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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊻

「はい、ごもっともでございます」

 
せっせとお仕事探しにハローワークへ通っていたら
ある日、障がい者職業相談担当の責任者の方が
「こんな求人、うちでも出してるんだけど、どうですか」
と一枚の求人票を見せてくださいました
「職種:専門援助部門職業相談員」
フルタイムの3年契約、嘱託職員、
お給料は時給750円とは比べ物にならないほど
夢のような金額が書いてありました
いやいや、こういうお仕事はその道の専門家がされるものでしょう
それがなんと、
学歴も経験もない私を職業相談員としてどうかということです
「え?」
「私にできますか?」
目を丸くしている私に
「まあ、大丈夫でしょう」
「採用されるかどうかは応募していただかないとわかりませんけどね」
スラっと背の高いちょっと公務員っぽくない男性相談員さんはサラッと
言われました。
 
まあ、ダメでもともと
いつもの当たって砕けろ精神がむずむずでてきてしまい
「ありがとうございます」
「やってみます」と、
とりあえず、応募だけはしてみることにしました。
 
そして、2009年春
長女高校2年生、次女中学3年生
フルタイムで週5日、ハローワークでのお仕事が始まりました。
 
朝5時前に起きて、家族4人分のお弁当を作ります。
玉子焼き、ブロッコリー、人参甘辛煮、豚肉生姜焼き
冷凍コロッケ、等々
とりあえず、学校で恥ずかしくないようにと苦手なお料理を頑張りました
 
ハローワークは8時半には窓口が開きます。
8時過ぎに出勤した時点でもう求職者の方たちが入り口に並んで待っていられます。
用意していただいた駐車スペースに車を停めて
急いで車椅子を下ろして座り、裏口から建物の中へ入ります
裏口には小さな段差が一か所ありますが、そばにいる方が
車いすを上げてくださいます
「おはようございます」
カウンターの1番端の窓口がが私の席です
職種は「専門援助職業相談員」となっていましたが
そうそうたるベテラン相談員の方が何人も揃っていたので
新入り、経験なし、そして相談員の中では若かった
私の出番はほとんどありませんでした
 
なので、ほかの相談員さんが苦手なPCでの事務作業を引き受け
名簿の整備、採否通知の確認、入力、雇用助成金補助金関係の書類作成などを担当していました
ごくごくまれに職業相談、求人紹介の仕事もさせていただいて
求職者のお話を伺い、求人を出している企業に電話をかけ、紹介状を発行したりします。
同じ部門の職業相談員さんは皆さん年配のベテランで、素敵な方ばかりでした。いろいろな経験を聞かせてくださったり、お昼休みに近くのお店のランチに誘ってくださったりで、ワクワクしながら働いていました。
職業相談、特に障碍者の方や高齢者たちの担当部署でしたので、
障碍者の働き方、就活の仕方、助成金の制度など
実際に私の人生にも役に立つ多くのことを学ばせていただき
感謝しています。

仕事にも慣れてきたころに、いつものように調子に乗って 
「ママ、カウンセラーの試験でも受けてみようかな」
とちょっと言ったら
「ママはダメだよ、すぐ自分でしゃべっちゃうもん」
娘に、ぴしゃりと即答されました
「はい、ごもっともでございます」

 


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