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七夕って概念ぽいですよね
今日は、七夕らしい。
七夕って行事というより概念な気がするけれど、それはすべての行事にいえるのかしらん、などと思いつつ通勤路でみた揺れる紙の輪っかと、短冊を思いかえす。いろとりどりのポップでハッピーな紙には資格試験合格、世界平和、受験合格、なんで文字が並んでいて、あれ、現実だねえなんて思ったり。
昔はわたしもああやって願い事を書いていたはずなのに、今となっては叶っているのかなにを書いたのかさえ、なにも定かじゃない。幼いうちにたくさん蒔いてもらった種のなにが芽生えてなにが埋もれているのかそれもわからない。そう考えると肉体はふしぎだ。
お疲れ様でした、と声をかけてロッカーを開くと、お疲れ様ーと返ってくる。いつも通りマスクをしていないふっくらと焼けた顔。今日って七夕ですね、なんて世間話ちっくなことをしてみる。あっほんまやなそっか今日かーなんてふやふやの言葉を返されて、七夕って概念ぽいですよね、とか言ってしまう。踏み込んだ感覚があって、晴れるといいですね、と締めて事務所を出る。後ろからお疲れーまた明日ねーと追ってきて、はーい!と明るい声を返す。その二つがぶつかり合った瞬間やっぱりなにか壊れてしまうのだろうか、なんて思いながら店を出て、それから蒸し暑い道を歩く。駅まで続くビルや店のガラスに映るわたしのポニーテールがゆるくゆれて、わざとらしく見てしまう。それから、恥ずかしくなってマスクを触る。毎日が毎日らしく巻き込まれていく。日常の背丈は変わらずに、それらは美しく整頓されていく。いつか本になるか棺になるか果物の種になれるのかわからないまま白い思考が束ねられていく。毎日のリズムに乗って過ごしていけば、果てというものはやさしいものなのだろうか。
雨は降らない。灰色の空をぎゅっと抱きしめればあなたは泣いてくれるだろうか。
いつか、わたしのためのわたしであれるだろうか。
23.0707
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