事をしていた。

ほかにも、数ヶ月前に奥さんが手術入院をすることになったときに、病院で付き添いながらテレワークをしたこともあった。

今までだったら、「仕事」と「家庭」はブツっと切り分けていた。病院や受験の付き添いなど、家族の事情は「仕事を休んで」するべきものだと思っていたのだ。

でも冷静に考えてみたら、通信環境さえあればどこでも仕事できてしまうのだから、休む必要は本当にあるのだろうか? そんな思いが湧いてきて、「家族と仕事」を重ねることに挑戦してみることにした。

そう思えるようになったのも、テレワークという働き方が「あたりまえ」になってくれたから。もし5年前だったら、周囲に気をつかってそのような挑戦はできなかったと思う。

「こんな働き方もできるかも?」と、挑戦してみる。ダメなら次からやめてみればいいだけの話だ。そういったちょっとした勇気を持つことができるようになったのは、同じ会社に、同じような挑戦をする「仲間」が増えたから。

そういった挑戦が、仕事と家族のあり方を変えていくのだと感じている。

地方で暮らす親からすれば、テレワークは革命

この特集の前回の記事で紹介したように、今年新卒2年目の社員の方が、半年に一度1ヶ月間実家に帰り、そこでテレワークをしているらしい。

そういった話を聞くと、僕は「親」の目線に立って、自分の子どもたちの未来について考えざるをえない。

僕のような地方に住んでいる人たちにとって、子どもは、育てたらある年齢からは「手放す」ことがほとんど決定事項だった。

社会人になって子どもが家を出たら、あとは年に数回しか実家には帰ってこなくて、地方に残った家族で過ごすしかない。僕も娘を大学に送り出したときに、はじめて「子どもを手放す覚悟」というものを感じた。

でも、たとえば子どもたちが社会人になってからも、たまに地元に戻ってきてテレワークをしてくれたら──。もちろん彼らが就く職業にもよるけれど、そのような可能性があるということは、地方に住む親にとって、大きな励みになるのではないかな、とも思う。

多様な働き方は、「制約」との追いかけっこ

テレワークは、多様な働き方を生み出した。これまでこの特集で取り上げてきた人たちのように、実家でテレワークをしたり、子どもが大変な時にそばにいてあげることができたり、地方にいてもキャリアを諦めずに済んだり。

けれども、新しい働き方が生まれることは、必ずしもいいことばかりではない。

ひとつ制約がなくなると、また新しい制約が生まれるものだ。たとえばテレワークができるようになったことで、家族と仕事の境目があいまいになって集中できないとか、子どもが夏休みのあいだどうすればいいかわからない、とか。

多様な働き方は、きっと「制約」との追いかけっこなのだ。でもその追いかけっこは、人々を少しずつ自由にしていると信じたい。

そうして、仕事や家族のあり方が、これからもどんどん良い方向に変わっていくことを願っている。

企画:穂積真人・高橋団・田平貴洋

※この記事は、サイボウズ式特集「テレワークを、家族のために。」の連載記事として2022年10月4日に公開されたものです。


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