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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊺

「チャンスの神様の前髪をわしづかみ」

 
状況は極めて困難
僅かな失業手当もあっという間に期限切れとなってしまい
職業相談にハローワーク通いも始めました
障害者求人で何かいい求人ないかなぁ
と僅かな希望を持ちつつ、職探しです
 
新聞折り込みの求人広告を隅から隅まで見ていた
そんなある日、求人広告の隅っこに小さな小さな記事を発見
「事務員募集」
普通の事務員募集は大体が車椅子NGだったのですが
勤務場所 水道局 と書いてありました。
たしか、水道局は県の合同庁舎の中にあったはずです
大きい建物なので、車いす用トイレも車いす用駐車場もエレベーターも
あります
バリアフリー設備は十分整っています
これはチャンスです
チャンスの神様の前髪をわしづかみにしなければなりません
 
時給750円
1日4時間勤務
週4日
750円×4時間×4日×4週=48000円
大した金額にならないけど、0よりまし
 
さっそく電話で問い合わせ
面接にこぎつけました
「よっしゃー!」
採用面接が大好きな私は張り切って出かけていきました。
 
「こちらでお待ちください」
がらんとした会議室のような広い部屋の片隅で待っていると
ドアが開き、スーツ姿のちょっと年配の男性と
作業着姿のスラっとした若いイケメンが登場
私の向かい側に着席されました
スーツの年配男性の方が、私の履歴書を見ながら型通りの質問と確認をされて、続いて
「では、お仕事がしていただけるか、事務所とトイレをご案内します」
と若いイケメンさん
事務所は水道局の広いワンフロアの一角でした
この会社は水道局から仕事を請け負っている民間会社でした
イケメンさんは、ここの事務所の所長さんで、
スーツ姿の男性は本社のお偉いさんでした。
事務所をさっと見て
「大丈夫そうですね」
じゃあ次はトイレへ
いやいや合同庁舎の車いす用トイレなら大丈夫でしょう
見なくてもわかります
「あ、大丈夫です」
「来たことあります」
と辞退しましたが、どうしても見せるというので
エレベーターに乗ってほかの階へ
イケメンさんと2人でトイレ見学に行きました
すると、便器の横に清掃担当者からの張り紙が手書きで貼ってありました
「○○がついたら掃除しておいてください」
 
何とも言えない空気感で会議室へもどり
「では、結果は1週間くらいでお電話をさしあげます」
「お疲れさまでした」
「はい、ありがとうございました」
と無事終了です
 
予想通り、後日採用の連絡をいただき
イケメン所長との楽しい毎日が始まりました
 
水道局の請負会社に採用が決まったことをハローワークへ報告に行くと
「よかったですね」
「会社からすれば、カモがネギしょってきた状態ですよ」
と言われました
障害者雇用促進法により、ある程度の規模の会社は障碍者を雇用しなければならないそうです。
雇用できなければ罰金が課せられます。時給750円で雇った方が得です。
 
それはともかく、毎日イケメン社長と楽しく仕事をしていましたが、
水道料金の未納者に対応する仕事だったので
人生の縮図を垣間見るような出来事もたくさんあり、とても勉強させていただいた経験でした。
1年半ほど勤めましたが、会社が新年度の入札に負け、撤退することになり
私はまたまた失業状態になってしまいました
「こまったなぁ」
再びハローワーク通いと織り込み求人広告の毎日です。

いくら就活が嫌いでないとはいえ・・・
「でも、やるっきゃない」です 


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