ズタボロな経歴を語る vol.4
vol.3では営業職を辞めたくなるまでのことをお話しました。今回はその続きをお話します。
■辞めたい、辞めたいと思っていたら…
辞めたくなってからのわたしは少しおかしかった。
職場に着くと足がすくむ、お腹を下す。
先輩や上司の前で泣く。
完全に病んでいた。
今思えば、嫌いだった上司は親身に話を聞いてくれたし、先輩はわたしを家に呼んでたこ焼きパーティーをしたくれた。恵まれていたな、と思う。
でも辞めたい気持ちがおさまることはなかった。
先輩は、
「営業しなくていいから都内を散歩してきなよ」
「カフェで本読んでてもいいよ」
「俺のお客さんの現場見てくる?」
などいろいろと提案してくれた。
これらがすべて「サボり」に思えて、真面目な性格のわたしは最初躊躇していたけれど、営業ができる精神状態でもなかったのでお言葉に甘えて外をブラブラしていた。
ある日、もうすぐ竣工する先輩のお客さんの現場に行った。お客さんの思いや設計さんの仕事が形になっていくところを見れるから、現場は好きだった。
中をひと通り見て回り、写真におさめた。
最後に外観を撮っておこう、と玄関から外構への段差を降りたとき、足場が悪くて転んでしまった。
ヒールを履いた片足がゴキっと変な音を出した。
「あ、この痛みはやばいやつだな」
と瞬時に察した。
骨にヒビが入っていた。
全治3ヶ月だった。
■神様が与えた休息期間
勤務中の怪我なので、労災扱いになり部署全体に「労災報告メール」が回ってしまった。赤っ恥である。
辞めたい事情を知っている総務長は「きっと神様も見ていたんだよ。ちょっと休みなさいって。この機会にゆっくり考えるといいよ」と言ってくれた。
1周間ほど休むことになり、でも家にいると気分が落ち込みそうなので可能な範囲で外出した。
近所の中華料理屋に初めて行った。
唐揚げと担々麺が美味しかった。
気の合う同期が夕食に連れ出してくれたりもした。
1周間でいろんな事を考えた。
このまま営業を続けたらどうなるのか?
自分はどうなりたいのか?
他にやりたいことはあるのか?
性格上営業が合わなかったり、なかなか結果が出せないまま数年が過ぎたりした人は、部署異動を提案される。
実際に総務に移って活躍している人や人事になってる人もいた。だから部署異動には興味があったが、入ってすぐの営業を異動させることはほぼ無い。つまり、「何年か営業を耐えた先」のこと。耐えられるのか?と考えたら、やっぱり無理だった。
■人事のUさんの粋なはからい
辞める意志が確固たるものになってくると、色んな人と面談しなければいけないらしい。大企業っぽい。
上司、支店長、総務長、人事担当者、人事部長、女性営業部長…。
一人が辞めたいというだけで色んな人が親身に話を聞いてくれて、引き止めてくれる。地元に異動する提案までしてくれた人もいる。いい会社だと思った。
人事のUさんは、わたしたち新卒組の担当だった。
自分も営業は辛かった、今は人事で前向きに働けているというようなことを話してくれた。
「木村さんは、これからどうしたいの?辞めたあとにしたいことはあるの?」そう聞いてくれた。
これは引き止めるための質問ではなく、わたしのことを思っての質問だと知るのはこの後のこと。
当時のわたしはとにかく病んでいたので希望を持って辞めるという感じではなかったが、なんとなくぼんやりと「広告」の仕事を思い浮かべていた。
「具体的にはあまりわからないんですが、企画するような仕事に興味があります」
そう言うと、Uさんは一瞬考え込んで
「そういう仕事に近い人に、話聞いてみる?」
と言ってくれた。
後日、Uさんの声掛けで会社に来たその人は、取引先の人だった。
イベントや出版物、その他いろんなことを企画する仕事らしい。
その人とわたしで1時間くらい話し込んだ。
広告業界ではないけれど、少し近い仕事。そんな印象だ。
話を聞いて、「世の中にはおもしろい仕事がたくさんあるんだ」と少しだけ前向きになれた。
こんな機会を用意してくれたUさん、わたしのために時間を割いて話に来てくれた取引先さんのことは今でも思い出す。
前向きな気持ちで辞められたのは、これが大きい。本当に感謝している。
そんなこんなでわたしは営業を辞めた。
次回「”営業がダメなら事務”は短絡的過ぎてアカン」をお送りします。
続きはこちら▶vol.5
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