防災の日に寄せて。在日外国人の「自助」を助ける取り組み
ディレクターの牧です👩
9月1日は「防災の日」ということから、例年、9月は防災月間として、各地で防災訓練などさまざまな防災啓発イベントが開催されます。CWS Japanが運営するコミュニティ・カフェ@大久保でも、9月は2つほど防災に関する共同イベントや夜カフェを企画しています。
関東大震災からの教訓
9月1日が防災の日に制定されたのは、1923年の同日に発生した関東大震災に由来します。この震災は10万5千人の死者・行方不明者を出し、日本史上最悪の被害をもたらしました。
しかしながら、その混乱の中で事実無根の流言・デマが流出したことにより、朝鮮や中国ルーツの人々が民間人(自警団・青年団など)や軍・警察によって殺害されていた史実はあまり語られていません。
昨年は関東大震災から100年を記念し、映画『福田村事件』も公開され、このジェノサイドを伝えるためのさまざまなイベントが開催されていました。コミュニティ・カフェ@大久保では、この事件に関するビデオ上映会を企画し、そこに潜むレイシズムや災害発生時に流出するフェイクニュースについて、参加者とともに考えました。
外国人が抱える災害リスク
コロナ禍が明けたことで、この夏は都内でも各地で祭りや花火大会が開催されました。ある週末、コミュニティ・カフェ@大久保が行っている日本語学習者からわたしにテキストメッセージが届きました。
どうやら、有名な下町の花火大会がちょうど終わったところに何も知らない彼がちょうど居合わせ、身動きが取れなくなったところを警備していた警察官に助けられたという話でした。その話を聴いて、2001年の明石花火大会歩道橋事故、2022年に起きた韓国・梨泰院ハロウィン群衆事故を思い出しました。
もしも大都市で震災が発生したら、このような群衆雪崩が発生する可能性は非常に高く、その時外国人は確実に災害弱者に陥ることが容易に予想できますし、フェイクニュースの被害に遭う可能性も否定できません。
在日外国人の自助を促す取り組み
在日外国人の多くは地震がない国の出身者であることから、まだ体験したことがない災害を想像して備えるという「防災」への関心を促すことに、日本人以上の難しさを感じています。
そこで、CWS Japanでは、このような災害弱者予備軍となる外国人を対象に都内最大の外国人集住地域である大久保地区内にコミュニティ・カフェ@大久保という交流拠点を築き、生活者のための日本語学習支援や地域の日本語学校と連携し、留学生を対象にした「大久保多文化共生防災まち歩き」を2023年から開催しています。
有事の際に自分の身を守るために必要な防災日本語学習支援のほかに、自分達の生活圏域における避難経路を一緒に歩きながら、避難所運営や自治会の役割などを学ぶ活動も実施しています。
多文化共存から多文化共生地域へ
ここまでは「自助」を促すための取り組みですが、では、「共助」についてはどうか?これは、さらにハードルが一段高くなる話です。
多文化「共存」はできても、「共生」は別問題です。それは多文化が共生するための「地域づくり」の課題であることが、この地域で活動していく中で分かってきました。
わたし自身、過去に農村部の住民参加型地域づくりに取り組んだ経験はありますが、このような大都市圏で多くが流動人口である多文化住民と高齢化が進む日本人住民が混在する地域コミュニティでの活動は、これまでにないほど複雑で難しいチャレンジであることは間違いないと考えています。
(文:ディレクター 牧由希子)