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最後から2番目の「恋物語」じゃなくて「挑戦物語」です。2

数年前から私はポリオの2次後遺症で体調を崩していました。
体重が8kgほど減ってしまい、何もしていないのにひどい倦怠感におそわれることが主な症状です。
専門外来の医師からのいいつけは、「とにかく休むこと」「無理はしない事」「頑張ってはいけません」
ということで、なるべくベッドで過ごしていました。

ある日娘がスマホをいじりながら「ママ、Audibleって知ってる?」と私のベッドのそばに腰掛けました。
「え?なあに?知らないよ」「本をね、読んでくれるアプリ」
疲れてベッドに横になっていることが多かった私に娘が教えてくれたのです。素晴らしいアプリでした、感謝です。

横になったままいろいろよみはじめました。検索で「定年後」とか「老後」とか「60代」等入れて何冊か聞いてみると、「老後は好きなことをすればいい」「お金につながることをした方が楽しい」「年を取ってからも続けられることを若いころから見つけるといい」などと書いてありました。

いや~今更何もないし、何もできないし、だいたい私の好きなことってなんなんだろ。お金って言っても、もう働く気はないし、ていうか働けないし。
こんな状態じゃ、もう何もできない、今の私の仕事はただ休むこと。
そう思うようにして数か月が過ぎました。

秋になり体調が戻ってきたので、とりあえず外へ出てみることにしましが、やっぱり何をしても続きません、面白くないのです。

ところが、ブログを始めてみると、文章を書くことが面白くて毎日が楽しくなりました。
友人からある出版社の「出版相談会」などというものを教えていただき
私は何も考えず「ポチ」とスマホで申し込みをしてしまったのです。
すぐに受付のメールが届き、日時と会場が書いてあり、行ったこともない場所でしたが乗り換え検索をしてノコノコと出かけて行ったのです。

さて当日です。指定の時間よりだいぶ早く到着してしまったので近くにあった有隣堂で時間調整をしていましたが、なんだかそこにいるお客様がみんな出版相談会に来ている人に思えて落ち着きません。

時間になり指定された会場に着きましたが受付にはどなたもいらっしゃいません。ちょっと覗くと奥の方はパーテーションでいくつかのブースに仕切られてそれぞれ相談中のようです。しばらく待っていると、スーツ姿の、でもどこか業界人ぽい雰囲気の男性が
「ご相談ですか?お名前は」と言って名簿を確認してから
「どうぞ」と空いているブースに案内してくださいました。
私の緊張はマックスです

まず、説明がありました。
自費出版なので、本を1冊だすのに200~300万円のご負担が必要です。
「やっぱりね~」
さらに、書店へ並べるとなると印刷部数にもよりますが最低でも350~400万円はかかります。
「ひえ~」
私は笑うしかありません。
「そんなお金かけられません」と帰ろうと思いましたが、せっかくここまで来たのだからとドキドキしながら、
「あの、一応企画書と原稿の一部を持ってきたのですが」
「見て頂けますでしょうか」と言ってみたところ
「あ、そうですか。ちょっと拝見させていただきます」ということで、私は車いすの背ににかけてある袋からごそごそと封筒を取り出してお渡ししました。
その方は、ぺらぺらとめくって読まれ、
「いいんじゃないですか、題材はとてもいいですよ」
「うちの会社が好きそうなテーマですね」
とほめてくださって
「うちの会社でコンクールとかいろいろ募集してますので応募されてはいかがですか」
「まあ、来月末が締め切りなので、無理でしたら、多分来年もありますから」
「そうですね、ありがとうございました」
相談は15分くらいで終わりました。

あ~あ、ずっと緊張して昨夜はいっしょうけんめい原稿をつくって、プリントして封筒に入れて、えっちらおっちら横浜くんだりまで出てきて
これです。
やっぱり私はどこかおかしな、身の程知らずなおばあちゃんなのだと、どっと疲れ、高島屋のデパ地下による元気もなく帰りの電車にのりました。

私なんか何もない、とんでもない勘違い野郎だと
へこたれた車椅子おばあちゃんでした。

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